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お金の価値を未来に持って行くのは案外むずかしい

「インフレ」とか「物価上昇」という言葉は、どちらかというとネガティブな用語として用いられます。しかし、襟を正して言うなら、「人類の歴史はインフレーション(物価上昇)の歴史」そのものです。

突然ですが、「新潟貯蓄銀行」ってご存じでしょうか。
同行では1915年に大正天皇即位の記念預金として、ナント「100年定期預金」が作られました。金利は年6%の複利でした。

年6%の複利って、どのくらいお金が増えるイメージかというと、当初預けた元本が10年で約1.7倍になる計算です(けっこう凄い数字)。この100年定期預金は、2015年に本当に満期を迎えました。


なにしろ「100年」ですから、当初の元本は約339倍になって戻ってきました。
あなたが仮に、1915年当時新潟市の職員で、当時の平均的な月給「50円」を受け取っていたとしましょう。

あなたは月給の「50円」を丸々100年定期預金に預けました。すると、100年後(2015年)その50円は約1万7000円となって戻ってきます。

50円 → 1万7000円!

でも、です。1万7000円って、なんだか少ないと感じませんか?
100年前、自分の「月給」を全てつぎ込んだわりには、今のお金の感覚でいえば「たった1万7000円か・・」になってしまいます。

お金の価値を未来に持って行くのは、案外むずかしいものなのです。


繰り返しですが「100年」です。その間、戦争もありました。第二次世界大戦終結時、日本は焦土と化していました。当時日本中で極端な物資不足が発生したといいます。

日本銀行(中央銀行)の卸売物価指数によると、終戦(1945年)からの1年間でインフレ率は約5倍、2年間で約16倍、5年間では70倍を超えたとされます。

極端な物価上昇が起こったため、お金(数字)が100年で約339倍に増えていても、お金の価値は増えたように感じない(むしろ、減ってしまったと感じる)。

これが「インフレリスク」の正体です。

長い時間の経過によって、お金がモノを買う力が減じてしまうリスクを「インフレリスク」と呼びます。これはあなたの歯茎が長い時間をかけて衰え、徐々に歯槽膿漏になっていくのと同じで、短期的な変化ではないため、きわめて自覚しにくいリスクとなります。

※バブル崩壊から20年超続いてきた、モノの値段が上がらない現象(デフレ)は、ヒトの歴史の中ではきわめて異例であるという認識が必要でしょう。


さて、話がコロコロ変わりますが、あなたは今、台所にいます。
手元に100万円の「現金」を持っています。このお金の価値は、5年、10年後もそんなに変わらないだろうと思ってしまいがちです。

しかし、仮に年率3%のインフレが継続すると、モノの値段は30年で約2.4倍になります。人類の歴史が物価上昇の歴史であるなら、ヒトの営みの中で「お金の価値は一貫して減ってきた」と云えます。

あなたの100万円を台所の「床下収納」に30年間置き続けてしまうと、上例(年3%のインフレ)に倣えば、その100万円の実質価値は、41万2000円程度にまで減ってしまいます。

―(30年かけて)お金がモノを買うチカラが低下する。― という意です。


年3%の物価上昇はマイルドなインフレです。どの国でも普通に起こり得ることです。インフレが続くと、お金の価値が徐々に減じていく。
これは、文章だけを見るとネガティブに聞こえますが、実は経済的に見ればポジティブなことです。

私たちの先人はさまざまに創意工夫を凝らし、数々の付加価値を創造して、その結果、モノやサービスの価格が上昇し続けてきた歴史を持ちます(その分、現金の価値が一貫して下がり続けました)。これは世の中が「豊かになったこと」と云えます。

経済のパイが大きくなるとき、マイルドな物価上昇(2~3%程度)が起こるのは必然です。仮に年率3%のインフレが継続し、あなたの給与も物価上昇に負けないくらい上昇すれば、暮らしの実態に何ら問題はありません。

しかし万一、あなたの収入がインフレ率ほど伸びなければ、資産運用の出番となるかもしれません。

さまざまな専門家が、さまざまに資産運用の必要性を説きますが、根っこの部分を掘り下げれば、あなたのお金の一部を、リスクがある資産で持ち続ける(資産運用する)理由はただ一つです。それは・・・、

長期の物価上昇(インフレ)に負けないため。

もっと直接的に言えば、あなたの100万円が30年後も同じ購買力を持つために、資産運用という行為は存在するのです。


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カン・チュンド
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