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「風の万里 黎明の空(下)」(十二国記)を読みました

ウオオオ慶国…!!自らを誰よりも疑い、問い続ける新しい王とその慶州国の臣たち…!
という感じで若者たちの眩しい伸び代や、それを支える周囲の素晴らしい活躍に目を細めていたら終わった。老眼じゃないですよ。中嶋さんの髪色のごとくすごく鮮やかな話だった。めちゃくちゃアツくて面白かったです!!

それぞれの活躍や成長がしっかり書かれているので読んでてスポーツ観戦してるみたいな気持ちになりますね。ついスタンド席で垂れ幕を持って応援してしまう。そしてそのたび(ウオオ!!◯国の誇り!!)みたいな。
ただの蓬莱のオタクなのに、何故かその国の国民みを以て応援してしまいます。

民に半端ない圧政を強いている和州止水郷を治める昇紘しょうこうという郷長、そしてその昇紘を手駒にしている和州侯の呀峰 がほうという二名の巨悪を倒さねば。という本筋があり、
昇紘を止めたい止水の人々と協力することになる大木さん、呀峰を止めたい桓魋かんたいたちと明郭で出会う祥瓊のそれぞれの話があり、
遠甫の里家に出入りする不審な人物を追う中嶋さんの話があり…
それぞれの話が合流していくワクワク感と、その中で垣間見える成長と、迎える大詰めがもう〜〜アッツ!!!!!熱ッ!!!!ッスーーー(息吸う音)ってね。急に語彙無くなっちゃいましたが。それぞれの人の生きる力強さが本当に良い…。

祥瓊が気付いて咀嚼して飲み込む一歩一歩に頷いては、大木さんがいろんな人に素直に投げかけられるようになった質問に微笑み。忙しいよ情緒が。

楽俊と一緒にいる祥瓊が「人に感謝したことなかった」と気付いたところが一番泣きそうでした。よく…よくお気づきに…って!!
人にありがとうと思う心ってめちゃくちゃ尊い。初歩的なことだとしても何より大切だと思うんで…本当によくぞ、よくぞ自力でお気づきになられた…!みたいな、成長を見守って来たじいやみたいな気持ちになった。

そしてここで「頭を下げても本当にそう思ってなかった」みたいなくだりがあるので最後中嶋さんの初勅「礼の簡略化」のとき、ああこの気づきを得た祥瓊はこれをどんな気持ちで、表情でこれを聞いたんだろうとか思ってたまらなかった〜…すごい噛み締めた…また歯が砕けるかと思いました(三日前、砕けた親知らずを抜歯したので)

前回心配してた大木さんと中嶋さんが邂逅するところも、大木さん大丈夫かなって思ってたんですが、私が想像していたよりも遥かに成長してて本当に〜〜〜本当に最高でした。祥瓊と大木さんと中嶋さんがこんなに穏やかに笑う場面が見られるなんて…。なんとなくだけど、今の大木さんを見たら梨耀様も悪態つきつつ笑ってくださるんじゃないかなと思いました。ていうか…

上巻読んでてよかった〜〜〜!!!!(????)

上巻読まずに下巻だけ読むやつ居ないだろ。

噛み締めちゃうわけですよ…あらためて祥瓊が楽俊、大木さんが清秀に出会ってよかったなと。
祥瓊と清秀なら、追われる身の上で自分に利の無い子供を連れて行こうとはならないだろうし、大木さんと楽俊なら旅費に困らない大木さんは楽俊についていく必要なんてないわけだし…
いや〜…そりゃそう書かれた物語だからと言われたらそうですけど…この出会いで本当によかったなあ…ってなるだろこんなん…!!

しかし里家が襲われ蘭玉が死んでしまうくだりはめちゃくちゃ辛かったですね…最後に隠すように抱きしめたのが景王の御璽ぎょじて…王は国民にとっての希望と言う言葉があまりにも重い。
最後の最後まで人や世を恨まなかった蘭玉が背中を両手で足りないほど斬られて死んでるのを見た中嶋さんの気持ちを思うともうなんか言葉にならないですね。
現状の自分は王として全然機能できていないのも踏まえ…中嶋さんが向き合うものがいつもあまりに大きすぎる…高校生ですよ中嶋さんは!?!?
そろそろ学校の割れ散らかした窓も直った頃でしょうか。

ここで思い出すのは変かもしれないんですが、
国民の死ひとつひとつを「国(王)にとっての痛み」として本気で受け止めるに至った小松さんの感情も最初はこういうとこから来たのかもな…と思いました。

そして500年の小松さんの積み重ねを思ってまたああ…てなってしまった。その小松さんの雁でも浮民の経済格差に頭を悩ませてるんだ…小松さん…王ってままならないですね…。

巡り巡って中嶋さんたちがたどり着く真相は冢宰靖共が松塾を率いる遠甫に取り入るのに失敗し、そこから松塾出身者を排除するため麦州侯で最後まで偽王にくだらなかった浩瀚こうかんを罷免に追いやったり
遠甫の里家を襲わせたり、果ては呀峰を助けるため禁軍を勝手に持ち出し和州の叛乱を鎮圧しようとしたという…な、なんだって〜〜〜〜〜!?!?!?!
ぜ、全部繋がった…!!ってなって本当にすごかったですこの辺。

あと呀峰が予王に取り入った方法がもう…予王は本当にただ穏やかに生きたいだけの人だったんだな…と思うとせ、責められねえ〜…となってしまう。そりゃ王になったんだからやることやらなきゃってなるのが普通かもしれませんが、順応出来ない人も居ましょうよ…。人間嫌なことに向き合い続けられるほど強く無いじゃないですか…。そもそも王って選ばれた時点から救いが無さすぎるし。

小さい村でささやかに織り物をしている予王の幸せそうな顔を見てた景麒の気持ちよ…はああ〜〜…そして予王のことももちろん気になるけど私は妹の偽王舒栄のことが気になります。いつか出てくるんでしょうかね!

虎嘯と夕暉の兄弟もすごくよかったなあ…虎嘯の人の良さもまた弟にとって絶対良い影響を与えているし、大木さんに大きな気づきを与えたのも虎嘯だし…。出来た人だ…。あとそう!!最後の!!遠甫老師最高でしたね。

あっ!あなたでしたかぁ…!!!

てなるのがめちゃくちゃ清々しかったです。全然気付きませんでした。まさかの乙悦さんご本人で仙の方…!

はああ〜…慶国に中嶋さんが来てくださってよかった〜〜!!!と言う気持ちと、中嶋さんは本当にこれで良かったのだろうかという気持ちが常時半々あって複雑です。胎果とはいえ…。

いや〜…本当に面白かった…次巻を読むか、読み返すか迷いますね。
まだこの話をしばらく噛み締めていたい気もする…本当にアツかった。
と言いつつ我慢できずに次巻を読んでしまうのですが…。

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