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色川武大・阿佐田哲也佳撰7品
戦時中の動乱から昭和の終わりまでを生き抜いた色川武大。
今回はその作品の中から代表作7つを厳選してご紹介致します。
「怪しい来客簿」
1977(昭和52)年、色川48歳の年、泉鏡花賞受賞。
1961(昭和36)年、色川32歳、「黒い布」での中央公論新人賞受賞以来沈黙していた色川武大の名を再び世に知らしめた作品です。
戦時中に見た人々の様子を独特なタッチで描く「空襲のあと」や中学の級友との交友とその友情の記憶、「門の前の青春」、浅草のスター・二村定一にフォーカスした「砂漠に陽は落ちて」など、色川にしかない視点で人々やその生を見つめる多数の短編が収録されています。
生きる人、一人ひとりにくまなく配る優しい眼差しやその人々を取り巻く世界を見渡し、切り取ろうとする厳しい視線など、作家・色川武大を形作るたくさんの要素が散りばめられた作品群となっています。
「うらおもて人生録」
「生家へ」は色川の文学の主題ともいわれる、父親との確執をテーマにした作品です。
それまで「黒い布」やその他の短編にも散見されていた父親との関係についてが、「夢」の描写を交えながら幻想的な雰囲気をもってまとめられています。
「離婚」
1978(昭和53)年色川49歳、第79回直木賞受賞作。
現代版、「痴人の愛」といった趣で、離婚をしたものの、離れられぬ半ば同棲のような形を続ける夫婦の日々を描いた作品です。
軽妙な味わいのある洒脱な作風で、人間と人間の関係、人生のわからなさ、面白さを味合わせてくれる作品です。
「百」
1981(昭和56)年、色川52歳、川端康成文学賞受賞作です。
こちらも父との交渉を描いた作品で、老いゆく父を見る中での「私」の心の動きを描いています。
「生家へ」よりもコンパクトな分量ですが、人生のあわいを感じさせる妙味のある色川晩年の佳作です。
「麻雀放浪記」
こちらは皆様もご存知知阿佐田哲也「麻雀放浪記」。
少年マガジンでも原案:さいふうめい、漫画:星野泰視で「哲也――雀聖と呼ばれた男」として連載され、また近年では「賭博黙示録カイジ」などの福本伸行の手掛けた表紙でも話題になりました。
この小説は主人公が戦後の混乱期を博打うちとして生き抜きながら、成長し、「坊や哲」として呼ばれるまでに至る過程を描いた小説です。
この作品で麻雀小説というジャンルを確立した功績はあまりにも大きいですが、何よりも作品として優れた教養小説(主人公がいろいろな体験を通じて成長する形式を持つ小説)の形を持っている点が、現代においても人気を集めている大きな理由となっているのでしょう。
「狂人日記」
「狂人日記」は色川晩年の作品で、1989(昭和64・平成元)年には読売文学賞を受賞しています。
「自分の頭はこわれている」と感じている「私」が入院中に出会った女性、「圭子」との交渉を通じて人間と人間の繋がりの不確かさやそれを超えて繋がろうと希求する切実な感情が描かれる大作となっています。
以上7作品、もし気になったものがあれば、ぜひ一度読んで見てください。きっと、あなたのまだ見ぬ世界がそこには広がっているはずです。
色川武大の生涯も併せてご覧いただければ幸いです。