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音のある世界に舞い降りた1粒の小さな『種子』-僕らには僕らの言葉がある-

年が明け、2月も中旬となりましたが、今年1発目の投稿になります。(やっとかい・苦笑)
お久しぶりです。セキモトカナタです。

久々のnote更新……ということで、今回はある本の紹介をしたいと思います。

ん??本の紹介なら、前回やってたやないのアータ……とお思いの方も居られると思います。

ええ、確か昨年の秋に

これ……どこに需要があるねーん!!
人気作を紹介せんかーーーーい!!

的な、私オススメのマンガやエッセイの紹介をしました。
(´-`).。oO(どの様な本を紹介しているのか、
下記の記事をご覧下さい↓

今回は、女性向けの本ではありますが、なるべくたくさんの人に手に取ってもらいたい。そして、『硬式』野球部がある高校に、(軟式ではなく硬式の)野球がやりたくて入学している『ろう者』の高校生がいる、という話を知って欲しい、と思い、紹介させていただきます。


きっかけはほんの些細な出会い

私がこの作品を知ったのは、昨年の12月。
丁度Twitterを見ていて、私のフォロワーさんがこの作品のことを紹介していた新聞記事をリツイートしていたのを読んで、本屋さんで探したのですが

……

…………

………………

本のタイトルを忘れ、
探し回っても見つからず_| ̄|○||||||||(←アカンやん)

と、いうことを何度も繰り返し、たまたま用事で出かけてた先の本屋で最後の1冊を見つけて購入。

ん??その後??

作者さんのTwitterで挙げられていたマンガや設定を貪るように読み、作者さんのpixivアカウントを見つけて設定やサイドストーリーを読み、作者さんの有料コンテンツに課金して、その中にあるマンガや解説を泣きながら読むを繰り返した挙句、こうしてnoteに文章を書いてるのですが、何か(←これだからオタクは……!!)

数年前、様々な事情が折り重なり、なるべく好きな物を作らないようにしていた私が、この本に出会って、忘れていた感情を思い出しました。

その本のタイトルは、
『僕らには僕らの言葉がある』
(著者・詠里/出版・KADOKAWA)

『僕らには僕らの言葉がある(著者・詠里/KADOKAWA)』・表紙

【簡単なあらすじ】
聴者の『野中弘晃(通称・ノナ)』が入学したある都立高校に、ろう者である『相澤真白(通称・真白)』が入学した。

真白は130dBスケールアウトという全聾(=つまり全く聞こえない)で、幼少時からろう学校に通い、高校では軟式ではなく硬式野球をしたくて、その高校で初めての『インテグレーション生』という形で入学したのだ。

しかし、最初から真白を受け入れる環境は厳しく、硬式経験者のノナの態度に反感を持っていた野球部の同級生達は、ノナに真白の事を半ば押し付け、ノナと真白の2人がキャッチボールをする事に。

だが、真白の投げるフォームの正確さや、球の威力を知ったノナは、真白に『セットポジションから』投げるように指示するのだが……

と、いうところからこの物語は始まります。

最初の出会いは最悪。けど

この物語の『肝』は、

『お互いに違う場所で生きてきたふたりが出会い、お互いの世界が広がっていく』

と、いうこと。

耳が聞こえる(けど、家庭的には複雑な)世界で生きてきたノナと、耳が聞こえない(けど、そのことを肯定した環境で育ってきた)世界で生きてきた真白の2人の『世界』が広がっていく様を丁寧に、かつ繊細に描かれています。

とくに、1話目のラストでノナが真白に『ナイスボール』と声をかけようとするところで、ノナが(短時間で)指文字を覚えて真白に『声』を掛けるシーンは、本当に胸がいっぱいになりました。

真白の投げた球を受けて、『ナイスボール』と声をかけたいけど、耳が聞こえないんじゃ口頭で伝えても意味が無い。でも、その事を真白に伝えたい。と思ったからこそ、『ナイスボール』と『見える声』で伝えたノナが素敵だなと思いました。

そして、真白は真白で『声を出す』ことの必要性を、学校生活を送る中で感じることとなります。

普段、真白が話す時は手話と筆談ですが、野球の細かいプレーや説明を受ける際、そうもいってられない場面もある訳で、そうなったらノナに通訳をしてもらうしかない。しかし、真白が困っているのをノナに伝える為にはどうすれば……??
と、いうことで、妹である美青(みさお)に発声を教えて貰うことになります。

こうして、『ノナ』と呼べる様になった真白を見て、部員たちが挙って『指文字』(指文字ができるノナは簡単な手話)を覚え始め、2人の世界は少しずつ変わっていきます。

ふたりのお母さんの思いと戸惑い

真白のお母さん(=芙美子さん)は、幼少時に左耳が少しだけ聴こえていたのですが、ろう学校では『聴覚障害』を『克服』して、音の聞こえる世界で困らない様にする訓練をしていました。ですが、芙美子さんはその意味の無い訓練に疲れ果てて、『耳の聴こえない自分』が自分らしく生きる事を望んでた『ろう者』です。

そんな芙美子さんが結婚し、生まれた子供(=真白)が130dBスケールアウトの全聾と知り、自分の様な思いをさせたくない、『耳が聴こえない世界』でのびのびと育って欲しい、との思いで、真白を手話で育てていきます。
しかし、真白が中学3年生となり進学を考える頃、『インテグレーション』で普通の高校に進学したい、と言いだした事で、自分の母親が必死になってろう学校で発声練習をさせた事を(初めて)解るのです。

親はいくつになっても、子供の幸せを願っています。例えそれが障がいのある子供でも。
その子の『幸せ』の為に、親が出来ることは何でもしてあげたい。
けど、真白は『ろう者』として生きていく中で、外の世界に出ようとしている。その事を同じ『ろう者』である芙美子さんに伝えたのは、必然だった様に思います。

そして、ノナのお母さん(=真紀さん)は女手一つでノナを育ててきました。野球をやり始めた息子(=ノナ)の為に、ダブルワーク、トリプルワークは当たり前。強豪校のセレクションに落ちて、野球を辞める、というのかと思ったら公立校で頑張ると言った息子が、野球以外のこと(=手話の勉強)をさせられているのを見て、息子の事を不憫に思うのです。が、口数が少なく、チームメイトはいるけども『友達』を作らなかった息子が、初めて家に連れてきた友達が、耳の聴こえない可哀想な子(=真白)。それも、真白に数学を教えて貰っている。へ??何で??どうなってるの??と戸惑う真紀さんにノナは

『俺がやりたくて勝手にやってるだけ』

と言います。

そう、ノナは真白と『話がしたい』から手話を覚えただけであって、決して真白が『可哀想』だから、『助けてあげなきゃいけない』から、手話を覚えた訳ではないのです。

息子が仲良くなりたい人が、たまたま耳が聴こえなくて、話せないだけの事。

そこで真紀さんは息子の成長を感じ、もう『子供じゃない』ということを知ります。
(´-`).。oO(真紀さん、真紀さん、あなたの息子さん、マジでいい男だと思うよ??

続きがとても楽しみな本に出会えた喜び

さて、ここまで熱く語ってきた『僕らには僕らの言葉がある』ですが、今まで知らなかった話が多く、ホントに久々に皆に語りたくてしゃーない!!という位素敵な話で、ぜひ続きを!!続きを!!と願っています。
(´-`).。oO(作者さんのpixivアカウントやTwitterでも設定やサイドストーリーが読めるので、そちらの方も見て頂けるとありがたいですー!!

ただ、作者がとてもいい話を描いていても、読む方が面白いと思わなければ、続きは出ない業界だということも理解はしているつもりです。

無理に『読め』とはいいません。

でも、私の様にSNSでこの作品を知って、手に取って読んだ方が増えたらいいな、と思い、語らせて頂きました。

拙い感想ではありますが、この本を読むきっかけになれば幸いに思います。

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