好きな本屋が復活していた件について、1
天王寺のHOOPに、かつてスタンダードブックストアというお店がありました。
そのお店はしばらくすると無くなってしまいました。
そして今、私はまた、スタンダードブックストアにいます。
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私が中学生だった頃の話。
小説が好きでした。
子供の頃から父親の本棚にある本を漁り、若草物語とあしながおじさんを擦り切れるほど読みました。
中学に入学した時は、学校の大きな図書室に入り浸り、有川浩とか小川糸とか、梨木香歩とか色々読んでいました。ちょっと背伸びして永遠の0とかを読もうとして諦めたこともあります。
こんな感じで本は好きだったのですが、実を言うと本屋さんはそこまで好きではありませんでした。
理由は面白くないから。
作者ごとに並べられた背表紙達は、フォントも色も全部一緒。なんだか面白そうではありません。
たまに表紙が見せられていたり、ポップが付いているものは楽しそうですが、ほとんど一辺倒に置かれています。
かといってカラフルなハードカバーを何冊も買う財力も当時ありません。借りるとしても毎日持ち帰ったら幅を取ってしまいます。
私は次第に本から遠ざかるようになっていきました。
ある日。
私の庭である天王寺をぐるぐる歩いていると、HOOPの最上階、タワレコの横になんだか大きな本屋さんがあることに気付きました。
それが、私の運命の出会いです。
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スタンダードブックストアのキャッチコピー(的なやつ)は、
「本屋ですが、ベストセラーは置いていません。」
です。
惹かれる以外の何物でもありません。
私はひねくれ者ですので、このキャッチコピーを見てひと目でこの本屋が大好きになりました。
そして中に入ると、なんと楽しそうな本たちであふれていたのです!
円周率ばかり書いてある本や、星の名前の辞典、芸能人のエッセイ本。遠い国の旅行記に、ニッチなジャンルの雑誌、鮮やかな写真集…
それらが独特のジャンル分けをされて見たことの無い配置で置かれています。
私は、初めて本屋で、本が活き活きしているように感じました。
そして、私もとても活き活き、ウキウキしたことを覚えています。
あれは何時間くらいいたのでしょうか、今ではもう覚えていませんが、学校の重いカバンを背負いながら、時間も忘れて夢中になって、本とにらめっこしていました。
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あれからどれほどあの本屋に通ったでしょう。
(lemonみたいやなと思った方は私と同じ感性をお持ちです)
友達とあーだこーだ言いながら本棚を眺めたり、
初めてできた恋人と好きな本について語り合ったり、
1人で本に囲まれたり、
色んな時間を過ごしました。
そして、いつの間にかスタンダードブックストアは無くなっていました。
大学生になってから気付きました。
高校生の終わりくらいから普通の本屋によく行くようになり、あまり赴いていなかったのです。
多分すぐに後継の本屋さんができたのですが、それも無くなって今はもう何になっているかよく知りません。
気づいた時にはTHEもぬけの殻でした。
私に本屋の楽しさを教えてくれ、新しい世界に出会わせてくれたあの場所は、もうありません。
あの場にいる人は、きっとみんな本が好きでした。
店員さんも、お客さんも。
本好きが集まる、本好きのためにある、不思議な仲間意識が芽生えたりする、思わずにやにやしてしまう、そんな空間。
私はこの本屋さんが大好きでした。
つづく