製造コストの限界チャレンジ
今回は久しぶりにゲームマーケット不参加(出展しない)ということで余裕があると思いきや、また同人作っているかわぐちです。こんにちは。
ということで、ご縁があって、ブース「ス38 繰映党」さんに委託させていただくことになりました。1部:1,500円です。
マーダーミステリー
『王と、王たる者と、王ならざる者』
タイトルは「ザ・キング(仮)」で作っていましたが、なんとなく「長くしたい(バカ)」と思って、2秒で思いついたタイトルにしてみました。
その弊害と言いますか……
タイトルから色々と閃いて、半分書き直すことになりました(バカ)
余裕ある進行だったハズが一気にギリギリ進行に。
そんなギリギリ進行な「王と、王たる者と、王ならざる者」は「不可逆過程のデジャブ」同様に色々チャレンジングな作品なんですが、何を一番チャレンジしたかと言えば「製造コスト」です。
同人ならではの低コスト仕様
最初に言っておくと、「同人」だからこそ許される部分はあります。製品として流通するには100%適さないので、これを「コストにチャレンジ」と言っていいか微妙ですが、「とにかく作品を頒布したい」という方には良いのではないかなと。
ただ、「製造コスト」だけを見るなら、データ販売の方が断然安いです。なんせ製造コストはゼロなので。
イベントに持っていくならって話だと思ってください。
仕様を作る
まず、コストを計算するためには仕様決めから。
まだ削れる箇所はあると思いますが(冊子のページ数など)今回の仕様は以下のように切りました。
ルール説明等の冊子:1冊(A4 16ページ)
表紙からルール説明、真相など、1冊にまとめて「ここから先は条件がそろってから」みたいな感じで読み進める形になっています。
推理の導線解説などは、最終ページにQRで乗せています。
バラバラに印刷をするより、冊子印刷にした方がコストが安いです。ハンドアウト:10枚(A4 両面印刷)
A4で制作し、プレイヤーに半分に折って使って貰います。故に表紙含めて4ページ構成です。前半と後半に分けたので5人プレイ×2=10枚となっています。前後半に分けないシナリオなら、単純に枚数が半分です。裏カバー:1枚(A4 両面印刷)
今回、箱を用意していないので、シナリオの記述が見えないように裏側を蓋する必要があります。裏表紙として利用する(仕様を乗せるなど)と丁度よいので1枚作成して挿入しました。シール:35片(QRコード)
カードは作らず、全てQRコードを読ませて情報を取得する方法です。実際、カードと箱がコストを食うので、両方削るだけでかなり費用は抑えられます。「不可逆過程のデジャブ」では、QRコードを読み込んだら読み込んだQRをシールで潰していく方式でしたが、QRコード同士が近いと誤読み込みをしてしまうため、意図的にQRコード同士を離して配置する必要があり、その分、冊子が増えてしまっていました(見栄えも悪くなりました)。そこで、今回はQRコード自体をシールに印刷して、それを取得して、自身のハンドアウトに張り付ける仕様にしました。こうすることで、仮に誤読み込みをしてしまっても、自分が取得した情報間でのこととなるため、ゲームに支障が出ません。
35片にしたのは、印刷するシールのシートが1枚70片印刷だったので、数的に丁度良くするためです。OPP袋:(A4 シール付き)
同人なので箱を廃しました。もちろん、作ったからには売れたら嬉しいですが、個人的に「製品(流通作品)と同人は根本的に目的が違う」と思っていて、製品は「営利」を目的とした商行為をするもので、同人は「発表」を目的とした名刺代わりのものだと考えています。「私はこんな作品を作っています」ってやつですね。故に、第一目的は「作品を出す(形にする)こと」だと思っていて、綺麗な箱とか、そういうものは不要と考えています。結果、OPP袋で良いなと。コストも安く、表紙もそのまま冊子のものが使えますし、場所もとらないので一石三鳥です。
まず最初に、上記のように考えて仕様を切りました。仕様を切ったうえで、その仕様に収まるように作る形です。
欲を言えば、A5サイズにまとめたかったのですが、ぶっちゃけA4の方が印刷代が安かったのでA4サイズで作っています。
「不可逆過程のデジャブ」を作った経験から、更に仕様を精査して、予め決めた仕様の中で書く。個人的に「縛り」は好きで、「縛りの中で何が作れるのか?」と考えるのは楽しいです。
以前も少し書きましたが、縛りがあるからこそ、創意工夫が生まれると思っていて、縛りがない中で作る創作物は、大抵が「締まりのないゼリー」みたいにだらしない形で、味もふわふわしたものになると個人的に考えています。自由な創作は、一定の不自由さがあるからこそ生まれるものじゃないのかなと。余談でした。
実際のコスト
今回はとりあえず100部のコストです。もちろんたくさん刷れば刷るほど安いです。400部分くらい刷れば、印刷コストは半分まで行かないまでも30%くらい安くなりそうです。
また、印刷会社は精査すればもっと安く出来るかもしれません。手っ取り早い「ラクスル」で刷っちゃいましたが、ラクスルは手間を簡略化しているだけで、コストは並み~ちょい高いくらいです。
冊子 10,404円
中綴じ冊子 / 左綴じ / 12ページ / A4 / オンデマンド印刷 / 表紙(両面カラー 光沢紙(コート) 標準:90kg 表面加工なし) / 本文(両面カラー 光沢紙(コート) 標準:90kg)ハンドアウト 10冊 23,680円
A4 / 両面カラー / 普通紙(上質) / 標準:90kg裏カバー 2,310円
A4 / 両面カラー / 光沢紙 / 標準:90kgQRシール台紙 3,046円
70面 角丸(QRコード用) 100シート 31556OPP袋 548円
テープ付【100枚】 A4 【 A4用紙/DM用 】 透明OPP袋 225x310蓋40mm
合計:29,584円
1冊あたり:296円
「1500円で売るのかよ!」と言われるかもしれませんが、これはあくまで「製造コスト」であって、制作費(執筆工数や、デザイン、テストプレイの工数など)や、アッセンブルの工数、作った後の輸送コストや保管コスト、イベント出展費用等は含まれていません。あくまで「製造」にかかるコストです。でも、「1500円で20部売れれば、製造費くらいはペイできる」くらいにはコストが抑えられているので、名刺代わりに作るなら良いのではないでしょうか?
ちなみに、冊子印刷は短期納期で制作したので、制作日程に余裕があれば、あと3,600円下がります。
シールの台紙についても、枚数的には半分で済むので、100シートではなく、20シートのものを3つ購入して使えば、2,319円で済むので727円安くなります。
日程さえ余裕があれば、トータルで4,327円安くなるので
合計:25,257円
1冊あたり:253円
となります。
製造費は「原価」にあらず
何度も書いてしまいますが、あくまで「同人」ならという前提でなら、十分にコストが抑えられていると思います。
というのも、上記の@296円は、原価ではありません。
制作コスト(原価)は製造費のみではなく、実際に人が動いた工数や、その他もろもろの経費によって決まってくるからです。私が外に出しているシナリオ制作費(基準)は「1キャラ12万」です。(あくまで基準であって、各取り組みの内容や予算によって価格は変わります。※取り組みとして面白そうなら価格は応相談です)
ぶっちゃけ、6キャラ以上のシナリオは作るのが本当に大変なので、外注で書きたくないというのが本音です(笑)本音ですが、このくらいいただけるなら、頑張ります。ただ、この値段でも8キャラ以上は金額に見合っていないと思うんですよね。そのくらい多人数のシナリオをちゃんと作るのは大変。ストーリーとキャラ背景くらいなら8人でも10人でもすぐ作れますが……。事件を起こして動かして推理してもらうとなると大変なんです。
逆に5キャラのシナリオなら、少し安くても全然受けます。多人数シナリオを作っていると5人とかライトすぎて、逆に物足りなくなってきます。今回の「王と、王たる者と、王ならざる者」もそうですが、「あー!もうちょっと人数増やして100分シナリオにすればよかったー!」って思いました。キャラ背景をちゃんと考え過ぎて、もっとちゃんとした形で作りたくなったんですね。手遅れですが(笑)
おっと、話が逸れました。
外に出す金額を原価とするのは横暴なので、実際にシナリオ執筆やデザインにかかった工数を考えると、まあ、大体70~90時間くらいです。
厳密に言えば、移動中とか細かい空き時間は、ずっとシナリオのことや、ギミックのことを考えているので、もっと時間は割いているかと思いますが、デスクに向かって作業している時間はこのくらいでした。
作品の内容によっては(普通の5人プレイ用なら or アイディアが固まっていれば)この半分くらいの時間で作ることもありますが、今回はこんなもんです(書き直しもあったので)。
あとはテストプレイのために動いた時間が5時間くらい。アッセンブル3時間。細かい事を言えば、会場までの交通費など、色々ありますが、全てひっくるめて工数100時間として計算します。これが完売すれば……
■売上
1500円×100部=150,000円
■販売益
150,000円-29,584円=120,416円-消費税 10,946円=109,470円(税別)
■時給換算
1,095円(東京都最低時給:1,072円)
完売すれば、東京都の最低時給くらいになはります!
完売すれば!!です!!
まあ、でも、本当に「趣味でやるなら良い」と思います。
完売前提なら、月に3作品コンスタントに出せれば、暮らせるのではないでしょうか?
まあコンスタントに3作品/月は怪しいですが、2ヶ月で5作品(2.5作品/月)なら行けそうな気も?ただ、同じシステムの量産品じゃないと厳しいかな……。システムの刷新は、そんなに早くはまとまらないと思うので。
データ販売なら製造コストゼロですが
オンラインで、プリント&プレイ(もしくは、データをそのまま利用してプレイ)であれば、もっと製造コストはゼロです。ただ、個人的にですが、創作物に於いて「データを販売する(そのまま渡す)」というのは、簡単に複製できてしまうため、抵抗があります。
それこそ名刺代わりに無料で公開するという考え方はありますが、費用や工数がトントンになる算段があるくらいの頒布が成立する業界の方が、結果的に発展する(ユーザーがちゃんと対価を払う文化が出来れば、制作は継続性が増す)と個人的に考えているので、無料シナリオが単純に良いとも思っていません。
故に、製造費がたとえゼロであるオンラインであっても、制作工数は確実にかかっているわけですから、相応の値段はつけて頒布して欲しいなとは思います。しかし、これは「お祈りレベル」のお話です。値付けは自由。
とりあえず、イベントに持ち込む&作品を遊んでもらうだけなら、こんな仕様でやってみるのも良いのではないでしょうか?って話でした。
作品を発表するのに、「箱が無ければダメ」「綺麗なデザインじゃなきゃダメ」なんてことは無いと思います。
もちろん、「そもそも印刷しなければダメ」ということも全くないですが、こういう形もあるよってことで。
ぜひ、ゲームマーケット2023春にて
手に取っていただければ幸いです!
よろしくお願いします。
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