見出し画像

#31『フェアルーン』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「行けない場所に何かが見えるワクワク」

本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発のプランナーやプログラマー、ゲーム制作を志す方、アイデアのインプットのための引き出しとしてご活用ください。

前回:#30『CUBE CLONES』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「画面回転に連動したUI」

今回勉強するのは、ゲーム序盤でどのようにユーザーの興味を惹きつけるかのアイデアです。

ゲームの紹介

『フェアルーン』は、インディーゲームスタジオのスキップモアが制作した謎解きRPGです。

現在は『フェアルーン』『フェアルーン2』その他がセットになった『フェアルーンコレクション』が、Switch/Steamで発売されています。
(それより更に前にブラウザゲーム版や3DSもありました)

ゲーム内容は『ゼルダの伝説』(初期の2Dのやつ)をライトにしたような作りで、RPG風の2Dフィールドを探索しながら敵を倒し、様々な謎や仕掛けを解いていきます。

昔のゲームをご存知の方であれば『ハイドライド』が雰囲気として近いですね。(実際に意識されて制作されているそうです)

・スイッチを踏んで扉を開く
・斧を手に入れて木を切り倒す
・怪しい岩を押して階段を出現させる
・隠し通路を通って先に進む
といった要領でマップに仕掛けられたギミックを解いていきます。

アクション要素はあまり強くなく、敵とのバトルは体当たりをするとレベル差のみで勝敗が決まるシンプルなルールとなっており、謎解き部分がゲームのメインといっていいでしょう。

画像1

『フェアルーン』(©Flyhigh Works/SKIPMORE/ESQUADRA)

「1」「2」ともにクリアに要する時間は数時間(5時間程度?)と軽量級のタイトルで、数日でサッとクリアまで遊ぶのに向いているタイトルかと思います。

ドット絵や音楽の雰囲気も「昔ながら」のゲーム(ファミコン世代)という感じで、8bitテイストが好きな人は合うでしょう。

謎解き部分はヒントが少ないこともあり、隠し通路を見落としたり、解き方にハマってしまうとなかなか先に進めず辛口となっています。そういうテイストも昔ながらの趣でしょうか。


川の向こうに何かある

『フェアルーン』は探検型のRPGで、最初の行動範囲は限られています。

マップは木や川、崖などによって遮られていて、その先に進むことはまだ出来ません。ゲームを進めるにつれ、「斧」や「鍵」などのアイテムを手に入れ、その度に新たな場所に行けるようになります。

さて本作では、スタート地点付近のフィールドで、プレイヤーは木々や川の向こうに様々な意味深なオブジェクトを見かけることになります。

・崖の向こうにあるオーブ
・川の向こうの謎の石像
・川の向こうの強そうな敵
・地面に書かれたバツ印
・水の中にあるアイテム
・石のパネルのようなもの
などなど。

フェアルーン_ss02

『フェアルーン』(序盤のマップから見える様々なモノ)

もちろん、これらは後々になって訪れることができるわけですが、序盤のフィールドから見える位置にこれ見よがしに置いてあることで、

・あれは一体何のアイテムなんだろう?
・どうやったらあそこに行けるんだろう?
・そこに行ったら何が起きるんだろう?
・あの強そうな敵はどのくらいで勝てるんだろう?
・このゲームには色々なアイテムがあるんだな。

といったように、プレイヤーはこの先の展開についてワクワクを感じることになります。

序盤を面白くするマップ

このように、最初にプレイヤーに「面白そう!」と思わせることは、特に無料ゲームでは重要です。

買い切り型のゲームであれば一度買ったゲームは最後まで遊んでくれるかもしれませんが、数多の無料ゲームが溢れている現代では、ゲーム序盤が地味すぎると、(このゲームつまらないのかな……?)と見切りをつけられてしまうかもしれません。


「最初にワクワク感を持たせるマップ」で有名なのは、初代『ドラゴンクエスト』(DQ1)の竜王の城でしょう。

一番最初のフィールドに出た途端、海の向こうに最終目的地である敵の居城が見えるインパクトは、その後のゲームにもあまり例が無いように思います。

またドラクエ1では、最初のお城にも鍵のかかった扉の向こうに宝箱があり、「きっとどこかで鍵を手に入れればこれが取れるんだ」という期待感を持たせるなどの工夫がされていました。


他のゲームジャンルでも、ワクワク感を与える

ここまでRPGのマップ作りの話をしてきましたが、冒頭でプレイヤーにワクワク感を与えるという意味では、他のゲームジャンルにも応用が効きます。

例えば、アクションゲームなどで最初から最強攻撃が使えるようにしておき派手な演出を見せつつ、ゲーム冒頭のイベントで主人公の能力が封じられてしまい最弱の状態からスタート。というシステム。

ゲームを進めれば派手な技を繰り出せるんだ、という期待感が成長意欲に繋がりそうです。


最近は見る機会が減ったかもしれませんが、特にアーケードゲームではタイトル画面で放置していると流れる「プレイデモ」があり、上級プレイが再生されるものもあります。

それを見ることで、
・ゲームを進めるとこんなパワーアップをするんだ!
・上達すればこんなプレイができるようになるんだ!
・先のステージではこんな強そうな敵が出てくるんだ!
などの期待感を与えることで、プレイヤーの興味を惹こうとしています。


他にも『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(または紋章の謎)では、最初から上級職であるパラディンのユニットがいて「ぎんのやり」という強力な武器も持っています。

序盤こそ圧倒的な能力を発揮してくれますが、彼は老齢のお目付け役というポジションでその後の成長率がさっぱりなため、彼に頼り切りではいけないという仕掛けになっています。

これもゲームの最初に強力な上級職の存在を味あわせて、将来、他のユニットが成長するのを楽しみにさせるという意味で、根源は似たようなアイデアなのかもしれません。


どんなゲームにおいても始めたての序盤というのは、内容や絵面が地味のものになりがちです。

RPGであれば、装備も地味で魔法も弱いものしか使えないでしょうし、戦略SLGでは、小さなマップに少ない部隊から始まり上級ユニットなどもまだ出てこないでしょう。

最初にワクワク感を引き出すためのアイデアは、ゲームを最初の数分で放り出されてしまわないための工夫のしどころと言えるのではないでしょうか。

考えてみよう

あなたの開発しているゲーム、構想しているゲームで、
・最初のマップで「将来到達できる場所」を見せる仕掛けはできるか。
・ゲーム開始5分の見た目が、地味なものになっていないか。
・ゲーム後半で見れる派手な画面を、最初にチラ見せ出来るか。
(初期イベントで体験させる、一時的な味方や敵として登場させるなど)
・PVやプレイデモで、ワクワク感を演出することができるか。

色々なアイデアを考えてみましょう。


プログラマーの視点

こういった序盤の仕掛けを工夫するのは主にプランナーの領域ですが、最初から強い状態を呼び出せるようにしておくのは、ゲームのテストプレイでも使いますので、最初から強キャラ(強パーティー、スキル全習得など)の仕組みを入れておくことは役に立ちます。

プレイデモは、あらかじめ撮影したムービーとして用意しておくという手もありますが、プログラムとして「オートプレイ」ができる仕組みを入れておくのも一案です。

プレイヤーが入力しなくても勝手に動く「オートプレイ」は、テスト駆動開発のように役立てることもできますし、自分や他人のプレイを「リプレイ」で見れるシステムにも役立てることができます。


皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。

本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。

この連載が、ゲーム開発のインプットに役立つと感じていただけたら、是非評価やシェアをよろしくお願いします。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。


他の連載記事はハッシュタグ「#ゲームデザインの引き出し」からどうぞ。

(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)