時間切れ!倫理 155 民俗学 柳田国男
次は民俗学です。日本の民衆の伝統や文化を研究する学問。この人たちの名前は聞いたことがあるかもしれません。僕らくらいの年齢だと、社会常識的に何度も聞いたことがあるし、読んだ人も割と多いのではないか、そういう人たち。
最初は柳田國男です。日本の民衆の風俗や生活を研究した、民俗学を確立しました。若いころは、島崎藤村や『武蔵野』で有名な国木田独歩とも交流があって、文学に志があったようですが、やがてそこから離れ、東京帝大卒業後は、農商務省(現在の農林水産省)の官僚となります。仕事上、日本全国の農村を回りました。その過程で、民衆の生活や伝承などに興味を抱き、民俗学と呼ばれる学問を立ち上げました。官僚生活を続けながら、民俗学研究を行っています。たくさんのお弟子さんがいて、日本全国からかれらがおくってくる資料なども、研究の材料になりました。
たくさんの本を書いていますが、一番有名で、多分よく売れているのが『遠野物語』だと思います。『遠野物語』は岩手県の遠野地方で古老から聞いた話をもとに書いた本です。猟師が山に入って山人と呼ばれる不思議な人々に出会う体験や、神隠しの話などなど、そんなに古くない時代、せいぜい江戸時代中期以降かな、の様々な伝承が載っています。昔話の系譜を考察した『桃太郎の誕生』や、木綿が普及する前、江戸時代前半以前の民衆の生活を考察した『木綿以前のこと』も、私には印象的でした。
「常民」という言葉に線を引いておいてください。日本の文化を担ってきた名もなき民衆、どの時代を通じても同じように生きてきた民衆のことを、柳田国男は常民と名付けました。いつの時代にも変わらぬ生活を送る人たちというニュアンスでしょうか。この常民という単語は試験でもよく出ますね。常民と出てくれば、柳田国男です。
彼が確立した民俗学という学問分野は、日本中を旅して伝統的な暮らしや、民話、言い伝え、などを採集します。ただ、高度経済成長を経て、1970年代以降は、前近代、つまり江戸時代的な伝統は徹底的に消え去っていきました。だから、新しい民俗学者はもう出てこないかもしれません。私の中では、1981年に亡くなられた宮本常一という人が、民俗学最後のビッグネームです。
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