【新説・魚食レポvol.7】養殖アユの炊き込みご飯/天然稚アユの天ぷら
みなさん!6月1日はアユの日でした!
この日をアユ釣りの解禁としている地域が多いためです。
すでに市場には稚アユ(6-10cm位の小さいアユ)や、養殖のアユは来てましたが、この日を境にいよいよ夏だ!アユだ!と本格的なシーズンインとなります。
ということで、これからどんどんアユを食べていきましょうね。
食レポ開始です。
まずはいまや定番の養殖アユ。
【素材データ】
魚種 :アユ(養殖)
養殖産地:和歌山
サイズ :100g位(1kg10-11尾の規格)
今回は樋口さんの以下レシピを参考に炊き込みご飯にチャレンジ。
完コピしようかなとも思いましたが…
しかーし!
魚屋的には魚の下処理にこだわりたい!
今回は若干お子ちゃま舌な自分のため、
「雑味の少ない甘めの炊き込みご飯」
に仕上げるべく、内臓、エラを取り除いてから使います。
養殖アユなので内臓脂肪が時期問わずたっぷり。
(天然アユの場合は7-8月頭の産卵期前に脂がのってきます)
焼く時にはジワっとこの脂が身に広がって激ウマニャン太郎ですが、今回は除去します。
【魚の脂質について】
主に不飽和脂肪酸で構成されており、刺身などで食べるには健康上とっても良いと評判ですが、酸化しやすいという弱点があります。
炊き込みご飯では要注意。脂の多い魚の炊き込みご飯を長時間保温していたら酸化臭がすごいことになっちゃいます。
血合いも雑味になるため綺麗に掃除しましょう。
それに塩を軽くふり、両面ほんのり焦げ色つく程度に焼いておきます。
最後に炊飯して終わり。
事前に水を吸わせたお米に、
塩焼きした「アユ」
甘味を出すため「新タマネギ」
旨み増強剤その①「羅臼昆布でとった出汁」
旨み増強剤その②「醤油」
を加えて炊きます。
炊いている間、めちゃくちゃ良い香りが部屋に充満するので注意です。
出来ました!
小ねぎを散らして…
パクリ
うめ~~~!!!!
甘味と旨みが絶妙にドッキング!
イーロンマスクも唸る美味しさです。(適当)
「養殖アユは天然物に大きく劣る」
といった記述を過去の文献などで見ますが、僕は近年の餌の改良などで香り含めかなり良くなっているとは感じます。
お次は、天然の稚アユです。
天然のアユは一般的に海へ下ってから大きな成魚となりますが、そうなる前のものや、琵琶湖などの淡水湖で一生涯とどまり大きくならないものを指します。
滋賀県ではプライドフィッシュにもなっている魚なんですね。
稚アユは3月頭には市場へ来始めてました。
(だんだんと皮が丈夫になっていくそうです)
今回は琵琶湖の漁師さんから頂いた冷凍品。
【素材データ】
魚種:稚アユ(天然)
産地:滋賀県(琵琶湖)
漁法:エリ漁(小型定置網)
サイズ:6-8cm位
(こちらで買えます。琵琶湖では「小鮎」とも呼びます。)
弱い魚なので、ゆっくりと氷水で解凍しましょう。
今回のものは腹破れなど全然無く状態がかなり良いです。
香りも豊か。
キュウリやスイカに似た爽やかな香気がたちのぼります。
シンプルに、天ぷら粉をつけて…
カリっと揚げました!
ちょっと塩をつけて…
パクリ
うひょーーーー!!!うめ~~~~!!!
骨まで柔らか!
後から来るほろ苦さに脳を破壊され、見えないビールを探してしまいます。
「 鮎を食べ 流るる季節に 思い馳す 」
おっと。ついつい…かにへー心の一句が出てしまいました。
今回はこれをもって結びの言葉とさせて頂きます。
かにへーの豆知識
【養殖のアユについて】
実はここ30年で大幅に生産量が減少している。
養殖アユの全国生産量
1960年 200トン未満【所得倍増計画が開始される】
1965年 1,000トン突破
1975年 5,000トン突破
1988年 13,633トン【バブルの渦中で生産量もピーク!】
徐々に減少…
2018年 4,310トン
※ちなみに2018年における天然アユの生産量は「2000トン」ちょい
今後の日本の需要や人口を考慮すると3000-4000トンで落ち着くのでしょうか。
少しだけ歴史をたどると徳島県、和歌山県、そして愛知県が生産量の大幅な変遷を辿っている…。
徳島県の歴史
1953年以降 生産量をリード。
1985年以降 5000トン。バブル需要や観光地からの需要により伸ばす。
~~冷水病がアユを襲い始める~~
1990年以降 バブル崩壊。冷水病が蔓延。経営体、生産量ともに急減。
2007年 763トンまで落ち込む
2018年 224トンになる。
和歌山県の歴史
1960年以降 徳島から養殖技術が伝わり数量を伸ばす。
2008年以降 1000トン前後と全国生産量トップをキープ。
2018年 788トン(全国生産量2位)とやや落ちる。
愛知県の歴史
1998 年以降 県内の養殖業者がほぼ人工種苗を導入。生産量を年々増加。
2007年 860 トン(2 位)を記録。
2013年 1063トンを記録しついに全国生産量トップへ。
2018年 1220トンとさらに伸ばす。
ここまで大きく変動したのは、以下4つが大きな理由と考える。
①冷水病などの魚病が発生したこと
②各地での人工種苗開発の発展
③用途の違い
④立地
徳島は、琵琶湖などから天然種苗を仕入れ過密的に養殖することで発展してきたため、冷水病による被害がかなり痛かった。
【冷水病とは】
細菌感染症の1つで過去に稚魚の時期に低水温で発症することから名づけられた。(今では低水温に限らないことが判明している)アユ以外にギンザケ、ニジマスなどでも全国的に発生。体表の白濁や、穴あき、尾ビレの欠損などを生じ、商材価値を著しく損なう。
天然稚魚を使った養殖が、魚病においてはかなりのリスクとなっていたのだ。
愛知は、人工種苗への切り替えが早かったらしい。また種苗の供給が当初1つの会社からのみで、そのときから養殖業者同士のつながりが深いという話もある。
③については、
和歌山は、ほぼ氷〆などして生鮮品として市場へ出荷されるのに対し、
愛知は、放流用や活魚での出荷が多いらしい。(市場でも見ますが。)
近年の愛知の伸びを見るに、完全な食用としてではなく、遊漁用としての用途が占めるのかもしれません。
アユは養殖魚としては少し特殊みたいですね。
余談
中国では福建省などで日本向け冷凍用として養殖されている。
ただ日本での値があまり上がらないので、あまり盛り上がってないんだとか。
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