ライトノベルのタイトルをAIテキストマイニングしつつ、タイトルの傾向を調べてみた
どうも、マイストリート岡田です。
9月4日から23日にかけて、『このライトノベルがすごい!2022』のアンケートを行っていました。
現在はその集計結果が出まして、各編集部とのやり取りが始まり、インタビューの予定などが立っています。
10月で制作を行い、11月下旬発売予定です。
楽しみに待っていてください!
今回の記事では、アンケートの際に使用した「ライトノベル作品参考リスト」を参考に、ライトノベルのタイトルについて、特徴的なワードや、好まれやすい傾向などを分析していきます。
今月の頭、テキストマイニングの「ワードクラウド」をツイートしたらバズりました。その反応を見ていると、このワード群からは「ライトノベルらしさ」が現れているので、ネタとしてわかりやすかったのでしょう。
頻出ワードについては去年書いた記事もありますので、比べてみてください。ぱっと見、「最強」と「令嬢」の勢力が伸びているように見えますね。
■頻出するワード
■頻出する名詞
去年と比べると「異世界」が減り、「最強」が増えました。「令嬢」と「悪役」も増えているので「悪役令嬢もの」が増えていることも伺えます。
「追放」もぐっと増えています。勇者パーティーや宮廷○○など、位の高い所属団体から追い出され、スローライフしていたり、ざまぁしたりといろいろです。
「英雄」が減り、「冒険者」が増えているのも興味深いです。
参考作品リストの検索をすると
悪役令嬢 73
追放された 57
宮廷○○ 12
このあたりが目立ちます。
●職業・キャラ属性
冒険者 57 ←冒険者ってプレーンな職業ですね。旅人的な。
騎士 32 魔術師 17 竜騎士 9
錬金術/錬金術師 15 鍛冶屋/鍛冶師 5
聖女 70
勇者 64 ←主人公を追放する側のほうが多い。
魔王 48
賢者 29
王女 13 王子 29 ←主人公の相手役の場合が多い。
貴族 25 ←辺境にいたり、没落している貴族が多い
公爵 25 ←爵位は○○令嬢として、主人公にかかる。
侯爵 4 ←爵位がさがるとぐっと減る。
伯爵 8 子爵 2 男爵 2
モブ○○ 12 ←モブって言葉も普及しましたね。
村人 8 商人 4
Sランク 19 ←Sが強いの代名詞
無能 14 ←無能は無能じゃない定期
不遇○○ 9 ←不遇は不遇じゃない定期
ハズレ○○ 9 ←ハズレはry
幼女 20 ←主人公が幼女なことが増えました。なぜか虐げられがち
おっさん 15 おじさん 4
フェンリル 5 ←大きいもふもふの犬は大抵これ
ドラゴン 6
エルフ 16 ゴブリン 2 オーク 2
■青春・ラブコメ関連
幼馴染 18 幼馴染み 3 幼なじみ 8 計29
妹 35 姉 19
元カノ 8 カノジョ 5
美少女 19
■頻出する動詞
昨年同様「始める/始まる」が多いです。「成り上がる」という言葉が特異なワードと認識されているのも変わらないですね。
変化があるのが「拾う」「捨てる」があること。これは「追放」の変化系で、「追放された○○/捨てられれた○○を拾う」というように用いられています。
転生した 37
追放された 57 パーティーを追放され 13
死に戻り 4
もう遅い 5
特異なワードはこのあたりでしょうか。めちゃくちゃ追放されています。追放されないようにしよう。
逆に「追放してくれない」というのもありました。逆張り。
します 52 ません 38
でした 32 したい 32
~な件 25
このあたりも頻出するワードです。サブタイトルで困ったら入れがち。
■頻出する形容詞
形容詞は大きな変化はありませんが、「美味しい/おいしい」がなくなった代わりに「尊い」が入ってきています。
■その他のワード
けど 57
なぜか 21
だけど 12
だが 11 ←最後に使われがち
ですけど 7 ←同上
なのに 9
タイトルも口語的に書かれることが多いので、「けど」や「なのに」が目立ちますね。「○○なんだが」も目立ちます。
もふもふ 36
のんびり 20
もふもふが多い。人類はもふもふを求めている。これが真理。
■人称
君 17 ←漢字表記がスタンダードではあります。
キミ 8 ←カタカナ表記は何か意図があると感じる。
きみ 4
僕 32 ←「下僕」もひっかかるので除いた
ボク 3 ←大抵女の子
ぼく 4
俺 124 ←めちゃくちゃ多い
オレ 3 おれ 0
私 56 ←女性主人公はこれ
ワタシ 0 わたし 13
お前 7
■共起キーワード ――出現パターンが似ている語
■係り受け解析 名詞と名詞
■係り受け解析 名詞と動詞
このデータを見ると、言葉と言葉の繋がりが見えてきます。
「名詞+名詞」は異世界ファンタジーの鉄板ワードになりますね。「名詞+動詞」だと否定形も換算されているので「最強を目指さない」「魔法が使えない」などもあります。否定形タイトルは何年も前からライトノベルのタイトルのスタンダードになっています。
笑わないし、友達は少ないし、可愛いわけがないし、手段を選んでいられないのです。
■まとめ 頻出ワードは「調味料」だから乱用しない
Twitterでバズった際の反応は、やはり「頻出ワードを組み合わせてみる」ことでした。
ただ、当たり前のことですが、頻出ワードのみを組み合わせたタイトルを使っている商業作品は少ないです。
タイトルにはその作品独自の/固有のワードを用ることで、他の作品と一線を画することができるのです。
頻出ワードは、作品を初めて見る読者にとってもなじみ深く、作品のジャンルや傾向が一発でわかるので、それを用いるだけで共通認知が生まれます。これは、料理における調味料や薬味のような機能を持っていると考えます。
醤油味になっていれば、それだけで和風だとわかります。
ニンニクの匂いが漂っていれば、ガツンとくる料理だと胃が反応します。
ウコンなどスパイスを入れればインド、デミグラスをかければ洋風、豆板醤や甜麺醤が入れば中華、とぱっとわかる調味料・薬味になっているはず。
「異世界」「最強」「悪役令嬢」「チートスキル」「可愛い幼なじみ」「S級美少女」などは、これらの調味料・薬味と一緒です。
しかし、調味料や薬味だけでは料理になりません。『異世界最強の悪役令嬢は公爵家を追放されたけど、SSS級チートスキルを駆使して冒険者として成り上がります!』というタイトルをつけても、頻出ワード=調味料だけで料理を作ろうとしているので、固有性・独自性がないタイトルになってしまうと考えます。
「ライトノベル作品参考リスト」を眺めてみるとわかるのですが、多くの作品は、独自のワードやフレーズを入れ込んでいるはずです。それが個性として引き立っているはずです。
これらの頻出ワードは「読者の目を惹く」と理解した上で、調味料・薬味として活用できると、魅力的なタイトルになると考えています。
この記事がタイトルを考えるときの一助になれば幸いです!
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