#25『アーチャー伝説』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「攻撃と回避の二律背反」
本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。
ゲーム開発のプランナーやプログラマー、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。
ゲームの紹介
『アーチャー伝説』は、ハックアンドスラッシュ系のスマホ用アクションゲームです。
見下ろし型の2Dのステージで、弓を武器に戦う主人公を操作し、敵をどんどん倒しながらステージクリアを進んでいきます。
RPG的な成長要素もふんだんに盛り込まれており、稼いだお金で主人公や武器・防具を強化・成長させ、更に難しいステージに挑んでいくという王道の成長要素もやり込めます。
アーチャー伝説 / Habby
基本無料でスタミナ性。
ゲーム内広告(リワード動画広告)と、様々なタイプの有料課金がありますが、強制的に見せられる広告はなく無料でも充分に楽しめるゲームです。
一時期、本ゲームの広告を大量出稿していたイメージがあるので、それで知っている方もいるかもしれません。「Google Play Best of Awards 2019」のインディー部門大賞も受賞しているようですね。
移動とオート攻撃
『アーチャー伝説』の操作は、画面のスライドで主人公を移動させ、攻撃はオートで行われます。
家庭用(コンシューマー)ゲームでは、攻撃ボタンで攻撃という操作が多いと思います。
しかし、スマホゲームは指一本のタッチで操作させることが多い都合上、複雑な操作は向いておらず攻撃をオートにしているゲームもよく見かけます。
縦スクロールの2Dシューティングゲームなどでも、オート攻撃のシステムはよく見かけますね。
攻撃と回避の二律背反
さて、オート攻撃の本作ですが、攻撃が行われるのは主人公が足を止めている間だけで、移動中には攻撃は行われません。
敵モンスターも攻撃を仕掛けてきますので、プレイヤーは敵の攻撃を上手く回避してやる必要がありますが、回避し続けていると今度はいつまでたっても攻撃ができません。
アーチャー伝説 / Habby
敵の攻撃を避けながら反撃する必要がある
ここに、本作の「二律背反」が上手く実現されています。
(※二律背反=あっちを立てればこっちが立たずという状況のこと。本作の場合、攻撃中は回避がおろそかに、回避中は攻撃がおそろかになる)
攻撃したくてその場に立ち止まっていると、敵の攻撃をどんどん受けてライフが減っていってしまう。
敵の攻撃を避けたくて常に動き回っていると、攻撃が出来ないのでジリ貧になっていってしまう。
上手くプレイするには、少ない動作で敵の攻撃を避けつつも、隙を見つけて足を止め攻撃を当てていくという判断が求められます。
二律背反のゲームシステム
多くのゲームには、このような二律背反のシステムはゲーム性の基本として組み込まれています。例えば……
【格闘ゲーム】
・攻撃を繰り出すかガードするか
・大技で大ダメージを狙うか、隙の少ない小技を使うか
【レースゲーム】
・ギリギリのコーナリングでタイムを縮めるか、余裕を持って曲がるか
・ショートカットで逆転を狙うか、普通のルートで相手のミスを待つか
【RPG】
・全力で攻撃をするか、防御と回復を優先して倒されないようにするか
・MPを消費して全体攻撃魔法でなぎ倒すか、MPを節約し通常攻撃でいくか
【FPS】
・狙撃をすると敵に先制攻撃が取れるが、発砲音で自分の場所が敵にバレる
このような二律背反が上手く組み込めているゲームは、しっかりとした「駆け引き」のあるゲームになるため、ゲームシステムをデザインする上でも重要です。
(※パズルゲームやノベルゲームのように、このような駆け引きが無くても面白いゲームもありますが)
二律背反とテーマ選択
余談になりますが、本作では「アーチャー(弓兵)」という設定も、理屈にかなっていると感じます。
銃や魔法であればダッシュしながら撃てても不思議ではないですが、「弓」であれば「走りながらは撃てない」とイメージするのが自然だと思います。
二律背反の攻撃システムが先にあって「アーチャー」という題材を選んだのか、それとも先に「アーチャー」という題材があってこの攻撃システムを採用したのかは分かりませんが、いずれにしても良いテーマ選択なのではないでしょうか。
考えてみよう
あなたの開発しているゲーム、構想しているゲームで「二律背反」になる要素は上手く組み込めているでしょうか。
メリットだけが多すぎたり、リスクだけが多すぎたりして、実質これしか選ばれないという要素や、全く選ばれない要素があったりしないでしょうか。
そういう要素があった場合、パラメーターを調整したり、新たにメリットやデメリットを追加するなどして調整できるでしょうか。確認しなおしてみましょう。
例えば、値段を調整する、使用回数を制限する、クールダウンタイム(次に使用出来るまでの待ち時間)を導入する、隙などのデメリットを与えるなど。パラメータ調整だけで済む場合もあれば、あらたにシステムを追加する必要もあるかもしれません。
プログラマーの視点
このような「二律背反」はゲーム性の肝となる部分ですが、上手く駆け引きが実現できているかは実際にプログラムを組んでテストプレイしてみないと分からない部分でもあります。
机上でゲーム仕様を考えただけで、完璧な二律背反が実現できていました!というケースはなかなか無いのではないでしょうか。(それが出来たら天才ゲームプランナーかも……)
実際にプログラムを組んでみないと面白さが分からない、という問題は、ゲーム開発に付き物でそれが工数見積もりの難しさにも繋がってきます。
ゲームの肝となるシステムは早めのプロトタイプで面白さを検証したり、バランス調整用ツールを用意して、プランナーの手元で調整できる環境を整えるなど、プログラマーの力量も問われる部分だと思います。
皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。
本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。
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