応募者(転職希望者/就活生)は”客”ではなく、“仕入”である理由をまじめに考えてみた
こんにちは、かなけんです。
今日のテーマはこちら。
「応募者(転職希望者/就活生)は”客”ではなく、“仕入”である理由を真面目に考えてみた」
■冒頭
先日、Twitterで以下の呟きをしました。
採用に関わる人事として、個人(応募者)が仲介業者から“お客様扱い”をされていないと感じた憂いを呟いたものでした。
手前味噌ながら元・人材紹介キャリアアドバイザー(仲介業者の立場)の1人として、人材屋としてのプライドを持って今も昔も応募者と向き合ってきたつもりなので、「その姿勢で本当に良いのか?」という怒り+悲しみの思いでした。
一方で、呟いた後にこうも思いました。
このような不安や疑念が出てきたので、ちゃんと考えてみることにしました。
前提として、本記事で”言いたいこと・伝えたいこと”は誰かの批判ではありません。読み手の皆さんと、”本質”を一緒に考えたいという意図が土台です。もし表現の仕方などを不快に思う方がいらっしゃいましたら、容赦いただけますと幸いです。
ちなみに私自身は、これまで以下の3パターンの全ての立場を経験しています。
この3つの立場の全て経験する中で感じたことを整理しました。読み手にとって、少しでも考える機会になれば嬉しいです。
■考えたきっかけ
今回のテーマを考えたきっかけは、③人事側の立場として感じた「①個人側と②仲介業者側に対する “不〇” 」からでした。
”不〇”とは、具体的には以下の点などが当てはまります。
詳しい問題点は後述しますが、「①個人→②仲介業者→③人事」のステップにおける”最・後工程”の立場として、「もっと手前で何とかできないの?」と思うことが日々起きています。
例えるならば、製造業の組み立てラインの“ボトルネック探し”のように、「もっと工夫すれば生産性を高められるのではないか?」という思いです。
“不〇”という意味では相手側への単なるクレームですが、後工程で相手からのパスを最後に受け取る以上は”一蓮托生”でもあります。
ですので、ただ文句を言うだけではなく、問題を改善することで”3者の全てがハッピーになれば”という思いから考えてみました。
■商流(論理)を考える
まずは一時の感情論だけに流されないよう、“論理”から入ります。
仲介業者は、求人広告やスカウト(ダイレクトリクルーティング)等、様々な採用支援サービスが普及していますが、本記事では主に人材紹介サービスを対象にしています。
シンプルな商流は、タイトルの絵にもありますように以下です。
ご存知かもしれませんが、職業紹介時に“①個人から報酬を受けること”は一部を除き、認められていません。(個人側から対価を貰わないことが一般的です。)
つまり、職業紹介時の費用(採用Fee)の全ては、③人事が負担をしています。(※厳密には、個人の集客費用や手間が仲介業者で発生していますが、採用Feeに内包されます。)
この図のように”買い手”の立場である③人事がお金を払う仕組みであることから、「お客様(顧客)=③人事」という構造に異論はないでしょう。
となると、”売り手”の立場である②仲介業者が、販売商品の“仕入”をすることは、極めて自然なことです。
そして、その「仕入対象=①個人(転職希望者・就活生)」であることは言うまでもありません。
②仲介業者はお金をかけて①個人を集めていますから、「①個人→②仲介業者」の商流において、仲介業者から見て個人は、”お客様先ではなく仕入先である”ということは正しいと言えるのではないでしょうか。
”仕入先もお客様”という意識で、真摯に向き合うことももちろん大事だと思います。
ただ、少なくとも①個人を仕入れただけでは、②仲介業者は”対価(金銭)を得られない”ということも事実です。言い方は好ましくないですが、売れないと”在庫”のままとなってしまうわけです。
論理は以上ですが、皆さんはいかがでしょうか。
私は、この商流(論理)だけでは、どうも”しっくり”ときません。ですので、問題について”3者それぞれの立場”で掘り下げて考えてみたいと思います。
■問題①(個人側、応募者側)
まずは①個人の問題点を考えてみましょう。
転職や就活に臨む姿勢が基本的に“受身”であり、“雇われる(投資によるリターンを期待される立場)”ではなくお客様意識の状態で活動している方が多いと思います。
そのような方は、求職活動の開始前や、仲介業者や応募先企業を巻き込む手前でも思考できたこと、判断できたことを、漠然と”先送り”している印象が強いです。
入社承諾後に周りの反対や引き止めにあって翻意し、約束を反故にしてしまうような時でも、「え、それが辞退理由?、手前でそれを潰しこめなかったの?」ということも結構多いです。そもそも誠実に情報共有をしてくれない時や、最悪の場合は音信不通の時もあります。
①個人の皆さん。「自分(個人)は、仲介企業や雇う側の企業にとっての“お客様”だ」と勘違いをしてませんでしょうか。
■問題②(仲介業者側 ※人材紹介業)
次に②仲介業者の問題を考えてみましょう。
個人と人事の当事者同士がやり取りする直接採用ルートではなく、“間に業者を挟む”ということは、本来は”プラスα”の価値があるはずです。しかし、仲介業者がそれに見合うような合理的価値を提供できているとは思えません。
質(1つのマッチングに拘る)より“量(大量応募)”をとにかく出すだけ、というような印象であり、”御用聞き(双方の伝書鳩係)”で、2者の間に”突っ立っているだけ”になっている。
直接採用ルートより、相対的に高いFeeになる構造・仕組みを意識し、個人側と人事側の双方にとって「より生産性の高い価値を発揮しよう」というプロ意識を持っている方が少ない気がします。
特に大手系の仲介業者は”分業体制”を敷いているため、各担当者の役割がぶつ切りになりやすく、視野が狭くなりがちです。仮に、1人ひとりのプロ意識が高くても、途中のトランザクションが増え、介在価値ではなく”不介在価値”になってしまうようなケースも散見されます。
②仲介業者の皆さん。「自分(仲介業者)は、個人側にお金をかけて支援しているから “お客様”だ」と思っていませんでしょうか。
「自分が2者(個人、企業)との間に入るなら、そこに “付加価値”を出そう」というような姿勢は持ててますでしょうか。
■問題③(人事側)
では③人事には問題がないのか?というと、沢山あると思います。
自社の経営者や現場からの採用オーダー、並びに採用市場のことを正しく理解できているでしょうか。それを踏まえ、いかに”生産性の高い採用を実現させるか”という意識のもと、自らがオーナーシップを持って取り組めていますか。
採用オーダーがきたら、”とりあえず仲介業者に依頼する”のみで、自力採用等の代替施策の工夫はせず、仲介業者側の”言いなり”。自社の現場と仲介業者の双方から舐められっぱなしで”もの言えぬ立場”になっていませんか。
結果、採用活動が”非効率”になって採用費や人件費がかさみ、場合によってはミスマッチ等で離職コストも高くなり、総じて”企業の販管費の圧迫、全体利益の圧迫”を生んでませんか。つまり、企業にとって人事部門が逆に”不介在価値”になっていたりしないでしょうか。
③人事の皆さん。「自分(人事)は、仲介業者にお金を払っている側なので “お客様”だ」と思っていませんでしょうか。
■問題の本質
①個人、②仲介業者、③人事の”3者”の問題を整理してきましたが、途中で気づきました。
全員が「自分は“お客様”」と思っている疑いがありますね。
何故そうなってしまっているのでしょうか。私は、それぞれの「視野の狭さ」が原因ではないかと思います。
もちろん、狭義の意味ではみんな”客”であることは間違いありません。けど、考えてみてください。最終的には“誰”がお金を払っているのでしょうか。
視野を拡げる(商流を拡げる)と、”③の続き”があります。
そう、最後にお金を払うのは④企業の先にいる、真の”⑤お客様”です。そう考えると、手前の①~③の3者の全てが④企業にとっての”仕入先”になります。
どうでしょう。
全員が「”仕入(投資)”を受けている意識や姿勢が欠如している」が、問題の本質ではないかと私は思います。ついつい短期的、近視眼的になってしまいがちですが、気を付けたいところですね。
■どうしたら良いか
では、この”5者”のそれぞれがWin-Winになるためにはどうしたら良いのでしょうか。
と口で言うだけなら簡単です。
キャリア教育やビジネスの本質を学ぶ機会をつくるような大きい視点、長期的な視点も大事ですが、1人ひとりが自力でも改善するために、まずはどうしたら良いでしょうか。
それぞれの解が自由にあってよいと思いますが、私は松下幸之助さんが仰っている「感謝」と「謙虚」の気持ちと姿勢を大切にすることが最初かな、と思います。
■まとめ
なんだか、本記事を書いている自分自身の襟が正された気分です。以前、以下の呟きをしたことを反省します。ブーメランで返ってきました。
3者(個人-仲介業者-人事)は、その3者だけでは存在できず、先にいる企業からの投資、さらに先にいるお客様からいただく対価があって存在できる。
3者それぞれが「感謝と謙虚」の気持ちのもと、共に連携しあって”価値を最大化させること”が正。
3者それぞれが、仕入先(投資の対象として付加価値を期待される存在)としてのプライドを持ち、真のプロフェッショナルになっていきたいですね。