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風を感じて涙する。#創作大賞2024

語り掛ける声

新生活。いつまでも慣れることができず、毎日が窮屈だった。
しかしとある日、疲れ切った体に何かが語り掛けてきたように感じたのだ。
「疲れてしまったんだ。闘うのも守るのも。」
このフレーズ、聞いたことがある。
そう思い頭を振り絞って考えたがなかなか出てこなくて困っていた。
そうだ、調べればいいじゃないか。
デジタルネイティブ世代であるのにもかかわらず、「ネットで調べる」という方法を忘れていた。
検索するとすぐに何件か引っ掛かり、既知感の正体が分かった。
曲。曲の歌詞だ。
その曲名は「カゼノトオリミチ」。
ずっと好きな曲で、病み期にも助けられたのになぜ忘れていたのだろうか。
そういえば最近聞いていなかったかもしれない。
いい機会だと思い、聞いてみることにした。

その言葉を求めて

Youtubeで「カゼノトオリミチ」と検索し、堀下さゆりさんのMVをせっかくなのでイヤホンで聞いてみた。
美しい。優しい。輝かしい。
様々な形容詞がまるで玉入れのようにポンポン頭の中に放り込まれてくる。
しかし一番好きな形容詞「懐かしい」はなぜか出てこなかった。
僕は「懐かしい」という言葉が好きだ。
「懐かしい」と思ったときにこみあげるあの何とも言えない嬉しさ、感動。
これはほかの言葉では表せない感情だと思うからだ。
このMVを見たときにはその気持ちはこみあげてこなかった。
しばらく聞いていなかったし、好きだった曲のはずなのになんでだ?
考えた結果、ついに一つの答えたどり着いた。多分これが正解だ。
僕が聴いていたのは”この”カゼノトオリミチではなかったのだ。
僕が聴いていたのはこの曲のcover。
ニコニコ動画で活動していた「smile」さんという歌い手さんのものだった。
思い出した。確か最初聞いた時にボロボロ泣いたっけ。
よし、もう一度。
堀下さゆりさんバージョンも大変素晴らしかったが、いつの間にか「懐かしい」という感情を求めていた僕はニコニコ動画を開いた。

「懐かしい」

あった。smile。
スマイルマークのヘッドホンをした人の可愛らしいアイコンに思わず「懐かしい」とおもってしまいそうになったが頑張って止めた。
この気持ちは曲を聞いた時にとっておきたい。
再生ボタンをタップする。
なんだかドキドキしてきた。CMの間がありがたいくらいだ。
CMのスキップボタンを押す。手はなぜかふるえていた。
音楽が始まった瞬間、心臓の鼓動が速くなる。
「風を感じて旅に出ようか」
そのフレーズが終わったとき僕の頭の中は「懐かしい」でいっぱいだった。
懐かしい。懐かしい。懐かしい。懐かしい。
今度は玉入れなんかの比じゃない。例えるなら雨だ。
懐かしさの雨が僕の頬を伝っている。
しばらく気持ちの良さに浸って静かに曲を聴いていた。
しかし
「ゆらゆら風を感じて」
のところで身体に電撃が走ったような感じがした。
気づいたら僕は
走っていた。

風を感じて涙する。

家の階段をかけあがり、2階にある自分の部屋に行く。
ベットの上にちょこんと座ってさっきの動画を開き、イヤホンをつけると準備はほぼ完了である。
再生ボタンを再びタップする。今度は震えず丁寧にボタンを押した。
そして思いっきり窓を開く。
今日は風速1.6m。心地よいくらいの風だ。
ゆらゆら風を感じる。
僕は泣いていた。涙が頬を濡らした。
優しい声と優しい風。普段感じたことのない温かさに体が包まれる。
風を感じているとき、新生活がため込んでいたいたことが全部言葉になって吐き出た。すがすがしい。頭がとてもすっきりする。
急に歌詞が頭に浮かんだのは、これを感じさせるためだったんだな。
ずっとこのままでいたい。ずっとここから離れたくない。
こんなワガママ初めてです。


こんばんは。お疲れ様です、かにかまです。
今回初めてエッセイというものを書いてみました。
非常に思い入れのある曲、「カゼノトオリミチ」についてのエッセイです。
小説風に書いていますが、すべて実際に僕の身にあった出来事です。
感想などコメント欄にして書いていただけるととてもうれしいです。
記事にして書いてくれたらもっと嬉しいです!


今回エッセイの中で出てきた動画・人物
堀下さゆりさん(公式サイト)↓

smileさん

カゼノトオリミチ(堀下さゆりさんバージョン)↓

カゼノトオリミチ(smileさんバージョン)↓
https://www.nicovideo.jp/watch/sm13298918

#創作大賞2024
#エッセイ部門


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