#39 「ちいちゃんのかげおくり」5時間目までやってみました
先週から「ちいちゃんのかげおくり」の授業をやっています。
1から3時間目の授業の様子はこちらからご覧ください。↓
【4時間目】
・この日は、物語に出てくる登場人物について考えようと思っていました。
・前回も同じめあてで挑んだのですが、ちいちゃんに関する話し合いが盛り上がり、結局お父さんや、お母さん、お兄ちゃんについて考えるところまでいかなかったのでその続きからです。
・まず前回の復習をしてから「お父さん」「お母さん」「お兄ちゃん」についてどんな人物かを作中の言葉から考える事にしました。
○お父ちゃん…体が弱い、でも頼りがいがある、いつも笑顔、ちいちゃんを悲しませない
○お母ちゃん…(走れるので)体も元気そう、心配性
○お兄ちゃん…走るのが得意でない、(転んでしまったので)もしかしたら 体が弱いのかもしれない、色々なことが気になり質問する人
…と、あまりたくさんのことは分かりませんでした。
・ここで子どもたちから意見を聞いて、自分が感じたことは「ちいちゃんをはじめ、なぜこの物語に出てくる人たちは、あまり詳しく性格や、設定が描かれていないのだろう?」ということが気になりました。
・あまんきみこさんの作品に「白いぼうし」がありますが、このシリーズの「車のいろは空のいろ」でも主人公の松井さんはもう少し、活発に話したり、驚いたりしている印象があります。
・あまんきみこさんの作品は「白いぼうし」の後に「ちいちゃんのかげおくり」がつくられているので、ちいちゃんのかげおくりで、人物の描写を極力省略したのは「何か意図があるはずだ」と思いました。
・T「なぜこの物語に出てくる人たちは、あまり詳しく性格や、設定が細かく描かれていないのだろう?」と子どもたちに投げかけたところ、ある子から、「このお話は、はじめに自己紹介がない」という意見が出てきました。
・「スイミー」であれば、「一匹だけ黒い」とか「泳ぐのは誰よりも速かった」などの説明がありますが、ちいちゃんのかげおくりでは、「『かげおくり』って遊びを最初に~」という形でいきなり話が始まると話していてなるほどと思いました。
・この始まり方も、今まで習った物語にあまりない型だなと改めて感じました。
・T「なぜ作者は自己紹介をしなかったのだろう?」と私が問うと
・C「戦争中」という時代背景をあえて初めに伝えたくなかったという作者の思いがあったのではないか」という意見
・C「あまり詳しく書くと、実際の話のような感じもするし、あえて設定を詳細にしないことで、現実と、想像の話のどちらにでも読み取れるようにさせたかったのではないか」という意見
・C「登場人物の好きなものやエピソードを書きすぎると、登場人物に思い入れが強くなりすぎて、悲しくて読めなくなってしまうからではないかという意見もあり、なるほどなと思いました。
・最後にこの日のまとめとして、「あまんきみこさんがこのお話を書く時に気を付けたことは何か?」と投げかけて、自分なりの答えをノートに書いて私に見せて授業が終わりました。
・この日感じたのは、今日の授業のように、作品から「作者の意図」をうまく言語化して、子どもに「なぜこのように書いたのか」を聞くのは、他の物語教材でも使えるかもなと思いました。
【5時間目】
・感想、題名、登場人物…と確認できたので、次にこのお話の構成を整理しようと思いました。
・ここは少し、確認作業的になってしまいますが、物語全体の流れを頭でイメージできないと、時系列などがごちゃごちゃになってしまい、のちに「根拠をもとにした解釈」をする時にどうしても、正確に考えられなくなってしまうので、この時系列はきちんと押さえようと思いました。
・「春風をたどって」「まいごのかぎ」に関しては、起承転結の4つに分けて構成を整理していましたが、この「ちいちゃんのかげおくり」は時間の経過を表す言葉が文章のはじめに割と多く書かれていたので、まずはこの言葉を整理していけば流れが分かるなと思いました。
・そこでこの日のめあては「物語のつくりかたの秘密を見つけよう」にしました。「時系列をまとめよう」「時間を表す言葉を見つけよう」だとどうしても作業的になってしまうので、様々な発見があったときに授業の流れをそっちにももっていけるように、このめあてにしました。
・ここからは数分間時間を与えて、教科書から、時間を表す言葉を子どもたちがグループで探しました。
「◎ページに・・・と書かれている」というような形で発表してもらいました。黒板にまとめるとこんな感じになりました。(使用教科書は光村図書です。)
①P14 お墓参り
②P17 次の日お父さんが出征
③P18 夏のはじめのある夜
④P19 風の強い日でした
⑤P21 たくさんの人たちの中で眠りました
⑥P21 朝になりました
⑦P23くもった朝がきて、昼が過ぎ、また暗い夜…
⑧P24 明るい光が顔に当たって目が覚めた
⑨P27 夏のはじめのある朝
⑩P27 それから何十年
こうしてみると結構、時間が動いていることが分かります。
まずこの時間の流れを大まかにとらえなければいけないので、
①~⑩のそれぞれの間隔がどれくらいの長さなのかを考える事にしました。
①P14 お墓参り
(ア)
②P17 次の日お父さんが出征
(イ)
③P18 夏のはじめのある夜
(ウ)
④P19 風の強い日でした
⑤P21 たくさんの人たちの中で眠りました
⑥P21 朝になりました
⑦P23くもった朝がきて、昼が過ぎ、また暗い夜…
⑧P24 明るい光が顔に当たって目が覚めた
⑨P27 夏のはじめのある朝
(エ)
⑩P27 それから何十年
・まず(ア)はどれくらいの時間がたったかという質問をしてみました。
・これは①が出征の前の日、②に次の日と書いてあるので「1日」であることが分かります。
・次にお父さんが出征後、夏のはじめまでの(イ)はどれくらいの時間がたったかを考えました。
・はじめの挿絵に注目した子は、半そでだからおそらく初夏じゃないかな。6月~7月くらいだと思うと答えました。
・そのあともお兄ちゃんと色々なかげおくりをして遊んでいる場面が何日か描かれているので、(イ)は数週間から1か月くらいの時間ではないかとみんなで話し合いました。
・次の「夏のはじめのある夜」と「風の強い日でした」の(ウ)間にどれくらいの時間がたっているかを考えました。しかし、これは文章をよく読むと、「夏のはじめのある夜、その日は風が強かった」ということが読み取れます。なのでここは同じ日、同じ時間であると確認できました。
・最後の(エ)それから何十年とあるので、ここが、この話のなかで一番時間がたっていることが分かりました。
・さて問題はここからです。
・④~⑨までの間は何日だった?とたずねたところ、3日や4日、一週間など色々な答えが出てしまいました。
たしかにここは物語の一番重要な部分なので、ものすごく時間がたっているように感じますが実際は二晩ほどに起きた出来事だということが分かります。
・しかし、子どもの中では、この空襲からの出来事の時系列が、まだうまく整理できていないようでした。
・この④~⑨の時間の流れを丁寧に確認しなければ…と思ったところでこの日の授業終了の時刻になってしまったので、次回の6時間目はまずここから、時系列を丁寧に整理して、それに伴う出来事や、ちいちゃんの感情のへんかなども整理出来たらと思っています。
現時点までの授業報告でした。
3年前にやった時には気づかなかった新しい発見があるのは楽しいです。
また授業が進んだらまとめていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(追加)続きの6〜12時間目の授業はこちらからみられます。↓