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ウェビナーを終えて「作らないデザイン」の追求

2/25の再放送をもって、全3回のウェビナーが完了した。ウェビナー自体の企画は昨年夏頃から始まったものだが、その背景にある、ニュービジネススクールSTRAMDのテキスト執筆という活動は、実は2014年から粛々と行っていた。
果たして中西氏の講義の記録をお伝えする最適な人材は自分だったのだろうか?という疑問をどこかで抱えながら、長い間このプロジェクトを続けてきたように思う。

戦略経営人材育成講座STRAMDには、様々な職業の受講生が集っていたが、MBAホルダーや現役の経営者も多く、美大やデザインの専門学校卒である、いわゆるデザイナーだけが集まるビジネススクールではなかった。だからこそ、美大出身の自分より、本当は経営学を学んだ受講生の方が、この大役に相応しいのではないか?という想いが拭えなかったのだが、ウェビナーの完了で一区切りがついた今、この場を借りて、個人的な戦略経営デザインに対する想いを綴っておきたい。

●デザインの意味を模索し始めた学生時代

プロダクト系のデザイナーだった父への憧れもあり、高校二年生から美大受験に備え、日々デッサンを描き続け、やっとの思いで入学した美術大学は、デザイン科でさえ作品主義的傾向が強く、当時全盛だったポップアートやシルクスクリーンのイラストレーション等がもてはやされていた。正直、作品そのものの出来映えよりも、公共広告など社会性やメッセージ性のあるコミュニケーションに興味があった自分にとっては、卒業を間近にした時点でさえ、自分がデザインの何を目指しているのかが見出せず、漠然と、社会と関わるデザイン、社会に役立つ仕事がしたいと腕いていた。そんな中で広告専攻の教授だけは、作品主義とは異なる、デザインが持つ社会性、広告現場の実践的な考えやビジュアルコミュニケーションの意義などを教えてくださった。

●電光石火のような問いただし

卒業後15年以上が経過した2008年に、その教授の引退講義があり、久しぶりに母校に足を運ぶと、まるでキャリアの全てを振り絞るような長時間に渡る渾身の講義で、私は必死にほぼ全文、手書きのメモを取りまくった。そして教授は締めくくりに、自らが出す最後の課題として、「作らないデザインを考えよ」という難題を出して退任された。

刺激的なデザインで消費を促進させ、環境破壊の手助けをするのがデザインの役割ではない、デザインの実務者は物を作るだけが仕事ではないはずだ、未来を見据えて、作らないデザインをしろという、講義室を埋め尽くす歴代の教え子たちに向けた、衝撃のメッセージだったのだ。

●探していた答えなのかもしれない

卒業後、どこかで理想を心の奥に封じ込め、がむしゃらに実務をし続けてきた私は、この講義で学生の頃に抱いていた志を思い出しながらも、最後の課題に答えを出し切れない心地悪さを感じつつ、デザイン会社のプレイングマネージャーとして忙しい日々に追われていた。
そして2011年、STRAMDで中西先生の講義を聴き、ついに目の前に、最後の課題の答えを見つけたのだ。それはまるで壮大な答え合わせのように不思議な感覚で、学生の頃から自分が探し求めていたデザインの正体が、全て中西氏の講義に詰まっていた。

「デザインを美術大学の中にだけ納めたことが、そもそもの間違いだ」という中西氏の言葉を、身をもって体現したのが自分だと思う。

●デザインと経営の合流地点に立ち

一方で、経営学を学び続けながら、数字や分析に限界を感じ、その道の行き止まりに突き当たった人も、私とは反対方向からのルートで、STRAMDという同じ場所に辿り着き、机を並べて一緒に学んでいたのだから、実に面白い。デザイン思考なんていう言葉を、まだあまり聞かない時期から、一見交わりようのない二つの道が合流し、大きな流れとなり、未来を切り拓く可能性を体験できる場所が、STRAMDの教室だった。

私がようやく美大受験を終えた頃、父はデザインを見限り、彫刻家として新たな人生をスタートさせ、商業デザインの限界を私に説いていた。デザインが持つ可能性は無限であり、今まさに広義のデザインが社会を作っていく時代に突入したのだということを、このテキストやウェビナーを通して父に伝えたかったが、残念ながら一昨年他界してしまった。

その父と、最後の課題で私を覚醒させた美大生時代の恩師である小谷育弘先生に、ご報告と感謝を伝えたい。課題のリポートとして及第点をいただけるだろうか?いや、これから自分が実務で出していく結果を合わせて、判断していただきたいと思う。

ひとり悩み正解に迷う時も、常に共に活路を探ってくださったアンティ ー ・グループ代表中川直樹氏と、惜しみないご支援とご指導をいただいたPAOSの方々、このような貴重な機会を与えてくださった偉大な師である中西元男先生に、心からの御礼を申し上げたい。

そしてご視聴いただいた全ての方々、弊社制作メンバーの面々、一生をかけて取り組むに値するデザインというテーマに、多大なる感謝と敬意を込めて。

アンティー・デザイン 水野可奈子

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https://www.un-t.com/webinar/stramd/
※本ウェビナーは終了いたしました

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