「曖昧さ回避」と「エルズバーグのパラドックス」:計算できるリスクを選びたい
人間は何かを選ぶときに確率が未知である選択を回避しようとする心理を持っています。
分からないリスクよりも分かるリスクを選びたいともいえます。
このような傾向を「曖昧さ回避(不確実性回避)」といいます。
耳慣れない言葉かもしれませんが日常生活の様々なシチュエーションで私たちは曖昧さ回避をしています。
エルスバーグのパラドックス
アメリカの経済学者ダニエル・エルズバーグは論文の中で人がいかに曖昧さを嫌うかということを証明しました。
「曖昧さ回避」について理解するためには以下の「エルズバーグの壷」と呼ばれる思考実験が役に立ちます。
次のケースを考えてみましょう。
ここに2つの壷があります。
壷Aには赤球50個と青球50個が入っています。
壷Bには赤玉と青球が合わせて100個入っていますが比率は不明です。
どちらかの壷から1つ球を取り出したときに自分の予想した色だったら賞金が出ます。
あなたはAとBのどちらの壷から選びたいですか?
このケースではほとんどの人がAの壷を選びます。
どちらを選んでも賞金がもらえる確率は同じはずですが人間は球の数が分かっているほうを選びたくなるのです。
このような葛藤を「エルズバーグのパラドックス」と呼びます。
低金利時代でも固定金利を選びたい
曖昧さ回避は日常生活や金融取引においても頻繁に起こります。
例えば家を買うときの住宅ローンが良い例です。
どんな低金利時代でも変動金利と固定金利では総支払い額が確定している固定金利を選ぶ人がそれなりの割合でいることからも分かります。
ちなみに過去の数値をみると変動金利でもそれほど大きくは変化していないことが分かっています。
人間は曖昧な状態での選択を避けようとする生き物なのです。
しかし冷静にデータを分析しないと期待値が低い選択をすることにもなりかねません。
※人が曖昧さを回避する傾向を持つということはこの論文が出る前に既にジョン・メイナード・ケインズが指摘していたことでもあります。
参考文献:Daniel Ellsberg,(1961)Risk, Ambiguity, and the Savage Axioms