26人分の夕食を作った。
コレクティブハウスに住んで3ヶ月後、私は26人分の夕食を作った。
それまでの人生で、私はそんなに大勢のごはんを作ったことはなかったし、作れるとも思ったことはなかった。
メニューはホタテのシチュー、かぼちゃサラダ、お刺身サラダ。デザートは実家の母に頼んで、手作りのキャロットケーキを焼いて送ってもらった。
実は、コレクティブハウスというものの存在を知ったのは、十年も前のことだ。その頃から、誰かと繋がりあって暮らすということに憧れていた。けれども、コレクティブハウスの、ある決まりを知って、とてもじゃないが、自分には無理と諦めていた。
それは、食事作り。
コレクティブハウスでは月に一度、居住者全員の食事を作らなければいけない。手伝ってはもらえるが、基本的にはひとり。ひとりで20人分以上の食事を作るなんて、ぜっっったいに無理!と。
しかし、2020年、コロナになって、そんなことに構ってはいられなくなり、私は引っ越しを決意。それはすなわち、20人分の夕食を作るぞ!という覚悟でもあった。
私の住んでいるところは、新しく入ってきた住民に優しく、食事作りにも二ヶ月ほどの猶予が与えられる。
しばらくは、ここの生活に慣れるため、のんびりしてていいよということである。
しかし、のんびりしてていいよと言われても、言葉通りにのんびりなんて、していられるわけがない。いずれ来るその日のために、私はせっせと他のひとの手伝いに入り、やり方を覚えることにした。
道具や食器の場所やら、ガスのつけ方、巨大な炊飯器や食洗機の使い方。何しろ人数が多いので、鍋もボールも巨大だし、火力も凄くて、つまりは一般家庭用ではなく、全てが業務用であり、教えてもらわなくては、使い方すらよくわからない。
こうして始まったコレクティブハウスの日々は、料理が得意でもないくせに、うっかりレストランに就職してしまった新米シェフの修行のようだった。
そうして迎えた、自分の夕食当番。
買い物は三日前からスタート。
注文は26人分。何をどれだけ買えばいいかもわからないが、とにかくやるしかない。
何でも好きに買っていいわけではなく、一人分はいくらと決まっており、予算内におさめるべく、少しずつ買ってきては、パソコンで残金を計算し、また買い物に出かけた。
続いて調理。
その日は朝からキッチンにこもり、夜7時の夕食時間を目指した。
間に合わなかったらどうしよう。。
ごはんのスイッチの入れ方、あれで良かったんだろうか。炊けてなかったらどうしよう。。シチューが焦げて、ホワイトシチューがブラウンになったらどうしよう。。
あれこれ不安がよぎる。
お手伝いの方の力もお借りし、なんとか出来上がったときは、もう、ヘトヘト。。
力尽きました。。
でも、できるものですね。絶対無理って思っていたけど、私みたいな料理下手でも、やればできる!
コレクティブハウスに住んで3ヶ月目、私は26人分の夕食を作れる人間になりました。