不完全でもいい。ことばを残す意味。
パソコンの「2018年フォルダ」をあさっていたら、投稿したのかも定かではない、ブログの下書き記事が出てきた。
10年前、なぜ私が「健康になるためには、何をすればいいのか?」という命題に向き合っていたのかが綴られていた。
けっこう大事なことなのに忘れていたことに衝撃を受けた。
当時の自己紹介の下書き
「健康に携わるお仕事」
はじめまして。新山加菜美です。これまで臨床検査薬(血液検査をするときに使う検査薬)の研究開発を4年、お台場の科学館の科学コミュニケーターを3年、そして、オーダーメイドの健康プログラム雑誌を作る仕事をして1年が経ちました。
職種はばらばらですが、“健康”というテーマで(どうにか)つながっています。
健康を測る・つくる
健康を伝える・未来の健康を想像する
健康を伝える・つくる・広げる
「健康になるためには何をすればいいのか」に向き合ってきて、考えを言葉にして残したい、語り合いたいと思いました。
今日からよろしくお願いします。
私が健康に興味をもったきっかけは、研究をやっていた7年前に過労で心身の体調を崩したこと。過労と言っても、自分の負けず嫌いな性格が災いし、「できません」と言えなかったのが原因でした。
苦しんだ分だけ強くなれると信じていた私は、仕事に一切妥協せず取り組んでいました。
残業が月100時間を超えるような日々が半年を過ぎた頃、子宮内膜症になりました。ホルモン剤を飲みながら仕事を続けていましたが、なんだか気持ちがおかしい。会社からの帰り道、わけもなく急に涙が止まらなくなったり。生理が始まると、無償に悲しくなって声を出して泣いたり。まったくもって自分がわからない、コントロール不能な状態でした。
苦しんだ分だけ、強くなるどころか、どんどん弱くなっていることを感じて、さらに悲しくなるという悪循環。
自分のことがどんどんいやになり、嫌いになっていきました。
だいぶ後になって知ったのは、それはPMS(月経前症候群)だということ。
ただ、生理の時期に関わらず、症状が出ることも多くなってきたので、精神科ではうつ病の可能性もある、とも言われました。
ホルモン剤を飲んでいれば、不調を周囲に知られることもなく働けていました。でも、このホルモン剤を一生飲み続けるのかと疑問に思ってきていました。
「もとの元気なからだに戻るためには何をすればいいのだろう」
そんなことを思っていた時期に、テレビ番組で私と同じ症状を克服した漢方カウンセラーの存在を知ります。藁をもすがる想いで、その漢方カウンセラーを訪ね、相談をするとショッキングなことを告げられます。
カウンセラー:「栄養が足りていないです。生活習慣を治しましょう」
新山:「え?!私、毎日3食食べています。お昼以外は自炊しています。野菜も食べています」
カウンセラー:「ストレスがかかる環境だと、ビタミンもミネラルも余計に消耗するの。自炊していてもその内容だと足りてないですよ。しかも体をつくっているのはタンパク質。朝からタンパク質を摂ってね。」
結局、生活習慣指導をみっちり受け、漢方薬と、漢方茶、馬の心臓のサプリメント、ココア味のする栄養剤を毎日飲みました。
その生活を始めて半年が経ったころ、ホルモン剤なしで仕事ができる状態にまで回復しました。気持ちが前向きになり、生理の時期にも気分が落ち込むことがなくなりました。
どうしてこんなことが起こったのか。それを知りたくて、漢方スクールで中医学を学びました。
(この後は白紙でした)
今、これを読んで思うこと
お堅い口調で恥ずかしい(笑)。
でも、下書きを残していた自分を褒めてあげたい!
健康な身体を失った私が、一番つらかったこと、それはコントロール不能で弱い自分を嫌いになっていったことだった。
食べるものを変えて、生活習慣を変えて、健康な身体を、薬を飲まなくてもいい身体を取り戻した。自分で健康は作れるとわかった。気持ちが上を向いて、日常を楽しめるようになり、好きな自分を取り戻せた。
そういえば、ブログのサイトのコンセプトは、「HEALTHCARE QUEST-好きな自分でいるために -」だった。
(実は10投稿もせずに閉じてしまったので、今ではすっかり忘れていた!)
だから何なんだ?という話ですが(笑)。
実は最近、どうして私は「医療・ヘルスケア」の活動をしていたのか、根底にあった想いが分からなくなっていました。だから、記事を読んで、失っていたパズルのピースを見つけたような気持ちになったんです。
私は、ずっと不調でどうにもできない自分を、心底嫌いになってしまったことが苦しかった。だから「健康な人を増やして、自分を好きでいられる人を増やしたい」と、夢中になっていたのだった。
言葉にしておけば当時の想いを拾える
「自分を好きでいるために、健康になろう」という当時の渾身のメッセージ。一見「はてな」が浮かぶような。
その後は「健康」から「ウェルビーイングな生き方」に興味が広がった。そのため、「健康になろう」という文脈ではなく、「生きがいや好きなことを見つける」ために、自分の好きや願いに気づけるビジョンボードワークショップを開くという流れになった。
この下書きがなければ、私の活動のルーツを忘れていただろう。
「重要じゃないことは忘れる、重要なことは忘れない」と思っていたけど、そうじゃないことが分かった。
たどたどしくてもいい。
不完全でもいい。
誰に見せなくてもいい。
今の自分の臨場感たっぷりの想いや考えを綴っておこう。未来の自分に手紙を送るようなイメージで。記憶は思ったよりはかない。
人生の方向性に迷ったときに、ハッとする気づきにつながる。
点と点が線でつながるような、伏線が回収されるような。