ふぐみみとじゃがいも
前回も紹介したように5月15、16日は大野湊神社の祭である。祭の料理には押し寿司以外にもいろんなものがある。定番のエビスや治部煮、卵巻きはもちろん、春のこの時期ではタケノコとゼンマイの炊き合わせやゴリの佃煮などがあり、タニシもよく食べられた。それらと共に親しまれてきたのが”ふぐみみ”である。
”ふぐみみ”はふぐの糠漬けのおまけでできる。ふぐのぬか漬けは過去に「石川10名産」にも選ばれた金石の名物である。ふぐの身を開いてぬか漬けにするのだが、魚を開くとだいたいハート型というかキツネの顔みたいな形になる。アジフライとかイワシの味醂干しを想像してもらえればよい。キツネの顔での例えでいうと耳の部分を切り落として、その下の逆三角形をぬか漬けにする。落とした耳の部分を天日干しにしてカラカラに乾かすと”ふぐみみ”の完成である。キツネの耳と譬えたが、耳のようにふぐの端っこにあるので”ふぐみみ”というのだそうだ。
一度二度茹でこぼした後、醤油・酒・味醂などと甘辛く煮るとコラーゲンでねっとりプルプルして旨い。身はもちろん煮汁も美味しいのでこれでじゃがいもやゴボウなども一緒に炊く。酒の肴にもぴったりで、まさしく祭にふさわしい逸品である。