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犬を飼いたかったのだ|思い出図書 vol.02

小学校5年生まで住んでいた家は社宅で、犬や猫を飼うことができなかった。

通っていた幼稚園ではセキセイインコを飼育しており、当番制で回ってくる朝のお世話係が楽しみで仕方なかった。
小さい動物園のような、立派な鳥小屋に入って餌やりとお掃除をする。
運が良ければインコが頭や肩に乗ってくれるのではないかと、幼いながらにドキドキした。

小学校5年生になった頃には、ホームセンターの一角のペットコーナーにいたウサギに一目惚れし、親に頼み込んで飼わせてもらった。

我が家で飼う初めてのもふもふ。
クワガタや金魚を飼っていたことはあったが、あまり触れ合うようなものでもないし、意思の疎通が図れているかも正直わからない。
でもウサギは違った。感情豊かだし、意思表示もしっかりする。

初代は撫でると、すぐさま撫でた箇所を毛繕いした。
『やめろやめろ、人間の匂いがつくだろ』とでも言いたげだった。滅多なことでは横になっている姿を見せない、硬派なワイルドラビットだったのだ。
サムネに設定しているのは二代目なのだが、この子は逆に人前でもお構いなしに寛ぐ子だった。
ウサギにも個性がちゃんとある。それはもう面白いほどに。

それでも、わたしはやはり犬を飼いたかった。
飼い主が大好きで、名前を呼んだら駆け寄ってきてくれて、いつでもわたしの味方でいてくれる最高の友人、それが犬だ。

もちろん、それはきちんとお世話をして、犬の信頼を得ればこそのものだ。
しつけ、食事、お散歩、ブラッシング……予防接種などは親の力を借りなければいけないが、しかし子どもなりに見れる面倒は全部見る覚悟だった。

とはいえ、住宅事情が許さないのだから仕方ない。
わたしは来るべき日に備えて、図書館で動物図鑑を何度も借りては読み耽った。いつか犬を飼える環境になった時「わたしがしっかり面倒みるから」という言葉に説得力が生まれるよう、それはもう犬関連のページを何度も何度も読んだ。


そんなわたしにぴったりの本を、母がプレゼントしてくれた。
それは「世界の犬」という、文庫なのだがカラー写真がふんだんに掲載されていて、小さく「ポケット図鑑」とラベリングされている本だった。
犬種ごとに写真が数枚あり、原産地や生まれた経緯と歴史、その土地で就いていた任務、性格の傾向、毛並みの種類などが網羅されていて、まさに「ポケット図鑑」という名称がふさわしい。
しかもこれまで図書館で借りていた「動物図鑑」とは違って中身は丸ごと全部犬なので、夢のような本だった。
もちろん暗記するほど読み込んだし、社宅から戸建てに引っ越して「犬が!飼える!!」となった時も相当読み込んだ。
今でも実家の本棚にちゃんととっておいてある。

あれから20年以上経つが、余程珍しいか新種でもない限り、ひと目で犬種を当てることがまだできるんじゃないかと思う。


世界の犬(ポケット図鑑)
成美堂出版
古い本なので、さすがにもう中古でしか流通していなさそう


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