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〖短編小説〗1月7日は「七草」

この短編は1078文字、約3分で読めます。あなたの3分を頂ければ幸いです。

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あー嫌な予感がする。だって今日のお弁当なんか重いもん。もう怖くて中見れないよ。

遡って昨日1月7日は七草とかいうよくわからない謎の草?をいれたお粥を食べた。てか七草って見た目ぜんぶ一緒じゃねって思った。ほんとに七種類はいっているのか疑問。そもそもお粥って風邪のときに食べるんじゃないの?

そこで事件発生。まず弟(中2)は反抗期らしく、マックのポテトが食いてーと七草粥を全否定。弟よ、昔のひとはそんな脂っこいものを七草の日に食べねーよてかマックねーよと思いつつ、弟は結局一口も手をつけなかった。

お父さんもお父さんでお粥が苦手らしく、一口二口食べて食卓からリビングに移動してしまった。父よ、分かりやすすぎるぜ。

そして残ったあたしとお母さん。あたしはちゃんと自分の分は食べましたよ。だけどお母さんはご機嫌斜め。「はーこんなに残ってどうしよう」と家族全員に聞こえるように独り言…。

あたしはその時点で、ヤバいなこれはと思った。なんでかと言うと、お母さんは前の日の残り物をお弁当に詰めるという得意技がある。明日はもう通常授業であたしの高校は昼はお弁当なのだ。

そして、今日!1月8日。ついにお昼の時間になった。不測の事態に備えて、あたしは重いお弁当を持ってそっと教室を出る。

「あれー今日は、教室で食べないの?」友達が声をかけてくれる。

「…うん。今日はちょっと…ね~」友よすまない。君たちに新年早々お粥のお弁当は見せたくないのだよ。

人気がない、中庭に移動完了。そりゃ人気はないよね。超寒いもん。はーどうかどうか、昨日の七草粥がお弁当に入ってませんように…お願いします!

初詣に行った神社でのお願い以上に、念入りにお願いをしてゆっくりとお弁当の蓋を開けてみた。

すると…

中央にお弁当の仕切りを確認、左側にはおかずがある。唐揚げや卵焼きなどいつもと同じ感じだ。焦る気持ちを抑えつつ、右側お米ゾーンに目をやると…普通のかたいお米だ!やったーお母さんありがとう普通のお弁当で。さすがにお粥はお弁当には入れないよね、良かったぁ!

放課後家に帰ると、先に帰ってきていた弟とお母さんがなにやらもめていた。

「弁当にお粥入れんなよな!」

「あんたが昨日食べないからいけないんでしょ」

「あと、なんでポテトとお粥なんだよ!友達に変な弁当ってからかわれたんだぞ!」

「だってあんた昨日ポテト食べていっていってたじゃない、母さん優しいから入れてあげたのよ。なによ、たかだかお粥がお弁当に入ってたくらいでそんなに怒っちゃって。嫌なら残さず食べなさいよね」

弟よ、お粥もいいものだぞ。味しないけどな。

1月7日は「七草」

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