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大学サッカーの魅力について
本稿では、大学サッカーの魅力を他の年代サッカーとの特徴を比較して書いていく。はじめに、「身体的特徴」「自由」「マネジメント」「学び」の4つについて各年代を比較しながら、大学サッカーならではの特徴を書いていきたい。
少年(小学)サッカー、中学サッカー、高校サッカー、大学サッカーと分ける事にする。ここでは、西 政治(2008)「日本サッカーにおける育成時期一貫指導の重要性と課題」を元に考察していく。
1章 身体的特徴
『少年サッカー』の身体的特徴について
5〜8歳頃は、図①でも分かる通り神経系が著しく発達する時期である。すなわち、脳をはじめとして体内に様々な神経回路が、複雑に張りめぐらされていく大切な時期である。9〜12歳頃になると、神経系の発達がほぼ完成に近づき、形態的にもやや安定した時期に入る。神経系が著しく発達して、①身長発育速度曲線より身長が緩やかに伸びる成長の時期であるといえる。
『中学サッカー』の身体的特徴について
①身長発育速度曲線より、個人差はあるが約12歳〜16歳の間の中で急激に発育速度が高いことが分かる。
骨格の急激な成長は、支点・力点・作用点に狂いを生じさせる為、新たな技術を習得するのには不利な「クラムジー」と呼ばれる時期となり、今までに出来ていたスキルが一時的に出来なくなることがある。
②スキャモンの発育発達曲線からも理解できるように、生殖器型すなわち、ホルモンの分泌が著しくなる時期である。特に、男性ホルモンの分泌が速筋速度の発達を促し、それまでに身に付けたスキルを、より速く、より強く発揮する事を可能とさせてくれる時期でもある。
身体的成長には個人差があることが分かる。身体的成長が遅い事により、筋力など身体能力で劣等感を感じ、また「クラムジー」により、プレーに対して苦戦する事も多い。優秀だった選手がスランプに陥り、あまり目立たなかった選手が、急にチームの中心的存在となることがある。
『高校サッカー』の身体的特徴について
生殖器の発達が著しく、ホルモンによる骨格筋の発達が著しい時期である。体格的にも大人と変わらず、身体的成長もほぼ完成された状態である。
ほぼ完成された状態であることから、自分の身体の特徴を受け入れ始める時期であるといえる。
『大学サッカー』の身体的特徴について
②身長発育速度曲線からもわかる通り、身長の成長は18歳頃までに終える。また、③スキャモンの発育発達曲線からも理解できるように、神経系や生殖器などの成長に関しても18歳頃までに終える。つまり、大学サッカーは、身体的特徴が完成した状態であることが分かる。
少年サッカーのように神経系の成長は著しい訳でもなく、中学サッカーのようにクラムジーで悩むこともなく、高校サッカーのように成長段階である訳でもない。その為、大学サッカーは身体的成長に惑わされることなく、自分の身体的特徴を理解し、筋肉トレーニングや練習など努力次第で大きく飛躍できる可能性がある時期で有るといえる。身体的成長に左右されず、自分次第で大きく成長できるというのが、ここでの大学サッカーの魅力である。
2章 心理的特徴と自由
ここからは、西 政治(2008)「日本サッカーにおける育成時期一貫指導の重要性と課題」と「自由論:学生から考えるバーリンとカント」「高校・大学サッカー選手の心理的成熟」を元に書いていく。
先に少年・中学・高校・大学サッカーについての心理的特徴をまとめ、その後に中高生と大学生までの自由について述べていく。
ここでは、大学生は精神的にも自立し、心理成熟度が高く、自ら考えて行動出来るということで、サッカーが大きく成長出来るということを述べたい。
『少年サッカー』の心理的特徴について
西 政治によると、実際に目に見える形で達成できているかどうかによって、自己の有能生を認知し、両親やコーチの言うことに基づいて有能性を判断する。また、有能性の判断に対する親の影響が減少していく一方で、仲間やコーチの影響が増大していく。
論理的な思考ではなく、自分自身の動きや感覚により物事を考える時期で、自分の視点を変えたり、他人の立場に立ったりすることができにくい年代である。また、ひとつの物事への集中が長く続かず、絶えず行動が変わるため、長時間にわたる連続的なトレーニングは困難である。
自分の意思で決断して、論理的に考え、チームワークや集中力が大切であるサッカーにとっては、少年サッカーは心理的に難しい時期であることが分かる。
『中学サッカー』の心理的特徴について
身体が変化していく過程で、自己の内面を見つめることが出来るようになる。「自我の発見」と言われ、自我に気づく事により、理想とする自分と現実のギャップに悩み苦しむ事になる。
また、親からの依存を脱却しようと反抗する時期(反抗期)であり、感情の起伏が激しくなるのもこの時期の特徴である。身体的には大人と変わらなくなっているが、精神的には子どもと大人の中間に位置し非常に難しい時期でもある。進路の発達課題は多く、それを達成していく為にはまだまだ大人の援助が必要である。心理的にサッカーに集中できない時期であることが分かる。
『高校サッカー』の心理的特徴について
高校生にもなると物事を理性的に分析し、自分を意識的に調節出来るようになる。
現実の自分を見つめ将来を展望できるようになる。しかし、大人の支えはまだ必要である。また、心理成熟度においては、大学生よりも劣っている。
『大学サッカー』の心理的特徴について
大学生は、高校生に比べると心理成熟度が高い。サッカーというスポーツを長い年月経験している大学生は高校生より、多くの困難に直面し、自分を見つめ直し、自己理解をし、困難について乗り越えてきたと考えられる。また、大学生は高校生に比べて自分のプレーヤーとしての将来性や現時点での自分のプレーを把握でき明確な目的を持っていると考えられる。大学生は心理成熟度が高い為、サッカーでも大きく成長出来るといえる。
ここからは、中学生〜大学生までの自由について述べていく。自由論によると、大学は中高時代と比べると拘束・強制されることが少ない。中高生なら無断で一週間学校を休めばかなり問題になろうが、大学では必ずしもそうではなく、その状態を気づかれない可能性も高い。このような意味で、大学では消極的自由の度合いが高い。つまり学生時代は中高までと比べると、「学校からの自由」という側面が強く、他方で「何をしたら良いのか」と悩むのである。積極的自由は、自らが望むことをやれる状態が確保され、かつその実現を目指す状態を意味する。消極的自由が過分に与えられる状況下で、積極的自由をいかに実現していくのかが、学生生活の課題ということになる。上記の学生生活の課題こそが大学サッカーの魅力である。この事について説明する。
「消極的自由が過分に与えられる状況下で、積極的自由をいかに実現していくのか」を議題にする。中高生は、拘束・強制をされることが多い。積極的自由を、サッカーに置き換える。「サッカーをやれる状態が確保され、かつ全国大会出場を目指すといった状態」と置き換える。その環境があるのが中・高サッカーである。「中高生なら無断で一週間学校を休めばかなり問題になろうが、大学では必ずしもそうではなく、その状態を気づかれない可能性も高い。」このことから、中高生は、いわば監視の中でサッカーをしているのだ。
しかし、大学生は監視されない。消極的自由の中で、自らサッカーを選び、目標を見つけ努力して積極的自由に挑んでいるのだ。「消極的自由が過分に与えられる状況下で、積極的自由をいかに実現していくのか」という学生生活の課題を解決しているのが、大学サッカーなのである。
監視の中で行動するのではなく、自分の意思で考えて、主体的に行動して、目標達成に向けて努力する姿勢こそが、大学サッカーの魅力である。
3章 マネジメント
ここでは、小学生〜高校生のマネジメントについて書き、大学生は自らマネジメントを行っていると言う点を述べ、実際にマネジメントを行うことでどのような良い点があるかを記す。
小学生〜高校生は、運営など監督やコーチが行う。心理的特徴でも述べたように、小学生は大人の言うことに基づいて判断したり、中学生は反抗期があったり、高校生は物事を理性的に判断できるようになるものの、大人の支えが必要であるということが分かる。
一方、大学生は、心理成熟度が高校生よりも高く、マネジメントは学生自身で行う。その大学生の特徴であるマネジメントが、どんな働きを生むのかを「大学生のクラブ・サークル活動への取り組みがキャリアレジリエンスに与える影響」を基に書いていく。
「大学生のクラブ・サークル活動への取り組みがキャリアレジリエンスに与える影響」によると、クラブ・サークル活動は学生のみで構成されており,運営を任される場合が多い。「積極的な関与」「メンバーとの深いコミュニケーション」「目標達成に向けた取り組み」「内省」がキャリアレジリエンスに正の影響を与えていることが確認された。クラブ・サークル活動を通じた大学生のキャリアレジリエンスの獲得において,1ただ活動に参加するのでなく,役割意識を持ちながら活動に参加すること,2メンバーと積極的に深く話し合うこと,3技術の向上に向け,目的に意識を持ちながら計画的に取り組むこと,4自分たちの活動や自分自身について振り返る機会を設けることが重要だと示唆された。
以上の点に置いて、大学サッカーの他の年代と違う点は、運営を学生が行うことが多いという点と学生と社会人の中間という立場である大学生が、キャリアレジエンスを獲得できるという点である。大学サッカーには、キャリアレジエンス獲得に必要なことを行える機会がある。自ら運営をしてクラブ活動を行う事によってキャリアレジエンスを獲得できるという点に置いて魅力的であるといえる。また、大学サッカーにおいて学生自身がマネジメントを行う事により、今までやってもらっていたことがどんなに大変だったと実感することができると考える。人は実際にやってみて大変さを知ることで初めて感謝でき、その感謝を抱きながらサッカーすることが出来ると思われる。それが、大学サッカーの良さであり、魅力ではないかと考える。
各年代の身体的特徴と心理的特徴、マネジメントについてのグラフにまとめる。
4章 まとめ
この章では、各年代のまとめをしてから比較をし、大学サッカーが魅力的であることを述べる。
小学生から高校生は、身体的・心理的においては成長段階で伸び悩むことがある。また、自由・マネジメントにおいては、大人の支えや監視が必要である。大学生は、身体的には、少年サッカーのように神経系の成長は著しい訳でもなく、中学サッカーのようにクラムジーで悩むこともなく、高校サッカーのように成長段階である訳でもない。
その為、大学サッカーは身体的成長に惑わされることもなく、心理的には、大学生は心理成熟度が高い。自由であり、主体的に行動することが出来る。マネジメントでは、自ら運営をして感謝の心を持ちながらサッカーができ、社会の擬似体験が出来る。「サッカーは人生の縮図」という言葉がある。これは元日本代表イビチャ・オシムの言葉である。
自分が強いなら、弱い者を助ける。仲間に思いやりの言葉をかけて、しんどくても組織のために行動する。必要な物の準備をしておく。これらのことは、まさに人生の縮図ではないだろうか。人生の縮図を経験できる大学サッカーは、魅力的であるといえる。
参考文献
https://kyotogakuen.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1032&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1
西 政治(2008)「日本サッカーにおける育成時期一貫指導の重要性と課題」
https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=18514&file_id=18&file_no=1自由論:学生から考えるバーリンとカント
https://www.jstage.jst.go.jp/pub/pdfpreview/jspeconf/54/0_54_247.jpg
高校・大学サッカー選手の心理的成熟
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_86.14204/_pdf/-char/ja
キャリアレジリエンスの構成概念の検討と測定尺度の開発
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