「月並み」の語源|だって月って1つしかないじゃん
突然ですが、
「月並みな表現で恐縮ですが…」
「あの人って月並みなことしか言わないよね…」
「月並み」(ツキナミ)ってよく、こんな使い方をしますよね。
日本人っぽい言い回しというか、ちょっと卑下しつつ使うことが多いし、私もしょっちゅう使ってます。
月並みの意味は、ありふれて平凡なこと。
平成後期っぽくいうと「マジョリティ」に近い意味で、基本的には、ネガティブな意味合いで使われるみたいです。
けど、月って1つしかないじゃないですか。
1つしかないのに、平凡なことを意味するってどう考えても変。
「月とスッポン」での使い方と大違い。
なんでありふれてることを「月並み」と言うんだろうかと、ふと疑問に思ったので、その語源を調べてみました。
犯人は正岡子規でした
元々かなーり前には、毎月開催されている俳句を読む会のことを「月並会」と呼んでいたらしいです。(鎌倉時代とかたぶんそのあたりです。)
このときには「月並み」にネガティブなニュアンスはなくて、ただの「定期的な」と意味。
その後、正岡子規(明治時代の俳人)(トップオブ横向いてる人)が、
↓簡単に訳すとこんな感じ
「天保(≒江戸時代)以降の俳句って、ちょーおもんない。僕はそういう俳句を月並調って呼んでるよ。」
ありきたりな表現をした俳句を「月並調」と批判したことがきっかけで、今の「月並み=ありふれて平凡なこと」の意味ができあがったみたいです。
コピペで文に深みがない、薄っぺらい俳句ばっかりで、今で言うコタツ記事とか適当に作られたSNSの投稿に近い感じの俳句が多かったらしいです。
当時、明治文学が盛り上がる中で俳句だけいつまでも劣っているように正岡子規は感じていたとすると、揶揄するのも無理ない気がします。
その後、正岡子規とほぼ同時代を生きた夏目漱石が「月並」という表現を「吾輩は猫である」で何度も使ったそうです。ちなみにざっと25回くらい出てきた。
いや使いすぎぃ。。。
なお当方、正岡子規は横を向いていることくらいしか知らないので、こんなイヤミな言い方するお方だとは知らず…。元祖お局やな。
ちなみに…正岡子規が「月並調」と揶揄した背景を考察した論文が面白かったので置いておく。興味ある変態さんはぜひ。
参考:子規俳論における月並調 中嶋秀和
「人並み」との大きな違い
ちなみに…似たような意味の言葉で「人並み」がありますよね。
「自分、人並みに勉強は出来るっス」みたいな。
2つの違いも調べてみたんですが、月並みはネガティブ、人並みはポジティブというニュアンスが強いみたいです。
(例)
月並みな意見しか言えません。(ネガティブ)
スポーツは人並みにできます。(ポジティブ)
つまり、「〜は人並みに出来ない」みたいに、後ろに否定系がくることはないってことですね。ほえ〜。
月並み?月並?どっちが正しいの?
「月並み」なのか「月並」なのか、いろいろ調べてみましたが、どちらかが正しいという決まりはなさそうでした。
ただ、「並」という漢字は名詞につくと送り仮名の「み」をつけるのが一般的らしいです。へー。
(名詞につく例)
月並み、人並み、例年並み、軒並み
それ以外の、「並」を単体で使ったり、「並」の後ろに単語がつく場合は送り仮名はいらないことが多いですね。
(例)
並盛り、並大抵
まとめ
月並みの語源は、「月並会」で、正岡子規がありきたりな俳句を「月並」と言ったことが始まり。夏目漱石も多用していた
月並みはネガティブ、人並みはポジティブなニュアンスがある
「月並」より「月並み」の方が一般的
つまり「月並み」の「月」って、空に浮かんでるあの唯一無二の「Moon」ではなくて、毎月開催っていう意味の「Month」!!
ほお。勉強になりました。。。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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