編集者が求めている要素をまとめる、新作企画書+プロット
こんにちは、マイストリート岡田です。
新作プロット、書いてますか?
現代は小説投稿サイトが溢れていて、小説を書きさえすれば人目の付く場所にへ出すことができます。書いて出しを続け、連載を続けていける猛者も存在します。
プロットなんて面倒だし、とりあえず書き出せばアイデアが出てくるだろうという考えがあるかもしれません。
とはいえ、多くの人は『プロット』という作品の設計図を作った上で、それに沿って書いていくでしょう。
商業作品を書くようになったら尚更です。感覚的に作品を書いていた人でも、必ず編集者から「プロットを提出してください」と言われます。
旅をすることを考えてみてください。
「なんか南のほうに行って海の近くに泊まって、次の日暗くなる前に帰る」
……なんて言われたら不安になりますよね。一人で気ままに旅するのならよいのですが、商業作品になるとどうしても同行者がいるわけです。
計画、大事。
旅にいくメンバーがはぐれたり、混乱しないようにまとめていく計画となるのが、企画書でありプロットなのです。
そして、新作を提示する場合、まず見られるのはプロットというよりも『企画性』です。
じゃあどんなことが企画書・プロットにおいて重要なことで、どんなことが書かれているとよいのでしょうか。
この記事では、作品のプロットを組み立てていく上で考えをまとめていくという作業にも役立ち、かつ他者に見てもらったときに、その作品の『何が面白いか』をアピールできる新作企画書+プロットを紹介していきます。
最後には、実際に使えるWordファイルと、おまけとしてキャラクタープロファイリングのシートを貼ります。こちらは有料としますが、気に入っていただけたら購入していただけると幸いです。
■コンセプト・書きたいこと
作品の指針となるテーマや、軸となる設定、ストーリー全体に関わる要素を書けるようにしましょう。
ここで決める内容が、作品の方向性や完成形のイメージに繋がっていきます。編集者としては、この作品がライトノベルに向いているのか、ライト文芸のほうがいいのか、もっと別のパッケージにしたほうがいいのか、と検討できるます。
旅行で言えば、南の島に行きたいのか、雪国に行きたいのか、友達数人との旅なのか、恋人との旅なのか、その地方のおいしいものを食べたいのか、綺麗な旅館で温泉に入りたいのか……場所、同行者、目的で旅が大きく変わってきます。
たとえば、ということで、僕がいま読みたいものを書いてみます。
●設定・ストーリー要素
子育て経験のない男3人が、赤ん坊or児童を預かって育てることになり、右往左往する。『三人の名付親』から連なる『東京ゴッドファーザーズ』やドラマ『人にやさしく』『フルハウス』のような、ちょっとおかしなファミリードラマ。
●キャラクター要素
境遇・性格・キャラが異なる3人の親父役。
赤ちゃん(だと物語運びにくい?)、子供(女の子がいいかな)
ダメダメ親父3人をサポートする女性。ソーシャルサポート。
●テーマなど
いまの時代の『家族』ってなんだろう。ソーシャルサポートってなんだろう。血縁のない大人が、子供を育てていけるの?ということを掘り下げつつ、ドタバタした日常や、何でもないことの中にある幸せや、ぶつかりあう人間関係を描く。
まともに人間関係を築けず、子供みたいなまま大人になったダメ男3人が、子供を育てるという境遇の中で、成長していく。子供も成長していく。
ここの主要設定などの“掴み”がとても大事です。
あとでも書きますが「作品の主要要素を短文でまとめる」というのを企画書の最初に持ってくるようにしています。その後に、タイトル案を置きます。
「日本の居酒屋が異世界に繋がり、トリアエズナマという酒が人気になる人情ドラマ」
とか、
「未来に起きることの『確率』が見えるようになった世界で、妻を殺してもバレない確率を調べ続ける夫の話」
とか。
この『企画性』と『ログライン』の部分をしっかり出せるかが企画書・プロットの段階では大事なのです。エッセンスを絞り出して短文にまとめるのは、編集者が得意だと思うので、相談するのもありです。
■主要キャラクター
ここからは作品に関する詳細を書いていくことになります。
『主要キャラクター』では、主人公やヒロインなどの重要なキャラクターの設定を示していきます。
大まかな設定と『物語上の役割・立ち位置』くらいまでを書きます。ここでは詳しく書きすぎなくてOK。
デンジ(16): 主人公。デビルハンター。父親の借金のせいで極貧生活。自分の目や内臓をヤクザに売りつつ、チェンソーの悪魔であるポチタと悪魔を狩って生計を立てている。
こんな感じ。『役割・立ち位置』など特徴的な部分に加え、『性格』『目的』も書けると、より明確になります。
■設定・関連用語
現実世界の現代だとしても、特殊な状況があったり、物語を動かすための『設定』があればそれを明記します。
設定に関わる用語や、作中で言及されていなくても、モチーフとしているものや出来事などがあれば『用語』として書いておきます。
時代・舞台設定
大正時代。『鬼』が存在し、人々を襲っている。
用語① 鬼 この物語の敵。人間を食う。強い。日の光に弱い。
用語② 鬼殺隊 主人公の所属する組織。鬼絶対殺すマンの集まり。
用語③ 呼吸 剣技を使うための技法。流派がある。必殺技。
など
■主人公に関する事柄
作品の中で、主要キャラが何を目的に何に苦しみながら何を為すのか、といったことを整理していきます。
ここでは
主要キャラに与えられる課題
主要キャラの目的・目標
主要キャラを妨害する人物・事象
主要キャラの欠落・恐怖・問題
主要キャラたちの関係性
この5つをまとめます。
これはコンセプトにも関わる部分なので、作者の中でも明確に決めておけるとよいでしょう。場合によっては目的がすり替わったり、上書きされるストーリー展開かもしれませんが、そのキャラクターにとっての大事な部分をまとめておくことで、混乱せずにすみます。
主人公については、これをしっかり組み立てておかなければ、物語の軸がわからなくなってしまいます。
■アウトライン
作品の構造をどうするのか、おおまかに構成していきます。章立てをして長編として組み立てるのか。連作短編として、1話完結型にするのか。
ここで、『起承転結』なり『序破急』なりを考えておき、各エピソードの中で何が起こるかの段取りを考えておきます。後にも書きますが『三幕構成』などの脚本術での型をまず置き、それにエピソードを当てはめてみるやりかたもよいでしょう。
・長編
プロローグ
一章(起)
二章(承)
三章(転)
四章(結)
エピローグ
・連作短編
第一話(出会い)
第二話(関係の進展)
第三話(過去の出来事の提示)
第四話(仲違い)
第五話(大きな事件の解決)
■プロット
最初から最後までのプロットを書いていきます。
出来事→キャラが動く→物事が展開する→キャラの感情、変化
といった具合に、物語の流れを書いていきます。
基本的には主人公の視点に沿って、物語の中で描く出来事をプロットとしていきます。主人公が知覚していない、別部分でのプロットがある場合は、混ぜ込まずに別途用意できると整理できます。
プロット構成の仕方に関する『型』はいろいろとあるのですが、脚本術の『三幕構成』や『神話の法則(ヒーローズ・ジャーニー)』がわかりやすいです。
まずはこれにそって物語を組み立ててみるのがよいでしょう。
プロットの立て方に関しては僕も勉強中なので、また別の記事にまとめたいです。
企画書・プロットを整理して、他者に見てもらう
コンセプトのところにも書いたのですが、企画書というものは自分の作品を「これ面白いでしょ!」とアピールするために使うものです。
なので単なる設計図であるプロットとは異なり、面白ポイントやアピールしたい部分をしっかり書いて、読んでもらう必要があります。
こういった『コンセプト設定』が苦手だという方もいますが、編集者と相談する中で「自分の面白ポイントはここだ」「自分が描きたいと思っているテーマやモチーフはこれだ」と具体的にわかっていることで、作品が迷子にならないよう手綱を取ることができます。
大抵の編集者が「うーん」と困ってしまうのが、企画書の面白いと思えるコンセプトや設定が弱いことです。しかし編集者と相談することで「書きたいことってこれかな?」「ここをもう少し強調すると、フックになるんじゃない?」とアドバイスをもらえます。それを活かし、企画性の高い内容にブラッシュアップするのもよいでしょう。
編集者がついていない場合は、作家仲間や身近な人に、企画を見てもらい、自分のアピールしている『面白い』が相手に伝わっているかを確認するのが大事です。
新作企画書+プロットのテンプレート
ということで、ここからは有料です。
上記で書いてきた内容を、新作企画書+プロットとしてまとめているWordのテンプレートを用意しました。関わりのある作家さんには渡しているものです。
内容を埋めつつ、自分でも整理できる内容になっていると思います。
加えて、キャラクターの設定シートも置いておきます。キャラクターに関する詳しい設定づけに使用してみてください。こちらは荒木飛呂彦先生の『キャラクター身上調査書』の簡易版のようになっています。
ここから下が、新作企画書+プロットと、キャラクタープロファイリングのシートのファイルです。
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