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できればおいしく育てて欲しい私と、大きくなったら成功!の夫の家庭菜園の話。


「自分の常識は世間の常識」

そんな風に思ったらいけないなあと思う出来事が我が家では日々起こっている。


(無職の)夫が野菜の苗を買ってきた。

ハマると一旦ハマりすぎるくらいにハマる性質の夫が、最近は家庭菜園にハマっている。

ミニトマト、ししとう、ピーマン、スティックセニョール、アスパラ、大葉、イタリアンパセリ、パセリ、セロリ、オクラ、バジル、わけぎの苗を2〜3個ずつ購入。

さらに、ラディッシュ、ベビーリーフ、ほうれん草、小松菜、クレソン、ルッコラの種を買ってプランターへ。

それ以外にも、ワイヤープランツやヘデラ、ポトスなどの小さな植物たちもいろいろ・・・

去年は狭い庭にイチジクの木を植え、もうさすがに木を植える場所はないだろうと思っていたらレモンの木を買ってきて鉢に植えていた。


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いや、庭に限界があるやろ・・・!

あと、どんだけ苗と種、土やプランターにお金かけるの。

君、よく考えたらむしょ・・・

と、思ったけれど、私は寛大で心穏やかな妻。


よくよく考えたら誰にだって趣味はあるわけで、それが音楽であったり映画であったりプラモデルであったり家庭菜園であったりするだけ。

お金を使うことは全く問題ないのであった、ごめんね、無職とかいって。。。


そんな感じで野菜の苗やら種やらを植えるのだけど、なんとなく会話が噛み合わないことがあるなあと思っていた。


私「クレソンって春に収穫するんじゃないかな?春に種まくの?」

夫「別にいつでもいいと思うよ」

私「途中で肥料あげると実がおいしくなるみたいだけど肥料は買う?」

夫「肥料とかはめんどくさい」

私「〇〇さんがナスの脇芽はとった方が実がよくなるって言ってたよ。」

夫「そういうのは大丈夫です!」

私「・・・」


私は、野菜を育てるということは自分の感覚で言うと「おいしく収穫できるように育てる」ということだと何も疑わなかった。

植える時期や肥料のタイミングや育て方のコツなど調べて、素人でもなるべく難しくない野菜を選んで、工夫して育てていくものかと思っていた。


彼はどうやら違うようだ。

「水をやればそこそこおいしく育つ」という謎の自信で、とりあえず苗を植えて水をやり続けるだけ、といういわゆるほったらかし農法的なやり方をするらしい。

なぜならば水やり以外は面倒だから。


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今までもちょっとした野菜は確かに育ててきた。

私から見ると、去年植えたナスやきゅうりはかなりちっちゃくて1つくらいしか採れなかったし、キャベツはいまいち丸くならなくてほとんど食べられなかった。

個人的にはこれは「失敗」であると感じたし、せっかく作るなら収穫できるものを作って欲しいな・・・・と思ってしまったのだけど・・・。

彼は私が「失敗」と思ったナスやきゅうりやキャベツもどうやら「育った」という点で充分に満足していたらしい。


野菜を作るならおいしく収穫できるようにと思うのが当たり前かと思っていたけど、彼は「育つ」「背が高くなる」「少しでも実がなる」みたいなものは全部「楽しい!育った!」という感情になるようだ。

驚きである。

成功のハードルが恐ろしく低い。

だけどそれって、ある意味純粋な感情なのかもなあと思った。


「トマトなんてほっといても赤くなるじゃん」

って言っていて、確かにそうだ!と思った。

もちろん、水をやりすぎないとか雨に当てないとか肥料のタイミングなど工夫することで、皮が薄くて甘い、美味しいトマトはできるのかもしれない。

でも、赤くてそこそこ食べれるものはほっといてもちゃんとできる。

その成長が楽しい、というのだ。


これについては、彼がそこまで野菜が好きではない、というところも関係してくる。

ここも驚きポイントなのだけど、本人はミニトマトやナスを食べることは特に興味はない。

だから「野菜の美味しさ」に関しても意識が低い。

皮が薄くて柔らかいもの、ジューシーで張りのあるもの、大きくてしっかりと重みのあるもの、などなど、野菜の美味しさのポイントは野菜それぞれに違うけれど、「食べる」ことにそこまで意識がいっていないからやはりどんな仕上がりになろうとも「育てば成功」となる。


だから彼は苗を買う時に「カナコ氏が食べたい野菜とか、料理したい野菜買うから教えてよ。」という。

基本的に彼は優しい人間なのと、そもそも野菜を食すことに意識が低いからどうせなら私が好きなものをチョイスしてくれようとする。

ありがたいけど実はこれがかなり難しい。


素のままで答えると「とうもろこしやカボチャ、ズッキーニ、スナップエンドウが好き!」となるのだけど、どう考えても彼の育て方ではうまくいかなさそう・・・と思ってしまい言葉に詰まる。

「マウンティングや!」とよく言われるけれど、私は両親が畑を長年やっていて、育てやすい野菜、難しい野菜などをなんとなくは理解している。

カボチャを育てるほど土地もない、人工交配や追肥なんて知らないだろう、支柱立てたりはしないだろうな・・・と思うと、どうしても素直に「好きな野菜」を伝えられない気持ちになる。


私自身にバイヤスがかかってしまって、好きな野菜ではなく、「失敗しなさそうな野菜」を伝えてしまう。

その結果が、ミニトマトやオクラやししとう、パセリやバジルなのだ。


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でも一通り苗を植えて、種もまいて落ち着いてから考えたけれど・・・。

彼はやっぱり、「選ぶ」「植える」「水をやる」のが楽しくて、育っていくのを見るのがきっと好きなのだ。

成果物のグレードとかは正直関係ない。

だったら、難しかろうがなんだろうが、「育てる」ことに関しての楽しみにはバリエーションがあっても良かったのかもしれない。


彼は毎日庭を見て、水をやっている。

丁寧な性格だから、じっくり土の様子とか見ながら成長を楽しんでいるんだろう。


もし次に「何か植えたい」となるタイミングがあったら、今度は本当に「好きな野菜」を伝えてみようかな、と思った。

全然実がならないね、とか、支柱ないからふにゃふにゃだね、とか、言いながら、その植物が育ったり育たなかったりを楽しんでもいいのかもしれない。


・・・小学生かよ。


(と思ったけど、いや、本当にそうしてみるよ、次はきっとね)


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