【音盤紹介 vol. 4】 Rafael Toral / Space Elements Vol. 1
Rafael Toralといえばギタードローンということになるのかもしれないが、個人的には断然"Space"のシリーズに興味がある。
"Space"というプロジェクト
"Space"と名のつく一連のシリーズは、Rafael Toralが作成した自作楽器の演奏が収められている音源だ。
『ギタードローン→自作エレクトロニクス』という流れだと現代音楽やインスタレーションなんかに行きがちだが、フリー・インプロヴィゼーションに向かうところが何とも好感が持てる。
そして更に私が好きなのは、この演奏が"electronics"というより"electronic instruments"という方がしっくりくる、という点である。
Rafael Toralは、それらを単にエレクトロニクスではなく、一つ一つ楽器として捉えているように思えるのだ。
この手の自作楽器の場合、どうしても発信音(持続音)が出発点となる。
シンセと同じだ。
そのドローンに音量の強弱、音程の上げ下げ、音域のフィルタリング、サステインの調整(休符の設定)を行う。
スタート(発し方)は違えど、楽器を演奏するプロセスは皆同じだ。
それらのコントロールを身体的に行い、いかに電子音に肉体を与えられるか、楽器として認識させられるか、そもそも身体性=楽器=音楽なのか、そんなことがテーマになっているのではないだろうか(ギタードローンの時も実は同じだったのかもしれない)。
演奏するにあたって、フリー・インプロヴィゼーションが最も適切な方法だったのだろう。
"Space Elements Vol. 1"
"Space Elements Vol. 1"は、手探り感が強い。
自作楽器の可能性を模索している段階だったのかもしれない。
ただ、それも含めて面白い。
今回は、小編成(デュオやトリオ、1曲のみソロ)による即興演奏だ。
Rafael Toralの音は、
・シロフォンの上をボールが行ったり来たりするような音
・アタックのみのオルガン
・緩やかにベンドするフィードバック
・サステインぶつ切りのテルミン
・スプリングドラム風
・まんまアナログシンセ
など、意外とバリエーションに富んでいる。
ただ、"Space"の時よりも音を絞り込んできている。
対する共演者は、チェロ、フルート(David Toop!)、トロンボーンなど、こちらも多種多様。
トランペットのSei Miguelに期待したが、残念ながら思ったほど奮わなかった。
最も面白かったのが、パーカッションのCésar Burago。
クラーベ、ウドゥドラム、ギロなど、シンプルながら鳴りがよく、Rafael Toralの出す音と相性が良い。
持続音よりも、アタック感のある音との相性が良いのかもしれない。
総評
日本語情報レア度★☆☆・・・結構ある。でも初期の音源ほどではない。
必聴度★★☆・・・ヴィルトゥオーソだけがフリー・インプロヴィゼーションではない
入手困難度☆☆☆・・・今すぐ買える。Bandcamp最高。
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