【検証】サザエさんの血液型は公式設定がされているのかを探究してみた中学理科教員
中学理科の授業にて『生物の遺伝』を扱う単元があります。そこでは、異なる遺伝子対をもった生物同士が交配をすることで、子にどのような遺伝子対が顕われるか、を学習します。
そちらの単元の授業をするにあたり、良い学習教材は無いかと調べていた時に、あるサイトに出会いました。
愛媛県今治市にあります『Science Lab 冨田塾』さんのHPを発見しました。そこでの事例として、サザエさん一家の血液型から遺伝の法則を理解しようとするものでした。
そちらの記事によれば、サザエさんの家系図、そして血液型の遺伝子型からタラちゃんの血液型を推測することができる、というものです。
詳細はぜひHPを見て頂くとして、私はこれを授業に持っていくにあたり、次のことを明確にしなければなりません。
ここに記載されている血液型は、本当か?
とても面白い取り組みですので、さらに欲張ってそこに根拠を求めたくなりました。当HPによれば、出典がYahoo!知恵袋であり、やや疑わしいものでした。
過去に放映されたアニメの中で、カツオ君が一家の血液型を探っていた、とのことです。本当かいな…。
そこで、カツオ君がそうであったように、私が自分なりにサザエさんの血液型について探究をしてみたことについて、報告をしていきます(当HPの管理元に問い合わせてみたところ、出展根拠はYahoo!知恵袋しかないことを教えてくださいました。突然の連絡にも快く対応してくださいました)。カツオ君の意志は、僕に継がれました。
まずは、図書資料にあたるべきだと考えたカツオ君こと私は、勤めている学校の、学校司書に頼るべきだと考えました。
「サザエさんの血液型について知りたいのですが…」
この一言だけで、多種多様な図書資料を準備してくださります。中高生の皆さんは、もっと学校司書さんにもっと頼るべきですね。
あらゆる本にあたりました。設定本、歴史本、東京サザエさん学会(そんなのあるんだ…)、世田谷サザエさん研究会(そんなのあるんだ…)などなど。
しかし、そもそも血液型に関する記載が見つかりませんでした。ちなみに、東京サザエさん学会、世田谷サザエさん研究会は、漫画原作に関しての組織だったことが判明しました。漫画の中で公式設定がされている可能性はありますが、今回はアニメの方での設定に限定したいと思います。
さて、書籍の中に情報が見つかりませんでしたが、一旦くじけそうな心を奮い立たせつつ、次の行動に移りました。
学校司書さんに見つからなかった報告をすると同時に、『東京には長谷川町子美術館なる建物があり、サザエさんの権利関係はそこが所有している』ということを教えてくれました。
となれば、次の行動は見えてきます。
私は早速、東京都世田谷区にあります長谷川町子美術館に問い合わせを行いました。
プルルルル… ガチャ…
「はい、こちら長谷川町子美術館でございます。」
私「あ、あの、サザエさんの血液型を知りたいのですが…!」
このような、やや不審な電話にも快く対応してくださる相手様。
少々お待ち頂けますか?との回答がありました。
そしてしばらくして、このような回答が返ってきました。
「アニメの権利元はフジテレビにありますので、当館としてお答えはできません」
…なるほど!そう来たか!
どんどん真相に近づいて行っている気がしますね。
さて、次の行動が見えてきます。
…
プルルルル… ガチャ…
「はい、こちらフジテレビでございます。」
私「あ、あの、サザエさんの血液型を知りたいのですが…!」
このような、やや不審な電話にも快く対応してくださる相手様。
「担当者に確認しますので、少々お待ち頂けますか?」との回答がありました。
窓口のお姉さん、ありがとう。皆さん、社会はあなたが思っているよりも、優しく出来ているのかも知れません。
窓口のお姉さんが担当者に聞きにいく姿を想像しながら待ちます。
「視聴者様〜。お待たせ致しました。」
というお姉さんの声が、聞こえてきました。
いよいよ、サザエさんの血液型の公式設定がなされているのか、が判明します…!
「担当者に確認したところ、フジテレビとしてご回答できることはございませんでした。」
!
なんと、そうきましたか。
設定がされていれば何型かを教えてもらえ、設定が無いのなら無いと言ってもらえれば良いものの、結果は『回答が得られなかった』となりました。
(視聴者様って呼ばれた…。)
なるほど。『お客様』じゃないのか。確かに他の事例で言えば、私の通っているヒゲ脱毛のクリニックでは「患者様〜」と呼ばれます。なるほど…。なるほど…!などと考えておりました。いつだって学びはあるものですね。
ちなみに、私は家にテレビがありませんので、正確に言えば『視聴者様では無い』ことになります。しかし、そんなことを対応してくれたお姉さんにいう必要はありません。視聴者様で無いことがバレてしまえば、その場で電話を切られてしまうことでしょう。
設定本には記載がない、美術館からはテレビ局にと言われ、テレビ局からは回答が得られない…。さて、困りましたね。私のサザエさん血液型探究はもはやここまでか…。
しかし!諦めてはなりません。探究において大事なのは『粘り強さ』なはず。学習指導要領にもそう書いてありました。
次に私は、県立図書館に赴きました。
『資料相談(レファレンスサービス)』を利用するためです。
残るはこれしかありません。
9時に開館する県立図書館。それに対して、8時55分に到着してしまった私。その本気度が伺えます。地域のおじいさんがちらほら集まっていた図書館入口前に、鼻息をフンスカ荒げながら待機します。
そして、9時になりました。
「おはようございま〜す」
挨拶を交わしながら私は一直線かつ足早に、資料相談カウンターに向かいました。
「あ、あの、サザエさんの血液型を知りたいのですが…!」
窓口に座っていたお兄さんは、土曜日の麗かな朝イチのお仕事が、この厄介な質問をぶつけてくる成人男性の対応になってしまいました。そのことをやや不憫に思いつつも、その不憫を引き起こしているのは自分であることを意識しつつ、お兄さんとの対話を行いました。
・あるアニメ回で血液型が言及されていた可能性があること
・その話ではカツオ君が家族の血液型を聞き回っていたこと
・今は私がカツオ君であること。
ここまでの探究の経緯をお兄さんにぶつけます。
調べていく中で、ある事実が浮かび上がってきます。
「…あれ。もしかしてこれじゃ無いですかね…?」
書籍、Web、オンラインデータベース等、あらゆる媒体を駆使して探した結果、なんとアニメ回を特定(?)することができました!お兄さん!センキュー!ベリーマッチ!わーい!HAPPY!HAPPY!
アニメ回を特定するに至った情報源もやや信ぴょう性に欠けるHPであったことは否めませんが、おそらく1990年7月15日に放送された『No.3203 おだてに弱い性格です』だということが分かりました。
さて、次の行動が見えてきました。
そのアニメ回を直接この目で見るしかありません。
どうにか視聴できないか、ネット検索をしてみることにしました。
すると、FOD(フジテレビオンデマンド)という動画配信サービスを見つけました。『サザエさん』と検索してみると、二つの再生リストが見つかりました。
一つ目は『サザエさん【1960〜70年代】』でした。私が探しているのは、1990年の放送回ですので、この中にはありませんでした。
もう一つは『サザエさん【傑作選】』というものでした。この中に収録されているアニメ回のタイトルを全て見てみましたが、『No.3203 おだてに弱い性格です』という回を見つけることはできませんでした。それもそのはず、カツオ君がただ家族の血液型を聞き回るお話が、傑作であるはずはありません。
さて、どうしたものか。レンタルDVD店にも行ってみましたが、そもそもサザエさんはDVDとして売り出されていませんでした。
こうなったら、もうこれしかありません。
…
プルルルル… ガチャ…
「はい、こちらフジテレビでございます。」
私「あ、あの、サザエさんの血液型を知りたいのですが…!1990年7月15日に放送された『No.3203 おだてに弱い性格です』という回の中でカツオくんが登場人物の血液型を聞き回っていたという情報の真偽を教えてもえらえませんか?あるいは、その放送回を視聴する術を何か教えてもらえませんか?」
このような、やや不審な電話にも快く対応してくださる相手様。担当者に確認してくださるそうです。
電話に出てくれたお姉さんのことをやや不憫に思いつつも、その不憫を引き起こしているのは自分であることを意識しつつ、お姉さんの回答を待ちました。
「視聴者様〜。お待たせ致しました。」
…いよいよです。いよいよ真実が明らかになります。
担当者に確認をし終えたお姉さんが、僕に教えてくれました。
「担当者に確認したところ、フジテレビとしてご回答できることはございませんでした。」
!!!
そこに映像があるんだろ!その回を私に見せておくれよう!
それか、10分ちょいお姉さんの時間をおくれよぅ… 見てみておくれよぅ…。
そんな言葉は、視聴者様でない僕にいう権利はありません。
「そうですか…。」と、諦めて電話を切りました。
いかがだったでしょうか。
こちらの探究、残る道は『FODに『No.3203 おだてに弱い性格です』が公開されるのを待つ』になります。
皆さんもぜひ、サザエさんの血液型について探究してみてはいかがでしょうか。そして、何か分かったら僕に教えてください。
来週もまた見てくださいね。うふふふふふふ