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平均投資って何だ?
世の中には実にさまざまな枕(まくら)があります。手触りひとつ取っても、柔らかめの枕が好きという人もいれば、硬めの枕が好みという人もいることでしょう。
投資のやり方(スタイル)にも実にさまざまあります。何十とある投資スタイルのひとつが、インデックス投資と呼ばれる投資手法です。
私はシンプルに「平均投資」と呼んでいます。あなたも日経平均株価とかダウ平均という言葉を聞かれたことがあると思います。あれらは株式市場の「平均値」のことです。
インデックス投資は、このような市場の平均と連動するような投資成果を目指す手法のこと。市場(マーケット)の平均を買っているだけなので、当然平均以上の成績は望めません。
―ちょっとがっかりされましたか?―
インデックス投資は、平均以下にはならない代わりに、平均以上の成績も取れないのです。身も蓋もない言い方をすれば、インデックス投資=凡庸な投資のやり方といえるでしょう。
私は世界でいちばんインデックス投資に向いているのは日本人だと思っています(まじめに)。日本人は「ほどほどでよし」「ちょうどいい塩梅」など、極端さを避け、心持ちを真ん中に置く精神文化を有しています。
分(ぶん)を知る。という言葉をご存じでしょうか。分(ぶん)とは「本分(ほんぶん)」のこと。本分には、自分が出来ること、自身がほんらい果たすべきこと。という意味があります。
多くを求め過ぎず、自分に合った程よい成果でよしとする信条は、まさにオトナの所作だと思いませんか。
実際、インデックス投資はシンプルであります。市場平均を買って持ち続けるだけなので、中学生でもその手法を理解できます。
平均に連動させるとは、無駄な要素をそぎ落とし、余計な動きをしないということでもあります(結果としてコストも安くなります)。
よく考えてみると、お仕事や暮らしの雑事の中で、いきなり「平均程度」の成果を上げるのはなかなか難しいことです。ところが投資という事象では、平均を難なく獲得することが可能です。
とは言っても、平均投資にも「敵」がいます。それは自分の欲です。誰しも「ワタシは人よりよい判断が出来る」と思うものです。上手く選択すれば平均より高い成果を出せるのではないかという「欲」を、どう制御するのか。
もうひとつの敵は、己の恐怖心です。平均投資といっても、市場全体が下がるときは、あなたの成績も同程度「下がって」しまいます。決してリスクが小さくない投資手法であることは再確認が必要でしょう。
さて、話はいきなり飛んで京都です。
京都市右京区にある龍安寺は「石庭」で有名ですが、私が好きなのは以下の蹲踞(つくばい)です。
吾
知 口 唯
足
口(くち)という漢字が、4つの言葉の共通の部首になっています。時計回りに読むと、「吾 唯 足 知 (われ、ただ足るを知る)」となります。
文字として書くのは簡単ですが、「吾 唯 足 知 (われ、ただ足るを知る)」の心境に達するのは簡単ではありません。それなりに鍛錬が必要です。
特に投資の世界は、さまざまな思惑が入り乱れます。謙虚に、事象を引き算で捉え、「足るを知る」を貫けるのか?(まるで禅のような心の持ちようが投資では求められるのかもしれません)。
最後に、インデックス投資を実践する人を「インデックス投資家」といいます。彼ら/彼女らは「平均を取れればいいや」と割り切っているため、あまりガツガツしていません。どちらかというと淡泊な投資家なのです。
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