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南富良野の美しさは、いつだって無防備だ②



朝食から午前中はカヌーへ


 身支度をして、朝食へ向かうことに。外に出ると、気持ちよいピリッとした空気と、カラマツの樹がまるで絵本の世界のよう。大きく深呼吸して、レストランへ。美しい洋朝食が、昨日の野性的な夕食と対比して非常に良い。

 小さなグラスに入った緑の飲み物が気になったので、すでに飲んだ2人に「これ何?」と聞く。同時に「メロンジュース」「スムージー」と返答。え?意見が分かれてるんですけど?と笑って口に運ぶと、それはスムージーだった。
 どこでメロンの味がしたのか理解できないが、彼は昨日の料理担当。昨夜の夕食が、味付きの肉でよかった。

たまらんねこの美しい朝食!

 さあ、腹も満たされたところで宿をあとにし、今日は3人でカヌーに挑戦する。午前中のかなやま湖は予想以上に美しく、青空の下、湖面に映る山々と緑の木々に釘付けになる。ここでカヌーに乗れるとはなんと贅沢なことか。

 早速、パドルの使い方を教えてもらう。聞いた通りに腕を動かすが、先生の動きと違うことが我ながらわかる。筋肉痛のせいかもね、と自分を慰める。「これね、1日やっても出来ない人は、本当に出来ないから!」と明るく言われたので「じゃあ仕方ないね、あたし出来なくてもね」と返すと、やっぱりそうと判断したのだろう、2人乗りのカヌーの前席に乗せられた(後ろが船長役)。

 ゆっくりと湖に漕ぎだす。パドル使いの良し悪しはわからないが、思った方向にカヌーが動いてくれることに感動する。かなやま湖の水に反射する山々を割るように進む。
 パドルが放つ波紋がきれいで、ぼうっと見ていたら「ほら!漕いで漕いで!」と声が聞こえた。我に返ると、水が近すぎてやや怖い。わたしは泳げない。

段々恐怖

 正気に戻りすぎた自分を先生は感知したのか「あのね、ひっくり返りそうで怖いって思っても、案外そんなことないから。怖がるだけ無駄だから」とおっしゃる。無駄?む、そうなのか…大丈夫なものなのか。そういえば大きいカヌーなら子どもも乗れるんだもんね。

 岸に戻ってもう1人の仲間に、乗りたいでしょ?しゃーないな代わってあげるよ、とパドルを渡す。彼らを乗せたカヌーは、楽しそうに再び湖に戻っていった。先導する先生のカヌーを追いかけるように、どんどん沖に行くので、わたしは彼らを見ようと自分の足で陸から追うことに。

 丘を登った先には、釣りをしている知らない2人組。そしてその手前にはラベンダー畑が広がっている。今は時期ではないが、きっと7月にはそれは美しい景色なのだろう。想像して再訪を願う。

 ちょうど逆光でみんなの顔は見えないが、太陽の光で輝く湖面の向こうで2艘は近づいたり遠ざかったりしている。なんて神々しい眺めだろう。まあ、乗っているのは3人の面白いオジサンたちなんだけどさ。
 有意義な時間を過ごし、そんな仲間たちにも別れを告げた。

工場を目指す


 さあ、ここからまた1人の旅だ。んもう、自分の好きなところに行っちゃうもんね、とアクセルを踏む。そう、それは昨日対岸から見た工場。クルマを走らせると、工場よりも先に、古い小さな駅が見えてきた。

 昭和レトロ感じる、エメラルドグリーンの屋根。「東鹿越駅」というらしい。調べてみると、台風の影響による代行バスと列車の乗換駅として機能しているようだ。その向こうに愛しの工場が見える。

 運よく、列車も代行バスもいて、小さい駅ながら瞬間の賑わい。カメラを構えて記念写真を撮る人もいれば、きっと地元民なのだろう、バスの窓から冷静にそれを見つめる人もいる。わたしはどちらかというと前者なのか?とはいえ、日に5本のうちの1本の電車に居合わせられたことに感謝。

JR根室本線は2024年4月1日に廃線

 幸いして他にクルマがいないので、工場の前でちょっとだけ減速。こちらもさっきの駅と同じようなエメラルドグリーン。もくもくと煙も上がり、トラックの行き来が見えた。あああ、いいなあ工場。好き。

 そのまま、かなやま湖を抜けて国設南ふらのスキー場の前を通ってみる。まだ季節ではないから雪はないが、入口はこぢんまりとした規模なのがわかる。駐車場からゲレンデが近いのがいい。しかもシーズン券が1万円というから、国設ならではの破格に笑ってしまう。安すぎるだろ。

 そのまま街なかに向かうと、右手に赤い鳥居が見えた。気になってそちらへ右折すると「南富良野神社」とある。おお、町名そのままの神社とくれば、参拝は必須だな。とクルマを降りる。

南富良野神社

 人のいない神社には、静かな時間が流れていた。天照皇大神を祀っているようだ。大きい社殿ではないが、木に歴史感じて格好良い。南富良野はもともと木材の村として発展してきたようだから、そういうのもあるのかな、と手を合わせる。木漏れ日が美しい。

最後のビア――――――


 気が付いたらお昼を過ぎていたので、再び道の駅に向かった。最後のランチは何にしよう?フードコートをとろとろ歩く。 
 昨日のお肉屋さんに「美味しかった!」と感想を伝えに行こうと思っていたら、残念、今日はお休みだった。その手前にあるお店でおにぎり、いや「お結び」が売っていたので、そうだお米食べたいと、迷わず入店。

 北海道のテレビにもよく出演されている、南富良野出身の料理人の店らしい。「故郷店」とあるのがいいね。北海道の郷土料理「いももち」を入れた豚汁と、お結びのセットを選ぶ。小さなカウンターに座って手を合わせた。玄米に近い噛み応えのあるごはんがおいしい。ぱくぱくと完食し、店を出る。

程よい量がいい感じ

 最後に物産センターに寄り、じゃがいもなんかを買った。家の土産だ。小銭をしまいながら、隣の冷たい飲み物を売っているところをチラ見すると、ビールが目に飛び込んできた。あ!そうだ!もうわたし、飲んでもいいんだ!途端に元気になる。この道の駅を最後に、今回の旅の仲間たちと再度合流し、運転手を交代して帰る予定になっているのだ。

 それを思い出し、嬉々としてさっき素通りしたレストランに突入。そうそう、ここでは「SORACHI1984」が飲める。食券を買おうとすると、ショーケースに目が行った。イマドキ珍しい食品サンプルが並べられている。しかもナポリタン推しなのか、「並盛」「大盛」「特盛」まで並ぶ。ああ、さっきお結びを食べたので今回は無理だけど、次回来たらナポリタン一択だな、とビールのボタンを押す。

 彼らが来るまで、あと1時間近くはある。ゆっくり最後の南富良野を楽しもう、とビアグラス※を傾けた。

※夏は生ビール(ジョッキ)・冬は缶ビール(ビアグラス)で提供しています

南富良野 2023年訪問

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