星との距離について
「星のようにあってほしい人がいます。常に変わらず輝き、不安になったり迷ったとき、見上げればただそこにいる。近づくことはないけれど、遠ざかることも決してない。
求めるのは、星の距離感。」
坂木司さんの小説『夜の光』の“あとがきのような献辞”にこんな文章がありました。読んだ時、あ、私もだ、って思いました。
その人の才能が大好きだけれど個人的には知り合いたくないなと思う方が何人かいます。
言い換えるなら、才能をいつまでも愛していたい人とは個人的な繋がりは絶対に避けたいです。
どんなにファンであっても、いえ、その人の作品の深いファンであればこそ、です。好きであればあるほど、自分の中のその人へのハードルは上がっています。作品とその人は別物なのに、いつの間にかそれを忘れてしまう。だから余計なものを目にしてファンを辞めたくなくて。余計なものを目にして純粋に作品を愛せなくなるのが恐くて。
誰かのファンであるとか何かが好きだということは、それを星のような存在にしたい、ということなのでしょう。神様とか守護霊とかそういったものと同じような感覚で、自分を守ってくれている気持ちになるからです。近づくこともないし遠ざかることもなく、そこに存在さえあれば勇気をもらえる。
でもだからこそ、求めているのは星の距離感であって近づくことでは決してないんですよね。輝く星に近づくと燃えてしまうように、近過ぎると知らなかった欠点まで見えてしまうから。幸運であっても、それによって元のように愛せなくなるという不幸まで呼ばれてしまうのは辛いです。
ずっと前に
「中島みゆきが今ここに来たらどうする?」
と小学生の女の子に聞かれたことがあります。あの時は
「驚きすぎて倒れる」
なんて答えてしまったけれど、今なら、
「会いたくない。ずっと好きでいたいから」
と答えられます。
星との距離感は、何光年であってもいいと思います。
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