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【夢】ドラマ「海のはじまり」と代アニ体験会という選択肢

いやぁ、「海のはじまり」終わりましたね。
3ヶ月間、これでもか!ってほど、心揺さぶられました。

観てない人もいるという事を全無視して、あらすじも説明せずに続けますが、このドラマ最終回まで、

「親とは」
「家族とは」
「生きるとは」

そんな、ヘビーな事を優しく丁寧にこちらに投げかけてくるいいドラマでした。いいシーン、たっくさんありました。観てる人の立場によって刺さるポイントは違ったと思います。

私の一番のドンピシャ刺さったポイントは、最終話の後半、亡くなった水季が夏にあてた手紙の中にありました。7歳の娘、海のことについて書いてある手紙です。

親から子供への一番の愛情って選択肢をあげることだと思う。海には自分の足で、自分の選んだ道を進んでほしい。夏君には大きくなってく海の足跡を後ろから見守ってほしいです。」

これを聞いて私は思いました。

「水季~!!それ、今週noteに書こうと思ってたから、先に言わないで〜〜〜!!!」


親から子供への一番の愛情って
選択肢をあげることだと思う。

いい言葉ですよね。
私が考えました。

まさにそう。そうなのよ、水季。

だからさ、
私は双子を連れて行ったのよ。

代アニのオープンキャンパスに。


代アニとは、
代々木アニメーション学院のことである。

唐突に何言い出すのか、と思いましたか。
これは、双子の「将来の夢」に関係があります。

今のところ
三女の将来の夢は声優。
次女は小説家作詞家。
二人ともアニメが大好き。

この街に代アニの出張オープンキャンパスがくるというので、興味あるかな?と思い、二人に聞いて申し込んでみた。

以前から声優になりたい三女は比較的ノリノリ。次女は、まぁ相方が行くなら渋々、という感じ。


私は将来、子どもたちには
何になってもらってもいいと思っている。

声優として活躍出来るなんて、きっと一握り何だろうな〜とは思うけど、そんなネガティブな情報は置いといて、

「私はこれが好き!」
「あそこの学校に行きたい!」
「将来はあれになりたい!」

そんな思いが、何よりも子どもたちのチカラになることを私は知っている。

でも、田舎で普通に中学生していても、意識してその「選択肢」を探し、こちらから掴みに行かないと、さまざまな選択肢に触れずに大人になる可能性もある。

だから出来るだけ情報をあつめたら、連れて行き、体験させたい。そこで何かを感じてほしい。

とにかく、なんだっていい。
何か夢中になれる物を見つけるキッカケになってくれたら。

そう思い、申し込んだ。


市の総合福祉センターの美術室と音楽室を会場に、出張オープンキャンパスは行われていた。

二人は慣れない場に緊張していた。

それでも、貼っていたポスターに書いてある有名な声優さんの名前を見て「この人も卒業生なんだって!」と二人でキャーキャー喜んでいた。

2階に上がると「代アニの体験会はこちらでーす!」と元気なおじさんが案内してくれた。

受付を済ませて席に着くと、名刺を持った小洒落た紳士がササッと私のところへ来た。

「本日はお越しいただき、ありがとうございます。」

絵に描いたような営業スマイルで差し出してくれた名刺には「校長代理」と書いてある。

ホントに校長代理か?とは思った。
「イタリアンレストラン経営」とかの間違いじゃないか?胸ポケットからチーフが出てる人を久々に見たけど。

双子は時間になるまでウェルカムシートのようなものに記入していたが、私は暇だったので、他の学生の事をこっそり見ていた。

ほとんどの参加者は高校生くらいだろうか。でも、大学生くらいの人から、社会人みたいな人もいる。中学生は少なそうだ。

そして、みんな代アニの先生たちと仲良さげに話しているところを見ると、ほとんどの人が初参加ではないらしい。そうか、オープンキャンパスは体験会ともいうけれど、プロに自分のイラストを見てもらったり声優の演技を見てもらえる良い機会なのかもしれない。こんな世界もあったなんて。

時間になり、体験会がスタートした。


まずは校長代理の挨拶、そして学校紹介の動画を見せられる。そのあとに、希望するコース別に各先生たちと体験会に進む。

三女は声優体験、
次女はシナリオ小説家体験に申し込んだので、別々の先生に連れて行かれた。

声優科の先生は小柄な男性の先生だった。
ピッチピチの黒いポロシャツを着ていて、短髪でモミアゲとヒゲがつながっている、どこかLGBTな先生だった。

他の代アニの先生もみんなオシャレで個性的だ。イラスト科の女性の講師も美容師さんみたいなおしゃれな人だ。きっと校風なんだろうな。

私は声優科体験も見たかったけど、三女は自分がレコーディングしてるとこを絶対に見られたくないだろうと思い、次女のシナリオ小説家体験を見学することにした。

代アニの体験会に来ている生徒のほとんどがイラストレーター志望か声優志望で、今回、小説家志望は次女だけ。マンツーマンで先生が自己紹介してくれる。

「こんにちは、私シナリオ小説科講師をしております〇〇です!」

先ほど元気に会場へ案内をしてくれていた、あのおじさんだ。代アニの先生らしからぬ、スーツにワイシャツにメガネのTHE学校の先生みたいな風貌のおじさんだった。

「中学生からシナリオや小説に興味を持ってくれるなんてうれしいなぁ!」

営業スマイル全開で、娘の緊張をほぐそうとしてくれるおじさんのテンションの高さに、次女はすごい速さで引いていた。おい、引くな。マンツーマンだぞ。

「今日はどうしてここに申し込んだの?いつから小説家に興味があるの?」

前のめりで質問してくれる先生を前に、次女は
「本当は相方の声優体験についてきただけです」とは言えない空気だと察した。

普段から不愛想な次女だが、一層険しい真顔で「文を書くのが好きで…」と絞り出した。

すると、
「わー!そうなんだ!ちなみに、どんなジャンルを書きたいの?普段から本を読むの好き?読むならどんなジャンルをよく読むの?」と質問が次々に飛んでくる。

ただでさえ、初対面のおじさんと一対一で話しているという緊張もあり、一言発するのに時間がかかっていた次女に、矢継ぎ早の質問攻撃が来た。

次女は、ええと…、あの…と、どもりながら答える。

「本は、読みます。」

なんだ、その答えは。
どの質問の答えなんだ、それは。

「そっか!たとえば、どんな作家が好きなの?」

「さ、作家・・・?」

はい、降参~。
すみません、軽率な気持ちで参加して。
そんなガチだと思わなかったんです。
母も反省した。

それでも二人は歯車の交わらないクエスチョン&アンサーを何周か繰り返し、その先生にも軽い気持ちで参加したことがうっすら伝わったところで、先生はマンツーマンで授業を始めてくれた。

「君、"起承転結"って聞いた事ある?」

それは、本格的な国語の授業だった。
そうか、だからこの先生だけこんな学校の先生っぽいのか。納得。

文章を書くときにまず初めに考えるべきことや、「起」で示すべき事、良い文章とはどんな文章なのかを、資料を使って説明してくれる。

めちゃくちゃ参考になった。私が。
来てよかったわ~。note書く時の参考にしよう。
黙って話を聞く娘の横で、母はメモが止まらなかった。

「じゃあ、さっそく骨組みから書いてみようか!」

実践が始まった。起承転結の枠組みの中に実際にストーリーを書き込んでいく。

自分の書く文章を見られるのはいやだろうな~と思って、私は少し離れた椅子に移動した。

移動するやいなや、イタリアンな校長代理が近づいてきた。

「もうすぐ声優科のレコーディングが始まります。よろしければお母さまもぜひ、ご見学ください。」

「いや、でも、娘が恥ずかしがると思って…」

「でも、こっそり入れば見えませんから、ぜひ!さぁ!」

代アニの先生、みんな明るく圧が強い。
でもせっかくなので、声優科の体験をしている音楽室に移動することにした。

音楽室の二重扉をこっそり開ける。
音楽室の中では、大きなスクリーンにアニメの一場面が写し出されていた。その前にはレコーディング用のマイクが5本。そのうち1本に娘が立っている。

「じゃあ、今の場面もう一度やってみましょう!」

画面が巻き戻される。アニメがスタートする。

その時だ。

「んもぉ~~!なぁ~にやってんのよぉっ!」

え?
ちょっと待って。
今の声、だれ?
アニメの中から聞こえた?

いや、それは正真正銘、体験に来ている学生さんの声だった。

今のセリフ、そこにいる学生さんの声?
普通に声優さんかと思ったけど!!

「あはっ、ごめん。怒らないでくれよ。」

えーと、今のは、その隣の男の子の声?
木村昴かと思ったよ。
上手すぎない?あれ?
どゆこと?え?みんな実はプロなの?
みんな素人なんじゃないの??

これは、アフレコはじめての人の声じゃない。
完全にみんな声優さんの声だ。

驚いた。
めっちゃ驚いた。
びびった。

多分、台本の中のセリフはきっと、

「もう、何やってるのよ。」

なのかも知れない。でも聞こえてきたのは、

「んもぉ~~!なぁ~にやってんのよぉっ!」

だった。
もうアニメじゃん。
テレビでよく聞く声じゃん。

オープンキャンパスって、この時点でみんなこんなに上手いの?代アニに通わなくてもそのままオーディション行けそうじゃない?

「はい、うんうん。いいね。みんな上手だね。」

黒ポロシャツの先生も満足気だ。

「今の『んもぉ~!』のところは、もう少し落ち着いて言ってみようか。怒るだけじゃなくて呆れた感じも出して欲しいかな。感情は押すだけじゃなくて、引くことで強調出来るパターンもあるから。」

めっちゃアドバイスが本格演技指導じゃないですか!これが体験できるのか。そりゃ何回も参加したくなるわ!おもしろ~!

みんな本気なんだな。
きっと、本気で声優になりたいんだ。
私はなんだか、胸が熱くなった。

そんな本気の声優陣の中に、ひとりド素人の中学1年生のうちの三女が緊張でガッチガチに固まって立っている。そりゃそうだ。こんなプロみたいな人たちに囲まれたら緊張もするだろう。

三女の場面はすでに撮り終わってるらしく、先生は三女にもアドバイスしてくれた。

「キミは、さっきアニメとセリフが少しズレちゃったから、まずはセリフが来る前に息を吸っておこうか。そうすると、口の動きと同時にセリフが乗るよ。あと、もう少し早口で行った方がいいかな。セリフが終わる前に次の登場人物に切り替わっちゃったから。」

アドバイス、初歩的過ぎる。


きっとうまく出来なかったんだろうな。
そりゃそうだよね。初めてだもん。
みんな最初はそうだよ、ドンマイ。

声優科おもしろいな~!
と思って見ていたら、振り返った三女と目があった。やばい、と思った。

そのまま三女に「出てって」とジェスチャーされたので、おとなしく退室することにした。

もっと見たかったのにな~。

私は音楽室を後にした。


2時間ほどで、
オープンキャンパス体験会は終了した。

あんなに営業スマイルだった校長代理も、体験会の様子を見ていてこの親子は入学しそうもないと思ったのか、全然営業されなかった。

でも、収穫はたくさんあった。

まず次女は、指導してくれた先生と新しく執筆する小説の骨組みを考え、1週間後を目標に、もっと肉付けをしてここに送って!と連絡先を貰っていた。そこに送ると、特別にその先生と札幌校にいるプロ編集者の講師が添削してくれるそうだ。

なにそれ、めっちゃ羨ましいんだけど!!
私のnoteも添削してくれないかな…。

ただ、次女には伝えた。
「あなたがもし半端な気持ちで取り組んだり、期日までに送るつもりがないのであれば、それを早めに連絡した方がいいと思うよ。プロの時間をタダで削るのだから、本気で取り組まないのなら、相手の先生のためにも、早めに断った方がいい。それはそれでいいと思う。その代わり、やるなら本気でやりな。」

すると次女は少し考えて
「やる。」と言った。

そして彼女は本当に1週間後、先生に原案を送っていた。

先生とプロの編集者からは、長ーーーい添削が来たそうだ。内容は見せてくれなかったが、次女はまた文章を書き始めた。自信がついたらしい。

声優志望の三女はというと、声優体験のあと、担当の黒ポロシャツの先生からアドバイスをもらった。

「まだ君は中学生だし、これからやりたいことも色々選択肢が増えると思う。その途中で、やりたいことと出来ることは違うと気づくかもしれないし、好きなことと得意なことが違うと思う事もあるかもしれない。色々な経験をして、それでも声優になりたかったら、またいつでもおいで!」と。

「”やりたいこと”と、”出来ること”は違う」

そんな先生のセリフを聞いて、
三女は「嫌味か。」と悪態をついていた。

思うように出来なかった三女の声優体験は、
きっと彼女なりの小さな挫折だったのかもしれない。

今の時代、何でもネットを調べれば書いてるし、動画を観て雰囲気をつかむことも出来る。でも、実際に体験してみて、肌で感じることは何より大事だと私は思う。それが良い結果になっても、ならなくても。

それはそれで良い経験になったね。

帰りの車で、もう一度、
「で、今の二人の将来の夢は?」と聞いた。

次女は「小説家もいいな」と言ったけど、
三女は「心理カウンセラー」と答えていた。

おい。
どっから出てきた、心理カウンセラー。

ま、母は何でもいいと思うよ。


親が出来ることは、
子どもが興味のありそうなものを深める手助けをすることだと思う。きっと、親ならもうすでにみんなやってることだ。

動物が好きだから動物園に連れて行く。
車が好きだからトミカ博に連れて行く。
それで良いよね。

我が家は、以前三女が「美容師になりたい」と言った時は、髪の毛が伸びるたびに、毎回ホットペッパーで色々なタイプの美容室を一緒に選んで訪れた。

それぞれお店の雰囲気、経営スタイル、サービス内容が違う。帰ってきてから、感想を話し合った。いつか自分がなりたい美容師像の参考になればと思ったのだ。

結局、美容師の夢はいつの間にか辞めたようだが、それでもいい。そんな風にその興味が移り変わったっていいのだ。

その、何かを目指して掘り下げた様々な経験が、いつか必ず、違う何かの役に立つ。

親はそこに連れて行く、手助けをすればいい。
情報を集め、見せて、それに興味があるなら、車とお金を出すのが親の仕事だ。

いつもみたいに、口は出さないように、
せいぜい、気を付けたいと思う。

ま、そりゃ無理か。





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