京急の街「京急川崎」|川崎市民の母が嫌がっていた「川崎」
前回は母の価値観や生き方、それに対しての僕の考えを書いた。
簡単に言うと、
・母の考え方は高度経済成長の中での劣等感から生まれた歪んだ考え方。僕からすると時代錯誤も甚だしいと感じる。
・でもそれを「今は違うんだ」「自分は違うんだ」というほど、ちゃんと自分自身で世界を見ていない。ただどこかで習ったり聞いたりした正しさをふりかざして反論してるだけ
・そろそろちゃんと自分自身で世界を見ないといけないぞ。写真をそのツールにしよう。
ということだった。
まだ読んでいない方はこちら。
そんなこんなで、また京急の街を撮っている。
とくに京急の街の中でも、この母に育てられたからこそ、近かったのに触れてこなかった街、「川崎」について書いていこうと思う。
上を向いて歩こう|坂本九の育った街、川崎
「京急川崎」はKK20、快特も停まる京急線の主要駅の一つで、品川から10分、横浜から6分と、アクセスがよい。
発射メロディーは坂本九さんの「上を向いて歩こう」だ。
坂本九さんが川崎市で育ったことに由来するらしい。
正直、大して坂本九さんに興味はなかった。
でも、なんとなく、川崎を撮りに行くということで、発射メロディーになにかヒントがあるような気もして、電車の中で、生前の坂本さんのインタビューを見ていた。「徹子の部屋」でその生い立ちを話しているVTRである。
こんな喋り方する人、なかなかいないなと思いながら、でもそのどこか可愛らしくて人懐こいところとは裏腹に、その育った環境はかなり男気溢れたものであったことを感じて、そのギャップが僕は理解できなかった。
でも、川崎を歩いて、なんとなくわかった気がする。
鉄格子とソープランド街
京急川崎駅についた僕は、堀之内の方向へ向かった。
この街には窓に鉄格子がある家がまあまあある。
僕はこの光景に、この街の緊張感みたいなものを感じるとともに、現実にはそこまで張り詰めた感じのないことへのギャップも感じた。
堀之内といえば、東京吉原に次ぐ大ソープランド街である。
駅からの道が、実は旧東海道であることから、そういう雰囲気の手前に平和な物産店があったりする。
たしかに昔はこの鉄格子がないといけなかったのかもしれない。もしかしたら今もそうなのかもしれない。
ただ、僕には欲望に溢れて黙々と歩くいくらかの男性と、放ったらかしにされたような住宅や古いビルが静かに並んでいる様子だけが目に入ってきて、それはどこか他人事のようで、積極的に入っていかなければ触れ合うことのない世界に感じられた。
大ソープランド街のちょっと手前くらいに植物や置物をたくさん飾った家がある。なぜこういうことをしているのかはわからないが、どうやら見てもらうことを前提として飾っているようだ。
スシローと日産とソープランド
この通りは国道である。
ファミリー向けのスシローがあり、ファミリーもカップルも来るであろう日産のディーラーがあったりする。
そしてその裏が大ソープランド街だ。
こんなに近くていいんだろうか。
でも、それがこの街の緊張感だろうと思う。
子供にそれがどのように見えるのかはわからないが、なにか違うものを感じるのだろうと思う。
そういうものを小さい頃から感じることが、良いことか悪いことかなどという話はナンセンスだと思う。むしろ良いかもしれないとも思う。
街の中心の方に戻ると神社がある。
立派な杉とダダ広いスペースを有した神社だ。
例のごとくお参りをする。
工事中の一角を抜けて、街の中心部へ近い方へ行く。
通りを過ぎると、また風俗がいくらかある。
このあたりはソープランドではなく、ピンクサロンだ。
風俗街って不思議だ。
なにかとてもいけない街のようなイメージなのに、老若男女、普通に往来をしながら、何事もないように通りには人が歩いている。
自販機でコーヒーを買ってタバコを吸う人、立ち話をするおばあちゃんたち、せかせかと働く運送業者のお兄さん。
風俗街とは名ばかりで、ただ、たまたまそこに風俗があった、というくらいにも感じる。
長い時間の中で、サビれるものもあり、取り残されるものもあるなかで、そこにある生活は続いている。
きっと住んだら住んだで、いろいろあるんだろうけれど。。。
イタリアとチッタと、銀龍街のステンドグラス
京急川崎からJR川崎駅側に行き、さらに進むとそれまでとは全然違う、いかにもキレイな一画にでる。
ラ チッタデラ、チネチッタ、クラブチッタなどが固まる、イタリアを街をモチーフにしたと言われる場所だ。
大ソープランド街が徒歩圏内にあるとは想像できないくらい、今はかなりきれいだ。
僕は高校のころ、祖父と「タイタニック」を見に来た覚えがある。
妻と「スターウォーズ」も見に来た。
チッタの周辺はたぶん、昔からの川崎であろう風景が残っている。
帰りにJR川崎駅に一番近いアーケード、銀龍街を通った。
銀龍街を存在は知っていたし、何回か通っていたが、写真を撮って初めて気づいたことがある。
ここはどおやら「ステンドグラス」をテーマにした通りらしい。
なるほど。
こんな雑然として、人混みをかき分けながら通っていた通りが、ふと上を向いてみれば美しい光が差し込んでいることに気づく。
かなり狭い範囲の中に様々な雰囲気というか文化みたいなものを詰め込んだ印象の川崎。このミクスチャー感と庶民的な感じはなかなか独特なものがある。
ごちゃ混ぜになって、その中にいると自分の生活スタイルや脳みその中もある程度ぐちゃぐちゃしてくることもありそうだ。
空から差し込む光に見をやって、足元を見ない時間も必要かもしれない、と思った。