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北見から巡るうまいもの旅⑤

ランチに何を食べるのか


 木工の街、津別町を通って12時に「道の駅あいおい」に到着した。あまり滞在時間はないんだけど、ここでの名物「クマヤキ」は買いたい!
 クマ柄のかわいいトラックの横に並ぶ人に紛れて大人しく待ち、2個購入。生クリーム入りの「ナマクマ」を選んだ。ネーミング…。生のクマ…。

生ものはお早めに食べましょう

 バスの中で早速食べる。背中から生クリームがはみ出していて、まるで「ゴジラ」のよう(うそです)。かわいい。頭からかぶりつくと、あんこと生クリームが絶妙に混ざって美味しかった。小腹が満たされたところで、12時45分に阿寒湖に到着!

 ここで船に乗る予定になっている。乗船時間まで少し余裕があったので、お昼ご飯になるものを探しに行った(本当は乗船場にお店がたくさんあるのだけど、この時は新型コロナの影響でお休み)。

 人気のパン屋さんに入ると、なんとお昼時のせいかほぼ売り切れ状態。「今、焼いてますがもう少し時間がかかると思います」と言われ、やむなく断念。ああ、どうしよう!と迷っているうちにどんどん船の出発時間が迫る。うーん、コンビニまで行けばいいけど、そこまで走る時間がない。遊覧船乗り場に戻りながら、目に入ったドラッグストアに突入!サッポロクラシックとつまみをゲット。

 んもう、これだけでいいか!てへ。
 チケットを購入し、早速船に向かう。思ったより人はまばらで、船のデッキの方が眺めが良いのでそちらから埋まっていく。船内に誰もいないのをいいことに、1人で広い1階席を占領し、うはうはとカバンから先ほどの「旅の仲間」を取り出した。

やっほい!今日のお昼ご飯!!?

 おおう。いいね、この開放感!空腹だろうが、サッポロクラシックさえあればわたしは生きていける。阿寒湖の美しい湖面を眺めながら、アイヌ文化感じる船内でわたしは酒を堪能していた。しかし。

 もうひとつの乗船場に近づくにつれ、人々が桟橋に並んでいるのが見えた。え?ここからこんなに人が乗るの?鶴雅グループをはじめ、温泉旅館が立ち並ぶ湖岸からの乗船客が多いのは、よく考えれば当たり前。やや慌てて窓側へ寄り、クラシックの缶を控えめに隠した。
 
いや、別に悪いことをしているわけじゃないんだけどね、何となくね。誰もそんなことしてなかったんだもん。

 とはいえ、飲み物持参の人々も多かったので、徐々に気持ちが落ち着いてゆく。窓際のすぐ近くで波打つ水と、その奥に見える雄大な山々。緑と青の深い匂い。船はどんどん進んで、湖だか海だか区別がつかないほど、真ん中に近づく。

 北海道に来てから、こういう船に乗ることが増えたなぁと思う。そういえば本州では、琵琶湖や猪苗代湖などそれなりの大きな湖はあるけど、始終行くわけではないし、意外と乗る機会がないかも。北海道はあちこちに規模の大きい湖があるから、その自然の中での船って多い。

あっという間に温泉街が遠ざかる。るるるーー♪

 徐々に周りが緑に囲まれた、狭い場所に入っていく。おおお!釣りをしている人もいる!湖の中に入っているのかなぁ。怖い怖い。←水苦手

 船に揺られながら、スマホのマップで、自分が阿寒湖のどこにいるか検索してみた。何だか端の方のとんでもない場所にいることが判明。阿寒湖って広いなぁ。
 調べると、日本で24番目に広い湖だそうだ。この規模で24位か…敵?はまだまだデカい。

 それにしても、北海道の旅というのは、マップと照らし合わせながらが、とりわけ楽しい。自分がどの位置で、何を目の前にしているかを確認すると、感激度が増す(自社比)。

特別天然記念物「まりも」っこり


 さて、途中の「マリモ展示観察センター」で一時下車。およそ15分の観察時間だ。

さて、この顔ですよ、みなさん…

 「マリモ」は決して「まりもっこり」(イラスト参照。こういう感じの人)のように人ではなく「植物」。阿寒湖には6億個ほど生息していて、30㎝大のものがいるのは世界でも阿寒湖だけだそう。そりゃあ特別天然記念物にもなるよね。

 皆で船を降りて、森の中を通ってセンター内へ。

巨大すぎませんね、このまりもたち

 建物内はWi-Fiも使えて快適。水槽の中には、様々な大きさのマリモたちがふにゃらふにゃらと泳いでいた。遠浅のところで波の動きによってコロコロ転がり、大きく丸いマリモに育っていくらしい。まるで雪だるまではないか!かわいすぎる!見ているだけで、緑のそのころころとした個体には、癒される。
 なんでこんなにかわいいマリモから、あの「まりもっこり」に派生したのか教えて欲しい。

 建物を出ると「マリモの阿寒湖」と看板がある湖畔に出た。「ここにさっきのマリモがたくさんいるんだって」と小さな子どもに説明するお父さんの声。実物を見たから、子どもも想像しやすいだろうと思っていたら。

 「へえ!オイモ!オイモがたくさんいるのかぁ」とキラキラしている。
 おおお、予想外だ。マリモとオイモ。「モ」しか合ってはいない。慌ててお母さんらしき女性が「違うよ、マリモだよ」と訂正していたが、お父さんの方が無言になっていた。わかるでぇ、その気持ち。

 チケットの裏には「マリモの唄」が記載されていた。歌詞を読んで気になっていたら、なんと戻りの船の中でBGMとして流れ出したではないか!いいねぇご当地の唄。

 しかし黙って聞いていると、やたらスロウでせつないメロディー…。マリモの水の中でのふわふわ感を想うと、確かにスロウでもよいが、もうちょっと明るい歌でもよかったのでは。とはいえこの昭和感がなかなかよい。この曲を覚えて、今度、北海道民の前で「ちみたちは知っているかね?」とカラオケで歌ってやろう、と心に誓った。

 14時45分に再度バスへ集合し、釧路市内へ向かう。

 途中で「滝口」という場所を通る。どうやら船で行った、狭くなっている場所とつながっているらしい。「ちょうどここの水流が阿寒川となって太平洋まで続きます」。ほええ。海までは、およそ60キロメートルの距離。その間をバスは移動。なんかちょっとウトウトしたが、15時15分には道の駅「阿寒丹頂の里」に到着。

 その道の駅に隣接する「阿寒国際ツルセンター」へ立ち寄る。このエリアのもうひとつの特別天然記念物である「タンチョウ」を保護している施設。この地域には当然野生のタンチョウがいるけど、偶然出会えることはまれ。せっかくこの地に来たのなら、この際、保護されているタンチョウでも見たい。それがオトメゴコロ。

相手を選べない特別天然記念物


 帰ったら自慢気に「タンチョウ、見たよ!」と報告するんだろうな。それは別にもう、野生でも保護でも関係ないのだ。

こちらがタンチョウですよ!!

 施設に入ると、保護して育てられている子どものタンチョウが迎えてくれた。思っていた以上に近くで見られて感激。ここで生まれ育っているという「ムック」がかわいい

 なんといってもタンチョウの羽の美しさは、一見の価値がある。白い輝きを放つそれは、そりゃあもう美しい反物になって、爺さんは高く売れたんだろうと想像する(つるの恩返し)。

 話がそれたが、このムックは自分のことを人間だと思っているらしい。恋する相手も「飼育員さん」というから、あまり選べない環境なのが不憫だ。

 野生のタンチョウが自分に近づいてきても、追い払ってしまうらしい。いつか自然の場所に還して幸せになって欲しい、と願うセンターの皆さんであった(詳しくは説明の看板を読んでね)。

 そろそろ出ようとしていたら「あ!野生のタンチョウがいるよ!」の声に、再び振り返る。大きなガラス張りの窓の向こうに、なんと3羽のタンチョウがいるのが見えた。慌ててカメラのシャッターを切る。
 「今の時期に野生が来るのは珍しいのよ」とセンターの方がいうので「やはり日頃の行いだな」と自信を確信に変え、その近くにいた知らない人にまで「野生のタンチョウいますよ!」とまくしたてた。

酒飲むタンチョウ大使

 道の駅に戻り、温かいカフェラテを買った(ビールは売ってなかった)。しゃーないのでそれを両手に抱えてバスに乗り込む。ここからはもう、市街地も近い。

 釧路市は「石炭」「漁業」「製紙」3つの産業の街だそう。しかしながら、時代の需要とともに今は衰退気味とのこと。いつの時代も、それに合わせて売るモノも変えていかなくてはならない。20代は若さで売っていたわたしも、今はもう、それは売り物にならない…

 釧路市内には、夕暮れが近づいていた。17時に駅に到着。めちゃくちゃ楽しいバスだった。さっきまでバスの空間を共にしていた人々が、一斉に思い思いの目的地に放たれていく。

夕暮れの釧路駅。今日はこの街を堪能できない

 わたしは先ほど「この駅に石川啄木の碑があるらしい」という情報を得たので、探すために構内に向かった。そういうものがあるなら、駅前などにすぐあるはずなのに見つからない。
 3輪のモニュメントにも「SEE YOU AGAIN また逢いましょう」と書いてあるだけ。駅の人に尋ねると「あるけど、一番近くでも徒歩8分はかかるかな」と返事。どうやら石川啄木の歌碑は、市内あちこちにあるそうだ。

 微妙に正確さを欠いた情報に踊らされた私は、この10分後に札幌行きのバスを予定していたので、もう歌碑は諦めることにした。売店で、美味しいビールを購入し、バスが来るまでベンチでプシュッといった。斜め後ろにある交番の人から怪しいと思われないよう、背を向けて飲んだ。あ、向こうからバスがやってくる。

 SEE YOU AGAIN、ひがし北海道よ、また逢いましょう。

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