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お母さん食堂とメディアリテラシー

 ファミマの「お母さん食堂」が、食事を作るのは女性だと限定しているので、名前を変えて欲しいと女子高生が運動をした。嫁、家内、奥さんが全て「家」に付随しているのと同じように、お母さんという言葉が家事に結びついて「お母さん食堂」になっているというのだ。
 私は、母なる大地や母なる海が生命の根源なのと同じように、「母」は一人一人の人間の故郷であり、故郷の食事ということで「お母さん食堂」はいいネーミングだと思うのだが……。高校生も「お母さん」を使うなというのではなく、問題提起として署名活動をした。それに便乗した「大人」が問題を大きくしたようだ。
 ネットニュースを見ると、賛否の意見が対立しているが、高校生の書いた文章を直接見ると、なにかニュースの記事に感じる「あおり」とは雰囲気が違う。

 昔、インスタントラーメンのコマーシャルで、「私作る人」「僕食べる人」というのが問題になったことがある。作る人を女性が、食べる人を男性がやっていたのが差別だというのだ。そういう意見が出た。
 男女問題に対して、いろんな人が意見を言っていたのを覚えている。そしてコマーシャルは消えていった。
 女性が「私」を使って、男性が「僕」を使うという固定概念が男女の役割を決めている。ここでは、女性が家事をして、男性はそれを食べるだけという役割分担が男女差別につながるという。
 「お母さん食堂」も、お母さんが食事を作るという役割分担の固定化を問題にしているのだ。今は「主夫」として家事をする男性もいるし、そうでなくとも、それぞれの家庭で男女の役割分担はできているだろう。

 役割分担から逃げ出し、家庭も夫も子どもも捨てて逃げ出し、最期には仏に仕えるようになった瀬戸内寂聴さんは、少し古い記事(2017.3.5朝日新聞デジタル)でこう言っている。

男にはできない、女のよさがあると思いますよ。そこにお茶があって、人がいたら、入れてあげたらいいと私は思うんですよ。女だから入れさせられる、なんて血相を変えることはないと思う。もっとこう、堂々としてたらいいんじゃないかしら。女とか男とかにこだわらないほうがいいんじゃないかしらね。

 この記事のタイトルが「女が男を意識しすぎてるんじゃない? 瀬戸内寂聴さん」となっている。いろんなことを言っている人の、どの言葉を中心に持っていくかは記事のライターのさじ加減一つだ。

 「お母さん食堂」についても、署名を紹介する記事のタイトルによって読み手が受ける印象が違ってくる。記事を読み比べてみるとよい。
 記事に対してコメントを書いている人がいる。高校生の発言を直接見ないで意見を述べている人が多い。伝言ゲームと一緒で、最初の意図とは違って意見が書かれることも多い。「一次資料を見よ」ということだ。

 ネットニュースと言えば、吉本興業を退所した、炎上大王、西野亮廣さんに対する記事も偏見に満ちたものが多い。最近は、SNSやYouTubeからニュースになっている。いわゆる「こたつ記事」だ。取材に足を使わず、こたつの中でネットを見ながら書いた記事だ。その記事も、原本を詳細に見るのではなく、飛ばし読み、見をして書いたものもある。じっくり見ていても、最初から「こう書きたい」というライターの思いがあり、自分の意見に合致した内容だけを記事にする。そんなことが多い。
 西野さんに関しては、「東野幸治が批判している、恐ろしがっている」という趣旨で書かれているものがある。実は私は、東野さんのYouTube、「幻ラジオ」を欠かさず聞いているヘビーリスナー、「幻民」なのだ。東野さんが西野さんに話を聞いているものも見ているので、YouTubeを見た後でネットニュースを見ると、違和感しかない。東野さんは、自身がYouTubeを始めるときに、西野さんからアドバイスをもらっていると言っていた。信頼していることがわかる。けれど、「東野は西野を批判している」という趣旨の記事を書きたいライターは、この部分は当然のごとく使わない。まちがったことは書いていなくても、自分の意見に必要な発言だけを書くのだ。実際に元記事を見るのが大切だ。

東野:なんかあったら俺、いつも西野に相談してたし。これ、「幻ラジオ」も(始めることを)相談してたし……。  (幻ラジオ第105回、20:47)
※「幻ラジオ」は3月いっぱいで終了することを107回で報告!



 お母さん食堂は目標の数の署名が集まらなかった。世の中はなかなか変わらないが、前述の瀬戸内さんの言葉(朝日新聞デジタル)には、こんなこともある。

私の若い頃は結婚しないで子どもを産むなんて考えられなかった。離婚した女は傷物と呼ばれた。今は離婚なんて女の勲章など言われている。平気じゃないですか。世の中は変わるのね。



メディアリテラシー 【media literacy】とは、情報を伝達する媒体(メディア)を使いこなす基礎的な素養のこと。メディアを通じて情報を取得・収集し、取捨選択および評価・判断する能力や、自らの持つ情報をメディアを通して適切に発信できる能力を指す。(IT用語辞典


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