間違えてしまいそうな努力。
第1 この文章の読み手は。
この文章は、五十代のサラリーマンに読んでいただきたいと思っています。それも、自身の先行きに不安を感じるサラリーマンです。これは、努力の方向性を間違っていませんかと問いかける趣旨の文章です。
第2 客観的な事実の話
東京商工リサーチによると、『2024年1-2月に「早期・希望退職者」を募集した上場企業は、14社(前年同期9社)に達し、前年同期を5社上回った。』とのことでした。
2024年1‐2月 上場企業の「早期・希望退職者」募集 大型化で昨年1年間を超える3,613人 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ (tsr-net.co.jp)
それらの上場企業のうち、直近本決算(単体)で黒字だった企業が6割超えだったそうです。
一方、新人の給与は引き上げられ、昇給が今一つの中堅どころは不満を抱いているとかいないとか。
初任給アップ、新人と10年目が同じ賃金? 賃上げをめぐる「会社」の危機 | Business Insider Japan
第3 多分客観的な話
五十代なら会社を信じて頑張れと教えられた世代だろうと思います。構造改革だか何だか知りませんが、そんな世代の社員を黒字企業が体よく辞めさせている姿には考えさせられます。
一方、この文章を書いている日の前日、とある方から教えていただきました。曰く、大学の産学連携部門に勤務する職員の待遇が悪すぎるとのこと。
大学の産学連携部門に勤務する職員と言うのは任期付きの非正規雇用であることが多いように思います。年収で言えばざっくり600万円程度でしょうか。ちなみにその年収600万円・任期最長5年の契約社員の職を得るために必要なスキルというのが、例えば以下をすべて満たすことです。
・大学院レベルの専門的知識
・知的財産実務経験3年以上
・出願や中間対応等の特許実務ができること
・関係者と協力して円滑に職務を遂行できる
・文書作成能力、交渉能力、プレゼンテーション能力、英語力等を有する
この待遇で差支えないのは、子供が独立しており、かつ、年金を貰うまでの数年間を凌げるだけの収入が欲しい、そういう方だと思います。実際、私の場合、大学の産学連携部門に勤務する方とは仕事で接することがありますが、皆さんそういう年代の方ばかりでした。
ちなみに、国税庁が発表した「令和4年度分 民間給与実態統計調査」によると55歳〜59歳の平均給与は546万円(男性702万円/女性329万円)だそうです。
これは産学連携の話ですが、他の分野でも似たようなことになっていないでしょうか。例えば、液晶ディスプレイの設計に長らく携わっていた方が早期退職を迫られたとき、同じ仕事での転職は可能なのでしょうか。某転職サイトを見た限りでは、そういう仕事は若い方を対象としているように見えます。
つまり、今までの経験がフルに活かせる転職先というのは待遇が悪くてもあるだけマシなんじゃないかと私は思うのです。今までの経験の一部が活かせる転職先なら、待遇をガマンすれば何とかなるかもとも。
私を始めとした昭和世代は「努力は報われる」と教わってきたものですが、この場合の「努力」とは「目の前の仕事を極めること」とは限らないと痛感します。その前にまず「努力する価値のあるコトを正しく探り当てる」という点につき努力することが必要です。私個人で言えば「ベトナム法に配慮した特許出願関連書類を作成可能とすること」に費やす暇があったら「米国出願の依頼を増やすこと」に時間を費やすべきなのです。成果が早く大きく得られるので。仕事の質そのものを上げたら良いという訳ではなさそうです。
第4 努力する価値のあるコトの話
「努力する価値のあるコト」とは向上に伴って何らかの意味での収益が得られる能力だと考えます。例えば、50代の私達でもいきなりAIのシステムを構築できるようになれば好待遇での転職が可能になるかも知れません。
逆に、今後衰退する分野に注力してはならないとも言えます。そんな衰退する分野について解説しているサイトを見つけました。
今後5年で成長する10の職種と急速に縮小する10の職種 AIや自動化による「技術的失業」に備える、リスキリングの重要性 - ログミーBiz (logmi.jp)
私が意外に思えたのは「統計、金融、保険事務」が急速に縮小している職種の第9位に入っていることです。統計と言えばデータサイエンスの分野なのでむしろこれからの花形ではないかと考えていました。
自分が縮小する職種に身を置いていた。ではどうするか。上で紹介したサイトには続編があります。
リスキリングは「好きでかつ向いている」分野に方向性をセット 将来の仕事の選択肢を増やす、これから成長する2つの分野 - ログミーBiz (logmi.jp)
これらのサイトの著者の考えはそれぞれのサイトをご覧いただくとして、私はやはり「売ってナンボ」をベースにものを考えたら良いのではないかと考えます。ここで言う「売って」とはコツコツ売るという意味ではなく、自分が持っているものを市場に乗りやすい形に加工して大きな市場に出すということです。例えば、日本円を売って米ドルを買い、しばらくしてからその米ドルを売って日本円を買うことはここで言う「売って」の一種になります。日本円も米ドルも容易に売買できるのでそれを売っているのです。その結果、私であれば、「ベトナム法に配慮した特許出願関連書類を作成可能とすること」に要する時間を「米ドルの売買で儲ける能力を獲得すること」に費やした方が良いということになります。そういう「市場に乗りやすい形」で売る点がとても大切です。
第5 まとめ
この文章を一文でまとめると『まず「努力する価値のあるコトを正しく探り当てる」という点につき努力することが必要』となります。早くにその努力を始めることが良い結果につながるのではと思っています。