#19『MOAI - My Own Ark Island』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「スワイプ操作での位置確定」
本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。
ゲーム開発者や、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。
ゲームの紹介
『MOAI - My Own Ark Island』は、小さな島に建物を配置していき、得点を重ねていくスマホ用のカジュアルパズルゲームです。
MOAI - My Own Ark Island / Fatline Games
本作は一人用のボードゲームのようなルールとなっていて、手持ちの建物を島に配置していくことで、配置場所に応じて得点を獲得していきます。
例えば「鍛冶屋」の配置得点は、
・「岩」の近くに置くとボーナス+2点。
・「倉庫」が近くにあると更に+5点。
・ただし「鍛冶屋」同士が近くにあると-5点。
のように、建物同士の相互関係で決まってきます。
プラスの相互作用を狙いながらも、マイナスの相互作用を出来るだけ起こさないように配置場所を選ぶのが、本ゲームの頭を使うポイントですね。
得点が一定になるごとに追加の建物を引くことができますが、得点が足りなくなるか、島の中にそれ以上建物を配置できなくなったらステージは終了。
規定ポイントに達していると次の島に進める、というゲームの流れになっています。
(※注:本作は、Steamで配信されている『ISLANDERS』というゲームとのルールの類似点が指摘されているようです。興味があればそちらのタイトルもチェックしてみてください)
スマホでのスワイプ操作での配置
本作はスマホ用アプリのため、建物の配置は指によるスワイプ操作で行います。また、建物の配置は(マス目区切りなどではなく)マップ上の自由な位置に配置できます。
そのため、相互作用で得られるポイントを最大にするため、ギリギリの位置に配置したくなります。
そのときゲームのプランナー(あるいはプログラマー)の視点で気をつけなくてはいけないことがあります。
それは「指によるスワイプ操作は、PCのマウス操作に比べて細かい位置を狙えない」ということです。
色々なUIのパターンを考えてみる
例えば、
「タップした瞬間に配置が確定してしまう」
という操作を考えてみましょう。
この操作は論外で、指によるタップ操作では、プレイヤーが狙った通りの位置に建物を配置することは殆どできないでしょう。
(※念のため補足しますが、建設予定地点がいくつかのマスに限定されている場合は、この操作でも可能です)
次に、
「スワイプで位置を調整し、指を離したときに配置確定」
という操作だとどうでしょうか?
前述の案よりは良いと思いますが、スワイプ操作は指を離そうとしたときに、タッチセンサーの感圧位置が少しズレてしまうものです。
本作のように、ギリギリのちょっとのズレが結果を大きく変えてしまうようなゲームの場合は、「ここだ!」と思って指を離した瞬間に、微妙に位置がズレてしまい、プレイヤーのストレスを生むことになってしまうでしょう。
では本作の場合はどうなっているかというと
「スワイプで位置を調整した後で、別途、決定ボタンをタップすることで配置確定」という2段階の操作になっています。
これであれば、スワイプした位置がちょっとズレてしまった場合でも、確定前に何度でもやり直すことができます。スマホデバイスに向いた操作系と言えるでしょう。
(それでも、望み通りの位置になるまで何回か調整する必要はあるので、ストレスゼロではないですが)
もし、更に厳密さが必要なゲームの場合は、極小単位で位置調整するためのカーソルボタンのようなものが必要かもしれませんね。
位置指定の操作UIを見直してみよう
このように、PCのマウス操作では何も問題のなかった操作が、スマホになった途端、問題になることはよくあります。(例えばボタンのタッチエリアが小さすぎてなかなか押せない、など)
スマホ用ゲーム開発は、途中の開発段階ではPC版で制作を進める場合も多いですが、このようなタッチ特性の差には注意が必要です。
また、普段からタブレット端末で開発をしている場合も、ユーザーが小型スマホでプレイしたときの操作性を想定しておく必要があります。
UIを一式作り込んでから、「あれっ……小さいスマホでは全然思い通りにタッチ操作出来ないぞ……?」となると、大きく工数をロスしてしまいますので要注意ですね。
あなたの遊んでいるゲームや、開発しているゲーム、構想しているゲームで、位置指定の操作や、小さいボタンなどは無いか確認してみましょう。
それは小型のスマホで、タッチ/スワイプ操作になったときにも問題のない精度で行えるでしょうか。
また、もう一点追加しておきますと、ゲーム中に後戻りできない重要な決定操作をする箇所はあるでしょうか。
例えば、RPGでレベルアップしたときのパラメータ振り分けなどは、パラメータを振り終わった瞬間に確定してしまうのではなく、振り終わった結果を確認したあとに最終確定ボタンを押したいですよね。
誤決定をしないように、「確定」ボタンを一段階挟んだほうがよい箇所はあるでしょうか。確認してみましょう。
皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。
本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。
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