Straycrab.run()
「通ったことのある道を使わないで帰ったら面白そうっす!」
と、僕の中の芹沢あさひが言ったのでそうした。
引っ越したばかりの新生活と在宅勤務。
人に会うことも外に出ることも極端に少ない。
散歩と読書のため、家から徒歩10分弱の公園にいた。
そこからの帰り道。日曜日の夕方。
家から公園までの最短経路を「口」という文字の一角目だとして、
残りの「コ」の部分のように歩けば、問題無く家に着くだろうという算段。
道路が斜めに逸れていることに気付いたのは、最寄駅から2つ隣の駅名が見えた時だった。
地図は見ない。地図は見ないぞという強い気持ちだけが不思議と胸から離れなかった
ここからは記憶が曖昧になる。
歩いた。
出発地点の公園に辿り着いた
歩いた。
同じ井戸端会議の前を3回通った。
歩いた。
天気の子終盤の森嶋帆高くらい歩いた。
ようやく見覚えのある道に出た時、イマジナリあさひが言った。
「なんか疲れたっす。惣菜弁当買って帰りたいっす。
でも、まいば◯けっとの消しゴムみたいな米は嫌っすよ?」
全く同じ気持ちだった。
最短+90分、息も絶え絶えに帰宅した。
髪はグチャグチャで目はバキバキになっていた。
シャワーを浴びて、ベランダの洗濯物を素早く取り込む。
後はもう記憶をなくすまで酒を飲んでひっくり返って寝るだけだ。
ありがとう、東◯ストア。
ありがとう、8種の中華盛合せ弁当。
蟹🦀