【 #球春到来 】堺シュライクス
自分たちで考える
2月6日のみなと堺グリーンひろば野球場。曇り空の下ではあったが、練習開始時間の9時には選手たちがすでにグラウンドに降り体を動かしていた。
田谷拓央と市村将吾の2人の号令に合わせて選手たちがアップを始めている。
「アップはトレーナーが作ったメニューやけど、練習の内容とかは選手たちが考えて作ってるよ。こうしたほうがいいというアドバイスはするけど、基本的には選手たちが開幕までを逆算して自分たちで日々の練習メニューを考えている」
大西宏明監督がアップの様子を見ながら言った。
「去年は選手の大半が入れ替わったけど、今年は半分ぐらい残っているのかな?それで開始時間までに自発的に練習を始めて動けているのだからいいことなんじゃないかな」
すっかり堺の伝統になりつつある練習姿勢は素晴らしいの一言だ。
もちろん完全に選手任せではなく、気になることは大西監督自ら個別、全体問わず伝えていく。
グラウンド内を行ったり来たりして、選手に話しかけながら様子をしっかり見ていた。
急遽の変更にも
練習が始まり1時間もすると、最初は白い息交じりだったがだんだん暖かくなってきた。
「せっかくやしシートノックにしようか。外野手は投げられるだけでいいから」
こういう時、いきなり実戦練習が入るとうろたえたり、舞い上がってしまうのが常だが、「待ってました」とばかりの動きを選手たちは見せた。
捕手、内野外野からも声がしっかり出ており、空気は試合前のシートノックのようだった。
「多分こうなる、という布陣は頭の中に見えてきたけれど、実戦に入ったりオープン戦になったらまた打ち出す選手とかもいるだろうから、これからかな」
生き残るために
昨年は昨年で癖の強いメンバーがそろっていたが、今年も負けず劣らずだ。
18歳の久保雄亮は練習メニューを勘違いして待ちぼうけをしているかと思えば、打撃練習になると左打席からライト方向に強い打球を放った。
他にも昨年途中から加入し、指名打者部門でベストナインを獲得した松本凌弥選手が柵越えを連発するなど、打撃陣はかなりハイレベルな様相を見せていた。
そんな中、危機感を覚えていた選手が2人。昨年も在籍した本城円選手と小田原将之選手だ。
本城は昨年は投手だったが6試合の登板にとどまった。
「このチームで野球がしたかったので、野手でなら残れるということで、ぜひお願いしますと言って野手になりました」
元々大学生時代などは野手。高校時代も背番号7を着けていた。
「試合期間が空いてコロナで人数が減ったときに、『本城と村上(海斗)野手で行くぞ』って言われてました」
結局本城の野手としての出場はなかったが、そのあとも紅白戦でホームランを打つなど、野手としての可能性の片鱗は見せていた。
「やるからにはとんでもない成績を残さないと転向する意味がないので」と本城。目標をBCL福島時代のチームメイトで、2017年に田中耀飛※が記録した15本塁打とした。
※2014年から兵庫に入団。2017年に打率.422、15本塁打を記録し二冠、MVPを獲得。ドラフトで東北楽天ゴールデンイーグルスに指名された
「やるからには近づきたいですね。(出場)32試合で15本ですか?やっぱりすごいですね……」と言いつつ自信も見せた。
「打つほうも守備も自信があるので、まず試合に出たいですね。1イニングもベンチにいたくない、そんなつもりでやっていきたいです」
本城選手のインタビューはTwitterにも掲載しています
また小田原は同じポジションに本城、久保、脇屋紀之が入ってきた。
「みんな打つしみんな個性あるんで、何とか生き残らないと……どんな形でもいいので試合に出たいですね。(去年主に出場した)レフトじゃなくてもいいので埋もれないようにしないと……」
試合に出るために必死になって練習をする。それが今の堺の姿だ。
シーズンに向けて
球団創設後5年目のシーズンを迎える堺。現在3連覇中だが、それ以上にNPBへの人材輩出に意欲を見せている。
「この二人は注目してほしい」と森田樂と松本龍之介の名前を挙げた。
「去年は点差があれば試合に出そうかと思った選手がいたけれど、今年はそんなこともない。全員が最初から出せる戦力」と大西監督。
今の時期の競争と実戦を経て、開幕後、そして秋に堺がどうなっているか楽しみな時間だった。
練習風景
(文・写真 SAZZY 2月6日 みなと堺グリーンひろば野球場)