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アカデミックハラスメント:最近大学で起こったハラスメント事例

最近、アカデミアにおけるハラスメントについて話す機会がありました。大学等の高等教育機関で起きるハラスメントは、アカデミックハラスメント(アカハラ)と呼ばれます。その中身はパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなど様々ですが、会社で起きるハラスメントとやや異なるところは、学生が被害者となるケースがあることです。

ただ2023年10月現在、学生が被害者になるハラスメントについて、学生が通う大学に防止対策を義務付ける法律等はありません。本稿ではまず、最近起こった(公表されている)大学でのハラスメント事例をいくつか紹介します。

パワーハラスメント(パワハラ)

パワハラは、「職場において行われる(①)優越的な関係を背景とした言動であって、(②)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより(③)その雇用する労働者の就業環境が害されるもの」であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものが該当します。

山口大医学部でアカハラ、女性講師に労災認定 賠償求め大学を提訴

山口大学医学部の女性講師が上司の教授からアカデミックハラスメント(大学などでのパワハラ)を受け、大学にもアカハラを否定されたため、うつ病を発症したとして、労働基準監督署が労災を認定していたことがわかった。女性は、大学と教授に対して計330万円の損害賠償を求め、山口地裁に提訴した。

提訴は2023年9月28日付。女性は研究室で教授と准教授に次ぐ立場にある。2020年ごろから不眠などになり、21年6月にうつ病と診断されたという。
労基署の今年3月の調査報告書によると、女性は18年から60代男性教授に「講師のレベルでない」「英語が貧弱」と叱責(しっせき)されたり、無断で私物を廊下に出されたりしたなどと訴えていた。労基署は女性から提出された音声データなどを基に「教授がミーティングで女性の発表を再三妨げるなど、同僚の面前で攻撃的な発言があった」「業務の目的を逸脱した精神的攻撃が複数回あった」と、教授のパワハラを認定した。

女性の申し立てを受けた同大のハラスメント防止・対策委員会が女性へのハラスメントを認めなかった点も指摘。「支援が十分と言えず、女性の状況は改善されなかった」とした。

労基署は、教授のパワハラと、教授のパワハラが相談後も繰り返されるという大学の不適切な対応の結果、女性がうつ病を発症したと認定した。
労災認定を受けて大学は、ハラスメントはないとした判断について「妥当性については、ハラスメント防止・対策委員会でしか判断できない」とコメントした。

女性の代理人でハラスメントの問題に詳しい西野裕貴弁護士は「大学の研究室は、教授の力が強く閉鎖的で、ハラスメントが起きやすい。大学側の調査は、アカハラ判断に必須である教授の聞き取りさえしておらず不十分だ。被害者に寄り添わない姿勢は問題を助長している」と指摘する。

中山直樹.朝日新聞デジタル.2023年9月29日

実は労災認定には、ハラスメントの深刻度だけでなく、組織側の対応が考慮されます。精神障害の労災認定基準の「業務による心理的負荷評価表」に「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という項目が追加されたのは2020年6月のことですが、その際、心理的負荷が「強」である例として「心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合」が記載されました(2023年9月の認定基準改正により、現在の表記は「心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社がパワーハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった場合」)。

山口大学医学部の事件もまさしく、発生したハラスメント自体の深刻度よりも、組織の対応の不適切さを認定理由としていることがわかります。特に、弁護士のコメントにもあるように、事実確認調査において行為者側に話を聞いていないのは適切な対応とは決して呼べません。事実確認調査においては、被害者、行為者、そして第三者それぞれから話を聞かないと、ハラスメントかどうかの認定が客観的にできないからです。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクハラは、労働者の意に反する性的言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり(対価型セクハラ)、性的な言動により就業環境が害されること(環境型セクハラ)とされています。

恋愛感情のあるセクハラ行為を行った50歳代の男性教授に停職4月の懲戒処分

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