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#10『スナイパー3Dアサシン』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「ゲーム要素の絞り込み」

本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発者や、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアの引き出しとなれば幸いです。

ゲームの紹介

『スナイパー3Dアサシン』(Sniper 3D)はスマホ用の一人称シューティングゲーム(主人公視点で銃で敵を撃つタイプのゲーム)です。

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Sniper 3D / Fun Games For Free

(※久しぶりにストアを確認したらクローンアプリが多数あったためご注意ください)

主人公は凄腕のスナイパー(狙撃手)となり、依頼されるミッションをこなすために、スナイパーライフルを用いて犯罪者や悪人の頭を撃ち抜いていくというゲームです。

例えば、人質を取って立てこもる誘拐犯を仕留めたり、麻薬の取引現場で密売人を始末したり、不正に手を染める権力者を葬ったり、といった具合です。

ハンドガンやショットガンなどの他の銃器を使うモードや、オンラインで他のプレイヤーと競い合うPvPモードなども用意されています。


移動のないFPS

さて、このゲームはFPS(=First Person Shooting)と呼ばれるジャンルに属しますが、プレイヤー移動などの操作はありません。「狙いを定めて」「撃つ」というそれだけにゲーム要素を絞り込んでいるところが大きな特徴です。

人質を取った強盗犯がいて、あなたはビルの屋上からスナイパーライフルを構えている。さあ、あとはスコープを覗き、狙いを定め、引き金を引くだけ。悪党の命運はあなたの手に掛かっています、といった具合です。

最初の方は一撃だけで終わるため、それこそ5秒くらいで1ステージクリアになります。

ゲームが進むと、仕留めるターゲットが複数居たり、取り引き現場を確認したり、犯人が狙える位置に来るまで待つなどの要素が増えてきますが、それでも3分は超えない程度にデザインされています。

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「バトルフィールド」シリーズや「PUBG」のような普通のFPSタイトルでは、3D空間のステージを移動して身を隠しながら敵を撃つという駆け引きが必要になり、1回のプレイ時間も10分~30分以上に及ぶこともあります。

そういった戦略性がFPSゲームの醍醐味ではありますが、本作ではそういう要素をあえてバッサリと切り落とすことで、スマホ向きの軽量でカジュアルなゲームに仕立て上げています。

敵に照準を合わせて仕留める、というFPSゲームの一番美味しい部分のエッセンスを抽出したゲームといえるでしょう。


一部分だけを抽出したゲームデザイン

こういったゲームの一部分だけを抽出したゲームデザインは、他のジャンルではどのようなものが考えられるでしょうか。

(以下に挙げる例は世の中に既にありそうに思いますが)
スポーツなら、テニスでサービスエースだけを狙うゲームや、サッカーでフリーキックだけのゲームはありそうです。

アクションゲームや2Dシューティングゲームによくある「ボスラッシュ」のステージは、ステージ道中の要素をばっさりカットして、ボス戦だけを楽しませるアイデアと言えるでしょう。

敵からの弾幕を避けることだけに特化した2Dシューティングゲームとして、『サイヴァリア』シリーズなどがあります。

『チャリ走』は、アクションゲームの「ジャンプ」だけを抽出したゲームデザインと言えるでしょうか。


「ゲーム要素の絞り込み」を考えてみる

皆さんの遊んでいるゲームや、開発しているゲーム、構想中のゲームで、遊んでいて一番気持ちいいのは、どの瞬間でしょうか。

その一要素だけを抜き出して新たにゲームを作るとしたら、どんなアイデアが考えられるでしょうか。

または既存のゲームの中に「ボスラッシュ」のように、他の要素を排除した特別なステージを用意することは出来るでしょうか。


皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。
本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。

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(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)