どうも、マーダーミステリー界の嫌われ者です
この記事は、マーダーミステリーアドベントカレンダー2020の12月24日更新記事として書いております!
みなさんこんにちは。
今回、マーダーミステリーアドベントカレンダーなんてものを企画させていただきまして、本当に色々な視点から読み応えのある記事がわんさか掲載されてきており感謝しかありません。本当にありがとうございます!
正直、私が書くことなんてミジンコもないわけですが、ミドリムシレベルのものであれば書けるかと思いまして、筆を執らせていただきます。
ちなみに、12月24日の日付にしたのは、クリスマスイブという一大イベントの日であれば、きっと一番PVも注目度も低いだろうと考えたからです。
……でも、コロナの影響で、あまりクリスマス関係なくなってしまった気もしますね。巣籠りメリークリスマス!
マーダーミステリーの魅力と新規性
本題に入る前にまずは、「マーダーミステリーの魅力がどこにあるのか?」という部分から始めたいと思いますが、この点については、にっしーさんの「マーダーミステリーの魅力をあらためて考える」の記事にあった、最後の見出し「唯一無二のゲームジャンル---それがマーダーミステリー」に共感する部分が多いです。
私の考えるマーダーミステリーの最大の魅力であり新規性は、「隠匿(非対称性)」「ストーリー」「推理」といった要素が、絶妙なバランスでひとつの「ゲーム(競技性)」を生むストラクチャーであって、全ての要素がある程度の水準で土台を構築していないと、「マーダーミステリー」という新しいジャンルのコンテンツに該当しないものになると考えている過激派です。(笑)
パンとチーズとハンバーグという既存の料理の組み合わせからハンバーガーが生まれたように、マーダーミステリーの構成要素は既にありふれているものです。故に、全ての要素を含んでいて、全ての要素が一定のクオリティを担保していないとコンテンツとしての新規性は無く、「どこかで見た事のあるコンテンツ」「代替の利くコンテンツ」になってしまうのではないでしょうか。
例えば、エモーショナルなストーリーに偏り過ぎた結果、推理や隠匿から生まれる情報公開のジレンマなどを欠くのであれば、それは「マーダーミステリーである必要がないコンテンツ」だということです。
そういうコンテンツが悪いとか、面白くないという事ではありません。面白いものも当然あるでしょう。むしろ面白いものほど、胸を張って別のジャンルのコンテンツとしてレコメンドすれば良いと考えます。
そうすることによって、前述した全ての要素が絶妙に絡み合うコンテンツを期待していたプレイヤーとの齟齬を回避でき、期待値とのギャップで生まれる不当な評価も回避できる。プレイヤーにとっても、制作者にとってもデメリットはありません。
派手なオフェンス・地味なディフェンス
前述したようなことを度々口にするのですが、まあ反発は大きいです(笑)
「間口を広げた方が」「多様性を認めた方が」そういう意見が多く、その意見を否定する気持ちはありませんが、個人的には、もっとコンテンツの保全や確立と並行して進めた方がよいと考えています。
ある程度「マーダーミステリーはこういうもの」という共通の認識ができる前に無用に間口を広げすぎたり、多様性と言う言葉のもとに、マーダーミステリーではないものにマーダーミステリーの冠を付けることは、正直、コンテンツの発展の阻害になると私は考えていて、これをすると何が起きるかと言うと、結局マーダーミステリーというコンテンツがどういうものか個々のユーザーによって認識に大きなズレが生じ、内容は異なるのに「マーダーミステリー」という言葉を冠するものが一時的に広がって、それぞれのプレイヤーが求めるものと作品に齟齬が生まれ、そのまま一過性のブームで終わる……そんな未来が想像に易いです。
私は、前職でライセンスを扱う事業に従事していまして、コンテンツを育てるためには、攻守両方をしなければならないことをキャラクタービジネスから学びました。例として、具体的に名前は挙げられませんが……30代以降の方なら誰でも知っているであろうキャラクターの話で、そのキャラクターは、当時テレビでも取り上げられるほど人気を博しましたが、今は殆ど、その姿(グッズ)を見なくなりました。
これは、ライセンスビジネスの失敗で、当時ライセンサーの経験値が無かった版元の企業は、申請があれば「いいよいいよ」でライセンスを許諾しました。しかし、キャラクタービジネスの経験がなかったため、監修体制も弱く、商品の競合なども考慮しなかった結果、クオリティの低いアイテムや数社から同じようなアイテムが出るなど、キャラクターグッズが乱造されてしまいました。
結果、どうなったかと言うと、市場に商品が溢れ、クオリティの低いものほど残り、叩き売られ、イメージが毀損され市場から消えました。乱造されたグッズや、それに使われたキャラクターイラスト・デザインは、ユーザーの求めるものと乖離してしまっていたのです。そして、それを教訓として版元の企業はライセンスの事業部を社内に作り、監修を徹底するようになりました。以降は、またヒットキャラクターをいくつも生み出しています。
別の企業ですが、みなさんご存知の「サンリオ」も、よく「キティちゃんは節操がない」なんて言われるくらいライセンスアウトを無差別に行っているように見えているかもしれません。しかし、サンリオの監修は非常に厳しく、キャラクターの配色や意匠はもちろん、線の太さから全てチェックが入ります。san-xさんも、カピバラさんでお仕事させていただいたバンプレストさんもみんなそうです。
キャラクタービジネスは、年に1キャラクターヒットすれば御の字と言われる業界なので、その「年1ヒット以下」を長くヒットさせ続けるため、もちろん、色々なデザインを作って人気を維持するためのオフェンスも行いますが、ユーザーのイメージを裏切らないように、ユーザーとの齟齬を回避するためのディフェンスの徹底も欠かさないわけです。
「こんなのキティちゃんじゃない!」なんて言わせないために。
これは、どんなジャンル、どんなコンテンツでも、長く続けるためには必要なものだと私は思っています。故にマーダーミステリーという新しいコンテンツでも、長く遊んで貰うためには学ぶべき点が多いと考えており、とても保守的な話をすることが多いです。
「スクラップ&ビルドだよ。それは必要な過程だよ。」と仰る方もいるかもしれませんが、スクラップの後に必ずビルドが成されるとも限らず、ビルドが成されるとしても、それは相当な時間と人と金が必要になるため、知見があって避けられるリスクであれば避けた方が良いと考えています。これが「ディフェンス」です。オフェンスが不要であると考えているわけではなく、オフェンスについては別段考えなくとも、みなさんしたくてウズウズしているのではないかと思っています。
世の中、往々にしてオフェンスは派手で人気があって、ディフェンスは地味で不人気です。保守的なことを主張すれば「老害」などと言われてしまったりする。だからと言って、黙っていては「失敗(スクラップ)待ち」……もちろん、嫌われたい訳ではありませんが、最近は「嫌われても止む無し」と考えるようになりました。
どうも、マーダーミステリー界の嫌われ者です
まだ2年にも満たないコンテンツ
マーダーミステリーは、日本に入ってきて遊ばれるようになってから、まだ2年にも満たないコンテンツです(正確に言えば、王府百年以前にも遊ばれているため2年以上経っていますが、王府百年準拠で考えて)
まだまだ知名度は低いとは思いますが、それでも正直、もっとゆっくり発展していくコンテンツだと思っていました。
なぜなら、王府百年という作品を分解すると、それが計算なのか、偶然なのかは分かりませんが、非常に絶妙なバランスで組まれていることが良く解り、そのレベルの作品がそんなに沢山、ポンポンと出来るとは今であっても思えないからです。
こんな偉そうなnoteを書いている私も、王府百年のような凄い作品を作れているなんて正直言えません。王府百年で感じたマーダーミステリーというコンテンツの凄さ、絶妙なバランス感を少しでも伝えようと必死です。もちろん、私はただの凡人で、世の中には天才が間違いなく居て、そんな天才の手にかかれば、王府百年が私に見せてくれた新規性(=絶妙なバランス)を体現する作品がどんどん作られるかもしれませんが、まあ、ちょっと焦り過ぎではないでしょうか。もっとゆっくり育てても良いんじゃないかなと思っています。
ディフェンスを念頭に置いた凡人(私)の制作
嫌われそうな話ばかりで、増々嫌われそうなので(手遅れ)
常々私が意識している「ディフェンスを念頭に置いた制作」について触れたいと思います。
マーダーミステリーをプレイして「自分ならもっと面白いものが作れる!」と思う方は多いと思いますが、既存のものをドラスティックに変えるということは、既存のノウハウをあまり使えないわけですから、調整に膨大な時間がかかります。マーダーミステリーの「1回しかできない」という性質上、時間のみならずテストをしてくれる「人」も必要です。そして何より、いろいろコネくり回して作った結果「ジャンルに適合するか」という問題も出てきます。
制作のリソースを出来る限り最小限に止めるためには、既存のシステム(作品)をまず徹底的に分析し、ロジックを理解し、それを活かせる部分を多く残した方がすんなり行きます。たとえば、「消えたパンツと空飛ぶサカナ」は、3日で書いて、テストプレイは3回だけやりました。ただ、テストプレイはやりましたが、殆ど直してはいません。ほぼ予測の範疇に収まっていたからです。
「消えたパンツ~」は、マーダーミステリーの構造的な部分を始めてプレイする方に理解してもらうための作品として作ったため、自分の中では、王府百年に内在するマーダーミステリーのエッセンスだけをまとめて、シナリオをちょい足ししたに過ぎません。故に、書くのも早ければ構造的に+αの部分が無かった分、想定外のことも起きませんでした。結果、テストプレイも最小限で済んだのだと思います。
その後、「ロナエナ(仮)」「零に誠」と、パッケージを続けて3作品ほど作らせていただき、そこで心掛けているのは、「前の作品と1~2か所だけ構造を変える」ということです。1~2か所というのは、絶対に1~2か所というわけではなく、要は「前作を踏襲しつつ、ちょっとだけ変える」という意味合いです。
たとえば「消えたパンツ~」を書き終えて、次の「ロナエナ」を書く際には、情報取得のシステムと、文章構造を各1か所変えました。3作目にあたる「零に誠」は、情報取得のシステムや文章構造はロナエナと同じですが、ちょっとしたシステムを追加しました。
最初はオーソドックスなものを目指し、少しずつ新しさを加えていく。個人的には、そのくらいの改変ちょうど良く、そして筆も早いです(笑)
1ヶ月ほどの時間で3本書きあげました。
構造が分かれば計算ができる
これもよく言うのですが、マーダーミステリーは、「どこで笑えるか」「どこで考えるか」「どこで驚くか」「どこでどの情報が出るか」「どこで気付きが生まれるか」などなど、全て計算しながら積み上げて作るものだと思っています。自分にとって執筆は、パーツを揃えてロジック(想定)を当てはめていく作業です。
故に、まずはマーダーミステリーというコンテンツがどういうものから成り立っているのか?という部分を構造的に理解するところから始めるのがおススメです。そして、その教材として個人的に「王府百年」は最適だと思います。
長くなりそうですし、ネタバレになりかねないので、今回は詳しく書きませんが、構造を分解していくと、王府百年は、情報やアイテムひとつひとつにちゃんと意味を持たせていることがよく分かり、そこからどのような展開を想定しているのかが見えてきます。無駄が無いのです。もちろん楽しさの総量で王府百年に勝る作品はあります。ただ、作り手としてこの作品を少なくとも体験しないのは勿体ないと思います。
王府百年から学んだ既存のロジックは大切に、ただ、新しさも欲しいので、前述したように少しずつシステムや文章構造を改変しながら私は作品を作っています。これは私のような凡人でも、大きく「マーダーミステリーのイメージ」を外さずに一定の楽しさを担保できる制作方法だと思っています。
マーダーミステリーは、遊ぶ側も時間や体力といったリソースを結構使うコンテンツです。本や映像作品であれば、途中で止めることもできますが、マーダーミステリーはそれが難しいですよね。制作をするモチベーションとして、自分の世界観を伝えたい気持ちはもちろんあるかもしれませんが、プレイヤーのリソースを無駄にさせないためにも「プレイヤーが楽しめるコンテンツ」「プレイヤーが求めるコンテンツ」を、もうちょっとだけ意識して制作してみてはいかがでしょうか。
本当に偉そうに書いていますが、自分の事は棚に上げていますのでご容赦を……
いち凡人として、もっと優秀な作者の皆さまが面白い作品を沢山つくってくれることを、嘘偽りなく待ち望んでいます!よろしくお願いします!
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マーダーミステリー白書
マーダーミステリーについて私(かわぐち)の考えや、ちょっとした情報などを書いて行こうかと思います。
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