働くことは生きること!
「みんながスーツをちゃんときて、決まった時間に通勤できなきゃダメなのかな?」
作業療法士から転身し、ソーシャルファームを立ち上げた女性の言葉です。
まだまだテレワークは一部の人の世界だったころのどんな体験からの言葉だったのか、私には想像することしかできませんでしたが、「ダメじゃないと思う」という率直な思いを口にしている自分がいました。
自分を大切にしてほしい
彼女のソーシャルファームでは、たくさんのユニークな方たちが働いています。仕事は多岐にわたりますが、基本的には体を動かす仕事です。
「1日1食だけで、ものすごく辛いつけ麺しか食べてない人がいるんだよね。眠れない人も多い。うちのみんなが少しでも健康になるためのセミナーをやってもらえないかな?もっと自分を大切にしてほしい。」と彼女はいいました。
1日1食の肉体労働が、様々なリスクをはらんでいるということはいうまでもないことですが、見守るしかない現状に、もどかしさを感じている彼女の気持ちが痛いほど伝わってきました。
力になりたいと意気込み、「ぜひやらせてもらいたい!」とセミナーをお引き受けしたものの、さて何をどこから伝えたらよいのか、途方に暮れた後、辿り着いた書籍が、新しい視点をくれました。
そこには、外科医の視点から、人体の構造がいかによくできているか具体例をあげ、失われると、どんな「不足」や「不快」が起こるのかをわかりやすく解説されていました。
これだ!
もともと人間にはすばらしい機能が備わっていて、それを意識して、体を大切にすること、それは自分を大切にすることになる、ということを伝えようと決めました!
既存コンテンツの塊を砂のように砕きさらさらの状態で
私は産業保健コンサルタントとして、日々健康管理の重要性を伝えているわけですが、労働安全衛生に基づく企業の安全配慮義務や従業員の自己保健義務、また疾病予防や重症化を防ぐための健康活動といったいつもの話題ではなく、とにかく自分自身を大切に、更にはなぜ大切にしなければならないのか、どう大切にするかというWell-beingな価値観研修のようなイメージで、既存コンテンツの塊を砂のように砕き、サラサラの状態にして、一から構成を考えました。
「知る・活かす」「リラックス」「人の幸せ」の3本柱にとし、「自分を大切にして!」というメッセージをちりばめました。
メンバーとともに、専門性を研ぎ澄ましたまま、どんな隙間にでもサラッと入り込める講釈で全力で臨みました。
働く人のナラティブがシンクロする瞬間の創造
おばあちゃんの家のような素敵な日本家屋の和室でのセミナー実施となりましたが、みなさん、実に思い思いのスタイルで参加してくださいました。
一番前に正座して直立不動できいてくださる方、後方の椅子に座り、そっと様子をうかがう様子の方、ずっと腕を組んで下を向いたままの方等々、実にユニークでした。
セミナーがすすむにつれ、すばらしい体の機能に共感し、自らの経験を披露してくださる方、下を向いたまま、体操も不参加の方が、首にホットタオルをあてるリラックス体験で、はじめて顔をあげてくださる場面もありました。
そんな皆さんの姿から、これまでの生き様がダイレクトに伝わってきて、様々なナラティブがシンクロする瞬間が重なりあった2時間となりました。
人は本来、自分を大切にし、他者を感じながら、自分らしく生きていくための力をもっているんだということを確信し、かけがえのない仲間と笑顔になれた瞬間でした。
専門性を研ぎ澄ましたまま、どんな隙間にでもサラッと入り込める講釈で臨んだことで、皆さんに対して何かしら一粒でも残せたのではないかと思っています。そして時間の経過とともに忘れ去られてしまいそうなこの一粒が、何かの拍子に記憶として飛び出し、まずは聴講してくださった皆さんに、ひいてはこの企画を実施いただいた彼女のソーシャルファームのサクセスの一因として紐づけられることを祈ってやみません。
これからも、かけがえのない仲間やお客様とともに、働くことを通して得られる幸せを感じ続けられる仕事に挑戦していきたいと思います。