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「東の海神 西の滄海」(十二国記)を読みました

だ、だから…だから雁には妖獣が出ず、
半獣も人も姿に分け隔てなく馴染んで生活してるんだ〜〜っくう〜〜っ!!!

しかもそれが巡り巡ってあの時中嶋さんと楽俊にも恩恵をもたらしてくれたんだと思うと…

延王よ…

うう小松三郎尚隆…なんて大きい漢なんだ…王になるために生まれてきた男すぎる…ありがとうございます……度量が虚海サイズの方がまた増えてしまった…。

と、何に向けてかわからない感謝をおぼえ、神妙な面持ちになり、勝手に果てしない感慨に耽りだしてしまうのですが。十二国記を読んでて初めて不安なく普通に楽しかったです。
身構えなくてもいい巻もあるんだ〜!そりゃありますよね。
帯に「謀反勃発!」て書いてて「なんやて工藤ォ〜」と思ったんですが表紙が延王延麒だったから安心感すごかったです。延王は500年国を治めますのでね。
雁が冬になるにつれ戴から冷たい風が吹く描写で(戴…)と思いましたけど。

酔狂、無謀、猪突、馬鹿…!延王の周りの臣と六太のどたばたアニメ見たすぎる。いい王の周りにいい臣が集うの大好きなので最高でしたね。
朱衡がにこやかに怒ってるのとか冒頭すごいワクワクしちゃいました。帷湍と二人で話すパート何時間でも見てられそうです。

六太が胎果として蓬莱に流され、そこで父親に連れ出され山に捨てられて…
で、蓬山に迎えられ改めて王という統治者に疑念を抱くものの、
雁の荒廃の度合いも厳しく…自分は麒麟として早く王を選ばねばならない…みたいなの、心情複雑すぎるのに誰とも共有できない悩みで苦しい。
出会ってよかった小松尚隆…

見た目13歳でも内心大人びてる感じじゃないですか延麒は。
やはり王を選定して20年経っているということもあり、泰麒の高里君が持つ悩みとはまた全く違う悩みをめちゃくちゃ抱えている。

基本的に延麒の悩みはどうすれば国の民同士で争わずに済むか、なので謀反が起きてしまったらそりゃどう考えても苦しい気持ちになるよなあ…。

自分の落ち度で捕らえられてしまったこと、亦信が殺されたこと
斡由あつゆの言うことはもっともに思えること。
更夜という友達とこんな再会になってしまったこと、驪媚りびの言っていた小松さんのこと、自害したこと、赤子も死んだこと…

麒麟の六太にとって気を病む要素が多すぎて苦しい…!!

弱る麒麟の描写、誰のやつを見ても心が痛みます。今回も本当、人間のせいですみません…。我々結局毛皮が無いだけの獣ですので…。

その中でもう〜〜ねえ!!気丈に振る舞い続けた延麒がですよ!!
助けに来た小松さんと再会しておんぶしてもらったり!?
最後に!?しがみつくしかできない13歳の少年の素振りができるところ…
OH苦しい〜〜、む、胸が苦しい〜〜

小松さん〜〜!!!!ありがとう〜〜!!!

小松さんの出自についても触れていただけて助かりました。
小さいといえど一度自分の国を失った方なんだ。だからこそ、民がなくては王が成り立たないと繰り返す言葉の重みは真摯で凄みがある。
国がほしいとハッキリ言い切る気概も潔くて格好良すぎる。

そ、そしてどこまでも自分という個が無い人だ…。
自分という存在に対しての捉え方が一般の方と一線を画しすぎている…特に亡くなった自分の子、妻、父に対するコメントには衝撃を受けました。
現代は多様性という言葉のもと、自分の人生どう生きるかの個の時代ですが、昔は寿命も短いし、どう繋いでいくかの時代ですもんね。
いや〜にしてもそこまで我が無いのは特殊な気がするが…この方の個は多分国そのものなんですね。

小松さんが人間の希望を固めて出来た人、みたいな感じなので
逆にどういう性格の方なのかまだしっかりとわからないのですが、
王になるために生まれてきてることだけめちゃめちゃわかる。

そして今回は斡由と更夜、小松さんと六太のペア同士が対立構造だったと思うんですけど斡由めっちゃ悪でよかったですね。好きなタイプの悪でした。

私は「根はいい人だけど色々事情があって歪んじゃった可哀想な悪」がそんなに好きじゃないので、ただ自分の欲を燃料に辣腕をふるい、顔色を変えず悪事に手をだせる斡由のことかなり好きで…。

非なんて認めず自らの手を汚さず…最後に往生際が悪い振る舞いしだしたときは特に最高でした!!絶対に半端なところで降参しないでくれ…!!と思ってました。ありがとう。何に感謝してるんだろう私は。

それでも当時の更夜にとって恩人であることに変わりはないのが…
ねっ、それがもうね、たまらんほどにいいですね!!…?いいのか??

いいんだよ!!

最後に斡由を非難していた周りの人たちなら、あの日の更夜に手を差し伸べたんでしょうか?
いや〜やっぱ斡由しか差し伸べなかったと思うんだよなあ…その損得勘定の速さ、思い切りのよさもまた悪たる所以…たまらん。
更夜はきっとこの後も斡由を恨まないでしょうね…たとえその意図がわかっても、大きいのと一緒に救われてしまったから…。
悲しいけどそれが六太との出会いと、斡由との出会いの間にある大きな差なんだよな…はあ…噛み締めてしまうこの無常感。

それにしても延王こと小松三郎尚隆さん…
それから480年、雁を治める間一体何度の苦難を乗り越えてきたんでしょうか…想像するだけでもなんかもう果てしなさすぎる。

そしてこの世界の強い男は虎に似たデカい獣に乗る…!

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