年間1300万本突破!トイレマジックリン泡タイプの成功理由 (#テーマ別研究演習)
1.はじめに
私たちのグループは、トイレ掃除用品として大ヒットした「トイレマジックリン泡パック」について調査した。この商品は年間1300万本も出荷されており、家庭内で使用する消耗品として非常に身近な存在である。トイレマジックリン泡パックは、清掃の手間を大幅に軽減し、誰でも簡単に使える点が特徴である。特に、忙しい現代の家庭において、手軽さと高い清掃効果を両立させたこの製品は、多くの消費者に支持されている。私たちは、この製品の成功要因を探るため、STP分析、4P分析、5C分析を用いて消費者志向のマーケティングについて学ぶことを目的とした。これにより、企業がどのようにして製品を差別化し、消費者にアピールしているのかを明らかにする。
2.トイレマジックリン泡タイプの分析
2-1 STP分析
まず初めに、商品について理解するためにSTP分析を行う。
STP分析とは、市場を細分化し、ターゲットを定め、他社との差別化を行うというマーケティングにおける代表的なフレームワークである。
・(Segmentation)については、主に家庭向け製品として販売している。その中でもこの商はは清潔感を重視し、掃除に手間をかけたくないという心理を持つ人々に焦点を当てており、簡便で効果的に掃除を行えるという特性がある。
・(Targeting)では、家庭で日常的に掃除を行う30~50代の主婦・主夫を中心に、忙しい生活を送る若い世代の単身者もターゲット層に含める。
また、子どもがいる家庭を重要視し、手軽にかつ安全で高性能な商品を求めている層をターゲットにしている。
・(Positioning)として、「手間をかけず、誰でも(子どもでも)安全にトイレ掃除ができる」というテーマを掲げている。また、嫌なニオイを抑え、爽やかな香りを提供することで快適さを向上。また、日常的なトイレ掃除を効率化し、時間を節約できる。同様の製品に比べて、洗浄力が高い点が挙げられる。(図1)
2-2 4P分析
次にマーケティング・ミックス(4P)の分析を行う。
4P分析とは、「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」について分析を行い、戦略を構築するためのフレームワークの一つである。
1.Product
初めにProductについて述べる。製品戦略の一つとして、泡タイプで手軽にトイレ全体を清掃できる点が挙げられる。この製品は、除菌効果があり、トイレの清潔感を維持できるうえ、爽やかな香り(サボン,フローラル)で嫌なニオイを軽減する。また、ブラシを使わずに汚れを落とせる便利さが特徴であり、忙しい家庭や手軽さを重視する顧客層に支持されている。さらに、視覚的に清潔感や信頼感を与えるパッケージデザインを採用しており、持ちやすいスプレーボトルの形状も、使いやすさを重視した工夫だ。この製品は、効率的で快適なトイレ掃除を可能にすることで、清掃の負担を軽減し、子供も安全に使用できる。よって、顧客にとって価値の高い選択肢となっている。これらの特徴により、初めて使用する顧客にも安心感を与え、継続的な利用を促す効果が期待される。
2. Price (価格)
次に、Priceについて述べる。価格戦略の一つとして、この製品は一般家庭向けのリーズナブルな価格設定が特徴だ。他社のトイレ掃除用品と比較しても競争力のある価格を実現しており、顧客にとって手軽に手に取りやすい選択肢となっている。また、この製品は「手軽さ」や「高い清掃効果」を提供することで、価格以上の付加価値を生み出している。泡タイプで除菌や消臭を一度に行える利便性は、忙しい現代の家庭にとって重要な要素である。その結果、コストパフォーマンスが高い製品として消費者に認識される。これにより、顧客は「高品質を低価格で得られる」という満足感を感じ、繰り返し購入する可能性が高まるだろう。
3. Place
次に、Placeについて述べる。この製品は、スーパーやドラッグストア、ホームセンターなどの日常的に利用される小売店に加え、Amazonや楽天市場などで販売されている。これにより、顧客は実店舗でもオンラインでも簡単に製品を購入できる利便性がある。流通戦略としては、日常の買い物で目に入りやすい掃除用品コーナーの目線の高さに陳列されることが重要視されており、顧客の注目を集めやすい位置に配置されている。また、実際に店頭では、目立つポップやディスプレイが活用されており、視覚的なアプローチで商品の特長を効果的に訴求する工夫が施されている。(図2)
これらの戦略により、幅広い販売チャネルを通じて顧客に製品が届けられる仕組みが整えられている。
4.Promotion
トイレマジックリン泡パックのプロモーションは、トイレ掃除を任されがちな主婦層や、一人暮らしで掃除を煩わしく感じる人々を主なターゲットとしている。この製品の特徴である「簡単さ」と「時短」を伝えるため、テレビCMでは、家事に追われている主夫が泡パックを活用して楽に掃除を完了させる様子が描かれている。また、泡の特性や清掃効果を訴求する内容を取り入れ、清潔感や利便性を強調している。一方、WEBCMでは過去製品との泡の付着力を比較し、製品の優位性を視覚的に示している。さらに、専用サイトでは清潔感を意識したデザインを採用し、商品の魅力や利便性をわかりやすく伝える工夫が施されている。これら多面的なプロモーション活動により、ターゲット層への訴求力を高め、購買意欲を効果的に喚起している。
2-3 5C分析
次に5C分析を行う。
5C分析とは、「Company(自社)」、「Consumer(消費者)」、「 Customer (流通などの中間顧客の理解) 」、「 Competitor(競合)」、「 Community(コミュニティ)」について分析を行い、KFS(重要成功要因、ビジネスを成功に導く要因)、を明らかにする。
1.Company(自社)
まず初めに、Company(自社)について分析していく。
Kaoは企業理念として「花王ウェイ」を掲げている。「花王ウェイ」とは、「正道を歩む」、「よきモノづくり」、「絶えざる革新」を基本となる価値観とし敬意、公平、共感、高い志を持ち、ニーズに応え、独自性の追求し、飽くなき探求心を持つことを示している。これらの特徴が花王という会社にはあり、理念によって、花王は消費者の持つ不満を改善することに力を使っているため、この商品の開発に至ったと考えられる。
2.Consumer(消費者)
Consumer(消費者)について分析していく。
主に家庭のトイレ掃除を担当する主婦や主夫、清掃業者などをターゲットとしている。手軽にトイレを清潔に保ちたいと考える人々に向けた製品。
3.Customer (流通などの中間顧客の理解)
Customer (流通などの中間顧客の理解)について分析していく。
ドラッグストアやアマゾンなどのネット販売などが挙げられる。ドラッグストアでは、商品棚の中でも目につきやすい位置に商品がおかれていた。また、テレビで紹介されたポップが貼られており、売れ筋商品であった。
4.Competitor(競合)
Competitor(競合)について分析していく。
Competitor(競合)としては、トイレ用洗剤を販売している他のメーカー(例:ライオン、P&Gなど)があげられる。これらのブランドの特徴として挙げられるのは、トイレ掃除を楽にする(スクラビングバブル)などである。では、これらの商品と本商品の差別化点としてはトイレ掃除を楽にするだけでなく汚れをしっかり落とし誰でも安全に扱える点があげられる。
5.Community(コミュニティ)
最後にCommunity(コミュニティ)について分析していく。
Community(コミュニティ)の中でも社会的なものとして挙げられるのが、共働き世帯の増加である。これによって家事にかけられる労力が少なくなったため手軽さへの需要が高まった。その結果、トイレ掃除を楽にし、誰でも安全に扱えるという商品の特徴がヒットにつながったと考えられる。また、女性だけでなく男性も家事をするという価値観やタイパを重要視する若者の増加などもヒットの要因になっていると考えられる。
2-4 WHO, WHAT
次に、「Who(誰に)」、「What(何を)」について分析を行う。
「Who(誰に)」、「What(何を)」分析をすることで、ターゲットが求めること「What」を理解し、それを満たすことで価値提供が実現する。
1.Who(誰に)
トイレ掃除の時短を求める人々には、掃除が面倒で後回しになりがちな層が多く存在する。特に、トイレブラシを使って何度もこする作業に抵抗を感じる人や、在宅時間の増加に伴い掃除の手間を減らしたいと考える家庭では、掃除の負担軽減が重要な課題となっている。このような状況に対応する製品として、トイレマジックリンこすらずスッキリ泡パックは、泡を使用して短時間で簡単に掃除を完了できる点が高く評価されている。さらに、香りの良さが掃除に対する抵抗感を軽減し、子供でも扱いやすい安全性や手軽さも特徴である。よってトイレマジックリンこすらずスッキリ泡パックは主婦や子供、忙しい人に向けた商品である。
2.What(何を)
本研究では、Whatに関する分析を行った。Whatとは、競合他社のブランドと比較した際に、自社ブランドが有する優位性を示す概念である。自社製品は、他社製品が汚れを落とす際にブラシでこする作業が必要であるのに対し、泡を吹きかけて流すだけで清掃が完了するという簡便性を有しており、誰でも気軽に使用できる。また、大掃除の際には、泡を吹きかけた後の5分間を他の作業に充てることが可能で、効率的な時間活用が実現する。
さらに、競合製品であるScrubbing Bubblesやバブルーンは高い除菌力を持つが、塩素系成分を含むため使用時に安全上の注意が必要であり、特に子どもが使用する際には危険が伴う。一方、自社製品は安全性に配慮した成分を使用しているため、幅広い層が安心して使用できる。また、新技術である「吸着泡トリガー」により、泡の量が増加するとともに、清掃後に表面をコーティングする効果を実現した。この技術により、汚れを落とすだけでなく、約1か月間黒ずみや黄ばみの予防が可能となり、競合他社製品が一時的な清掃効果にとどまるのに対して、長期的な衛生維持が可能である。
3 まとめ
トイレマジックリン泡タイプは、他者との製品と比べて、子供がいる家庭を重要視し、手軽にかつ安全で高性能な商品である。また、嫌なニオイを抑え、爽やかな香りを提供することで快適さを向上。日常的なトイレ掃除を効率化し、時間を節約できる。その他の特徴として、同様の製品に比べ洗浄力が高い点や泡タイプで手軽にトイレ全体を清掃できる点、除菌効果があり、トイレの清潔感を維持できるうえ、爽やかな香り(サボン,フローラル)で嫌なニオイを軽減することができる点などが挙げられる。
この製品は、除菌効果があり、トイレの清潔感を維持できるうえ、爽やかな香り(サボン,フローラル)で嫌なニオイを軽減する。トイレマジックリン泡パックは、これらの特徴を武器に他社製品との差別化を図ることで市場での利益を伸ばしたと考察できる。特に、家庭の主婦(夫)だけでなく、子供でも簡単に使える点が、掃除の負担を軽減し、幅広い層に受け入れられる要因となったと考えられる。
STP分析の結果、清潔感を重視し、掃除に手間をかけたくない消費者をターゲットに設定していることが分かった。その中でも、誰でも(子どもでも)安全にトイレ掃除ができる」という点が大きな特徴であると考えられる。
4P分析の結果、忙しい家庭や手軽さを重視する顧客層をターゲットに製品の扱いやすさ、値段の安さ、それを伝えるために、プロモーションにおいて家庭向けのCM制作を行うなどの意図が見られた。
5C分析の結果、消費者の持つ不満を改善する会社の方針に従い、他社との差別化を図ったと考察される。その結果、共働き世帯の増加などに着目することによって誰でも簡単に扱うことができ、汚れをしっかり落とせる特徴を持つ製品を開発するに至った。
これらの分析を通じて、トイレマジックリン泡パックが市場でどのように差別化を図り、消費者に支持される商品となったのかが明らかにした。特に、子供でも安全に使える点が、売上アップに繋がった要因として注目される。これにより、掃除をする層が増え、年間1300万本というヒット商品となったと考えられる。消費者のニーズに応えることで、トイレマジックリン泡パックは市場での競争力を高め、持続的な成長を実現していることが示された。さらに、家庭内での清掃負担を軽減し、快適な生活環境を提供することで、消費者の満足度を高めることができた結果さらに売り上げを伸ばすことができたと考えられる。
参考文献:
Scrubbing Bubbles
https://cf.shopee.ph/file/9fc81577c6025be843ce16cdaa27d391
バブルーン
https://cdn.askul.co.jp/img/product/3L1/AW38021_3L1.jpg