砂漠を横切るラクダのように【2-(1)】
・2・
あの日、私は仙台市の中心部にいた。古めのビルの四階で、金曜日ならではの忙しさに追われながら、遅めの昼食をとっていた。いや、正確には“昼食をとったあと”だった。
「食事をとるなら、デスクではなくここで」と指定されていたその部屋は、窓があったはずだが薄暗く、壁には資料などがみっちりと詰まったスチール製の本棚が並んでいて、よほど業務に追われていない限りは利用する気になれない場所だった。それでも、すっかりと食事をとるタイミングを逃してしまっていた私と同僚はあの日、何かに追い立てられるように外食ではなくコンビニを選び、めずらしくその部屋でおにぎりなどを食べていた。
ベージュとグレーが混ざったような濁った空気――。
思い出そうとすると、そんなイメージが浮かんでくる。どんな天候だったか、雪はちらついていたか、外は寒かったか――あくまでも、そのときはまだ「日常」だったから、細かいことは全然記憶に残っていない。
六畳ほどの部屋の真ん中には茶色い長テーブルが“2×2”の状態で置かれていて、私たちはギシギシするパイプ椅子に座り、窓のほうを向くようにして横並びになっていたのではなかっただろうか……。食べ終わって、しばしの休憩中(たぶん60分の昼休みのうちの、45分くらいが経過していたはずだ)。同僚が「ちょっと電話かけてきますね」と廊下へと出ていき、一人になった私はぼんやりと……何を考えていただろう。
そのとき、あの地震が来た。
“はじめまして”のnoteに綴っていたのは「消えない灯火と初夏の風が、私の持ち味、使える魔法のはずだから」という言葉だった。なんだ……私、ちゃんとわかっていたんじゃないか。ここからは完成した『本』を手に、約束の仲間たちに出会いに行きます♪ この地球で、素敵なこと。そして《循環》☆