『縮小が続く書店の未来』について考えてみた
こんにちは、お金が入るでかねいりです。
先日、朝のNHKのニュースを見ていたところ、「全国1741市区町村のうち、書店が1店舗もない自治体が、2024年3月時点で482市町村となり、全体の27.7%に達した」と伝えていました。
ネット通販の台頭により、書店の減少が進んでいるという話は聞いていましたが、全国の自治体の4分の1に書店がないというニュースは正直、驚きました。
そこで今日は、書店や本の可能性について調べて考えたことをお伝えできればと思います。
■書店の現状とは?
ではまず、書店が減少していると言われていますが、実際どの程度減少しているのでしょうか?
2003年には全国に2万店ほどの書店がありましたが、そこから減少傾向は続き、2023年には1万店ほどとなりました。この20年間で50%減はかなりインパクトのある数字だと感じます。
裏を返すと、ネットで本を買うという消費者が増加しているということが言えるとともに、電子書籍で本を読むという消費者が増えているとも言えそうです。
そのことの裏付けとして、印刷業界の市場規模についても調べてみました。
紙の本を読む人が減っているとするならば、本を印刷する印刷業界にも影響があるはずと考えたからです。
印刷業界の市場規模は、約3兆円。
ピーク時は、1990年ごろで、6~7兆円あり、そこから比べると約半減。
印刷における用途は大きく分けると次の4つ
・出版印刷:本や雑誌など
・商業印刷:チラシ、カタログ、DMなど
・事務用印刷:名刺、封筒など
・包装印刷:パッケージ、段ボールなど
この印刷用途別の推移を調べてみると、
出版印刷以外は、横ばい。
ここから、印刷業界の市場規模が大幅に減少している大きな要因は、出版印刷が減っていることだとわかります。
書店の減少と相関関係があると考えて良さそうです。
■新しい書店のカタチ
このまま書店や紙の本は減っていってしまうのでしょうか?
そこで、今後の書店や紙の本のカタチについて調べてみました。
①ホテル
「新潟ワインコースト」内に佇む「ワイナリーステイトラヴィーニュ」。ここは、オーベルジュと言われるレストラン付き宿泊施設。
窓の外にはぶどう畑が広がっていることがわかります。
この敷地内には温泉施設があり、そこにセレクトされたワインや食、芸術に関する本が約4000冊並べられたスペースがあり、本はすべて新刊のため、気に入ったものを購入することが可能。
これもひとつの書店のカタチと言えそう。
②カフェ
名古屋にある「文喫 栄」。
ここのコンセプトは、「本屋と大喫茶ホール」。
入場料制で、フリードリンクやこだわりの喫茶を楽しみながら、店内の本をすべて手にとって読むことができます。
広さ370坪で152席のスペースに、90分750円~最大料金2,250円で、店内にある1点1点丁寧に選ばれた約3万冊の本との出会いが楽しめるというもの。
入場料を取る書店というのもおもしろいですね。
③スペース貸し
北九州に「ぼくの書店」という書店があります。
コンセプトは、「シェア型書店」
棚のスペースを貸し出して住民が自分の本を持ち寄り販売する仕組み。書店をシェアすることで初期費用を気にせずに始められます。
この書店をオープンさせた大西さんは、北九州の地元に書店がなくなり、地域の活性化につなげたいという想いからこのシェア型書店をスタートさせたと言います。
書店×地域活性というカタチは今後、可能性がありそうですね。
④印刷会社
札幌にできた「定山渓(じょうざんけい)第一寶亭留(だいいちほてる)翠山亭(すいざんてい)」。そこには、温泉と読書を楽しむ空間「風呂屋書店」というものがあります。
130平米の空間には2500冊の本が並び、足を伸ばしてゆっくりと読書ができる3つの個室も。風呂上がりにラウンジで一杯飲んで、その先にある「風呂屋書店」で本を手に取る。宿泊者だけでなく誰もが約2,500冊の書籍を閲覧・購入。
この書店を支援したのが、大日本印刷。
宿泊施設等の書店業以外の事業者に対し、従来のサービスに本を組み込んで利用者の体験価値を高める、書店開業支援サービスを2024年9月に開始しました。
目的は、書店以外の各種施設で本を販売することで地域の住民等が本を買う場所を提供し、国内の書店減少や書店のない自治体の増加による課題解決すること。
■書店や本の可能性
大日本印刷は、本の価値として、サービスの付加価値やリピート率、滞在時間の向上の手法という点に注目し、ホテルやカフェ、その他のサービス業をターゲットに書店開業のニーズがあると考えました。
確かに、ホテルも他との差別化や特徴を生み出すために施設の内装や料理などにこだわる傾向はありますが、そこに「本」という発想はこれまで少なかったように感じます。たしかに、そのホテルのコンセプトにあった本がそこにあったら、読みたくなりますね。そして、そこから、次の本へと興味がつながることもイメージができます。非常におもしろい視点と取り組みです。
調べていく中で、国も書店の減少に対して危機感を持っていることがわかりました。
2024年6月にネット通販や電子書籍の普及などで、全国的に書店が減少していることを受けて、齋藤経済産業大臣が、作家や出版社の関係者らと意見交換し、地域の書店から図書館が仕入れる書籍を増やすなど、活性化に向けて政府として連携を促す考えを示しました。地域の書店には文化拠点の役割があるとして、振興に向けた支援策を検討しています。
直木賞作家で書店の振興に取り組んでいる今村翔吾さんは「日本のコンテンツは本当に幅広く、人気作だけではなく、ニッチな漫画や本もあり、これを下支えをしてきたのが街の書店があったからだ。今年が書店復活の元年になると信じている」と述べていました。
今後、個性的な書店が増えることを期待したいですね。