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蓼食う虫も好き好き タデはピリピリ

 近くに来たので、昔歩いた川縁を歩くと、タデ(蓼)があった。
 タデ食う虫も好き好きのタデだ。

タデ

 タデの葉をかじると、ヒリヒリする刺激が、舌の上だけでなく、身体全体に走る。その刺激は中毒性を持っている。すぐにまた、かじりたくなる。タデをかじっている自分は異常なのかなあ。

 サンショ(山椒)の実も好きだ。青いサンショの実をかじる。強烈な刺激が舌を刺す。これまた全身がヒリヒリする。
 仕事の文章を読み続けて頭がいっぱいになったとき、サンショの実をかじると、刺激で頭がスッキリする。

 神戸でも、山を歩けば山椒の木がたくさんある。川を歩けばタデがある。
タデは、イヌタデがいたるところに生えているが、これは辛くない。花壇に植えてあるオオケタデなども辛くない。辛いのはヤナギタデ(柳蓼)、ホンタデ(本蓼)ともいう。

 刺身のつまとして少しピリピリする赤い小さな芽がついていることがあるが、あれがヤナギタデ。育てれば、柳の葉っぱのような葉ができる。赤い芽は、ヤナギタデの変種で、葉っぱが赤いのでベニタデ(紅蓼)という名でも呼ばれる。
 刺身のつまのベニタデも家庭で栽培したい。
 モヤシは栽培して、大豆の苗にしたことがある。モヤシは暗い場所で育てられたので、根のついたモヤシを土に植え、急に明るい場所に置くと、すぐに枯れてしまう。少し暗い場所に置いて、徐々に太陽の光に慣れさせなければならない。そこでベニタデの栽培だ。と思いながら、刺身についていたら、ついつい食べてしまう。刺身だけではなにか口が寂しいので、刺激のあるベニタデを食べる。で、栽培用の芽はいつも残らない。

 私は神戸の山の方に住んでいるので、山椒の木はたくさんあるが、ヤナギタデはない。あるのはイヌタデばかり。ヤナギタデの生えている川の方へ行くことも、最近はすっかりなくなった。


 田舎に帰ったとき、友人の新築の家の庭にヤナギタデが生えていた。茎を四方八方にいっぱい伸ばし、大きな草のかたまりになっている。そんなかたまりが数カ所あった。植えているものではなく、ただの雑草だ。「わっ、これタデやん」と教えたので、草刈りはしていないと思う。そんな思い出も数年前のこと。また訪ねようと思っていたらコロナ禍のため旅行はできない。早く行きたいけど、まだ行けていない。

 川縁を歩いていたらヤナギタデがあった。かじったらヒリヒリと刺激があった。

 ふとしたきっかけで思い出に触れる。
 川を歩いた思い出に、田舎の家の思い出に。

 思い出を振り返り、思い出を確かめることによって、はじめて次へ進めそうに思える。


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