名前がついただけなのに
ほっとしてしまった。
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今年で30歳になるらしい。
幼少期に想像していた30歳はもっと大人だった。お金がたくさんあって、なんでも自分の好きなように生きていた。はやく大人になりたかった。大人になれば自由になれると思っていた。
大人になってもつらいままだと気付いて、もう全部終わりにしたい、と思い始めてからは、ただなんとなく、30歳までには終わらせようと考えていた。
そんな年齢。
ずっとつらかった。
怒られている理由がわからなくて泣きながら謝り続けたこと。クラスメイトの冗談をわたしだけ信じてしまったこと。どんなに確認しても忘れ物をしてしまうこと。整理整頓ができないこと。喋るのが下手なこと。感情を自覚するのに時間がかかること。
書ききれないほどたくさんの、まわりとのズレ。
みんなはもっと頑張っている。頑張ればできるのに甘えているだけ。そんなふうに自分を責めた。
会社に行けなくなった。
今思うと、周りと同じフリをするのに疲れてしまったのかもしれない。
他の人の悪口に曖昧な相槌を打ちながら、わたしもいない時には標的にされているんだろうなと思いつつ。わたしだけ持ち歩いている、2冊目も後半になったメモ帳。何度も同じことを聞いてしまう。やらなければいけない仕事を忘れてしまう。自分のダメなところばかり気になって自己肯定感が下がっていく。そんな日々だった。
ADHDとASDの診断がついた。
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ほっとしてしまった。
生きづらさに、名前がついただけなのに。
ただ、名前がついて、他にも同じひとがいるのだとわかって。頑張ろう、と思った。
周りのひとたちに助けられながら。薬を頼りながら。
今日も生きてく。