「得意なこと」だけでなく「困りごと」に着目するコミュニケーション
脳が壊れている。
それはどういう状況なんだろう?
脳が壊れている。
自分は果たして「壊れていない」と言えるのだろうか。
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かかみがはら暮らし委員会というコミュニティ団体は、この12月で60名を越えた。
私は、この60名の人々と交流することで、日々「特性とは」を考えるようになった。
いつも遅刻する人
資料整理が得意な人
主張の強い人
イベントの企画が上手な人
うまくコミュニケーションが取れない人
優しくて気配りのできる人
人見知りな人
賑やかな人
自己肯定感が低い人
・・・
たくさんの人と交流すると、一人一人の「特性」がうっすらと見えてくる。
人は誰しも、得意なこと、苦手なこと、好きなこと、嫌いなこと、うまくできること、不自由を感じていること、様々な特性が混ざり合ってできている。
「彼は〇〇な人だ!」とは一言では言い表せない、複雑さが人間の魅力だと思う。
私はそういった人間の「複雑に絡み合っている特性」を知る作業が好きだ。
カテゴライズできない、その人自身の在り方を知るのが楽しい。
その中でも特に、かかみがはら暮らし委員会では「苦手なことやうまくできないこと」がみんなに言える環境を作りたいと思っている。
「好きなこと」「得意なこと」は就職活動でも、仕事を受ける時でも、言い慣れている人も多いと思う。
だけど、「苦手や不自由」はなかなか伝える機会がない。
でもどうだろう?
実際自分は、「好き」や「得意」だけでできているわけじゃない。
「好き」も「嫌い」も「得意」も「苦手」も「できること」「できないこと」全部ひっくるめて「自分」だ。
苦手を伝えると、誰かが補ってくれる。
できないことを先に知って貰えば、あらかじめそのように準備しておいてもらえる。
そんな、優しい世界ができないかな、、、と考えているところ。
それはすなわち、シンプルに「自分」を知ってもらうこと、「相手」を知ること、だと思う。
*
冒頭に戻る。
「脳が壊れている」とは過激な言葉だ。
急に何を・・・と思うかもしれないが、最近は「特性」「病気」「精神疾患」「多様性」などをキーワードに、様々な本を読んでいる中で、その中でも最近読んだ本の紹介である。
こちらは、実際に脳梗塞により高次脳機能障害になり「脳が壊れた当事者」=「脳コワさん」と自分を表現しながら、執筆を続ける筆者の著書だ。
こちらの本は、高次脳機能障害だけでなく、発達障害や認知症、うつ、PTSDなどなど、「脳の情報処理」で困っている当事者の視点から、こういった支援の仕方が良いのではないか?という提案書だ。
これは単に、介護や看護職の人が読むもの、ではなく、人と人が交流する場面でいつも覚えておきたい、大切な視点が書かれていた。
脳が壊れている話と、コミュニティ団体の一人一人の特性について、どう結びつくのか?
ここでは「脳が壊れている」ことは重要ではない。
脳が壊れていようがいまいが、「困りごと」に着目することで、誰もが楽になる暮らしができるのでは?という視点を持つことが重要だ、ということだ。
従来の「医学」的な考え方では、精神疾患のある人に対して、
「あなたはADHDだからこういうことを気をつけましょう」とか、
「あなたはパニック障害なのでまずこの薬から始めましょう」とか、
「疾患ごとの違い」に着目して分類し、そこから改善できるよう組み立てていく手法が中心であった。
けれど本書では、疾患の違いによる分類ではなく、「何に困っているか」「何が不自由なのか」「苦手なことは何か」に着目しようと言っている。
・明るすぎる光が苦手
・大きな音がすると思考停止してしまう
・早口で話されるとついていけない
・メモしたこともそのメモのありかを忘れてしまう
このような症状は、「病気」であろうがなかろうが苦手な人も多いだろう。
そこには「病名」は関係なく、「困りごと」があるだけだ。
本書は、当事者自身がどうあるかをきちんと見て、それに対して支援するアプローチを医学的な側面と組み合わせて実行するのが有効ではないか?という視点で書かれている。
病気がどうの、病名がどうのとかだけではなく(それが重要な場合もあるが)、「どうすればこの人は生きやすくなるのか」を考えるのは、医者や看護師でなくても、小さなことなら私でもできるかもしれない。
何に困っているか分かれば、そっと寄り添うのがいいのか、実際に手助けがいるのか、具体的にわかるかもしれない。
何を大袈裟な・・・
そんなこと考えながら人と接するなんて大変すぎる・・・
と、思うかもしれないし、自分も全てにおいてそんな風に思考を巡らせることはできないとはわかっている。
けれど、何かあった時、気になる出来事に遭遇した時、うまくいかなかった時、そんな時だけでも「あの人の困りごとを押し付けていなかっただろうか?」「うまくできなかったけどどうしたらよかったのだろう?」と考えを巡らせるヒントになればいいかな、くらいにまずは思っている。
なので、冒頭の「脳が壊れているかどうか」は関係ない。
私の脳が壊れていても、壊れてなくても、困りごとを解決できる方法があればそれでいい。
病名もなく「気質」や「特性」によって、生きづらいと感じる人も多い。
生きづらいと感じている人も、そうでない人も、お互いを「知ろう」というその気持ちがあれば、少しずつ優しい世界が出来上がっていく。
まずは知ろう、目の前の人の困りごとを。
(それにしても、かかみがはら暮らし委員会のメンバーはみんな優しい人が多いなあと感じています。)
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