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悲しいぼくが読んだ本

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憂鬱な気持ちのなかでぼくが読んだ本たち。 原稿用紙2枚分くらいの短い感想を添えて。
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【読書】ホントかウソか、素晴らしいジョーク

本日の一冊 「とうもろこし倉の幽霊」 R.A.ラファティ、井上央(編・訳) 早川書房、2022  七年に一度、脱穀の最終日の日にとうもろこし倉に現れて自らと同じ名前の人間の首をくくりに幽霊が現れるという話を少年二人が確かめに行く「とうもろこし倉の幽霊」。  日付が変わり、幽霊が現れるまでの刻一刻と迫りくる緊迫する状況を臨場感たっぷりに描いた短編です。  人消しマジックのスペシャリストにして大魔術師チャールズ・チャーテルの公演中に箱からみすぼらしい小男が現れた。小さな彼は

【読書】最終的に本は人になります。

本日の一冊 「書架の探偵」 ジーン・ウルフ、酒井昭伸(訳) 早川書房、2017  暖かくて寒くて、このところ気もそぞろでした。  本を途中まで読んでは放り出したりして。  偶然見つけたこの本はいまの私でも読み通すことができました。  近未来の書物にまつわるSFミステリです。  人口が十億人まで減少した22世紀の図書館には蔵書ならぬ"蔵者"と呼ばれる本の著者のクローンが収蔵されています。  この物語の主役であるE・A・スミスも同名の推理作家のクローンであり、借りる者

【読書】これはバグですか? いいえ。仕様です。

本日の一冊 「名称未設定ファイル」 品田遊、キノブックス(2017)  リアルな世界からSF色濃いめのものまでどこか仄暗い17の短編が収録された一冊となっています。  物語にバグが入り込んでますよ⁈ と思わず言いたくなります。  文章の途中に割り込んでくるセリフ。支離滅裂な文章。  それとも世の中の不条理やエラーがただ浮き彫りにされているだけなのか……。  なんとも言えぬ読後感がつきまといます。 「猫を持ち上げるな」   猫を持ち上げるのは虐待か?  ひとつのツ

【読書】だいぶ前から見失ってんねんけど

本日の一冊 「ほとんど記憶のない女」 リディア・デイヴィス(著)、岸本佐知子(訳) 白水社、2005  noteで読書記録について書く時、その本の中で引用したら、興味を持ってもらえるかなと思った面白い一文をはじめに書き出しているのですが、この本はそれがとても難しかったです。  諦めました。    一文を切り取ると、話の中であれほど魅力的だった文章が死んでしまうのです。  無理やり引き抜こうとすると他の一文までつられて一緒に抜けてしまいます。まるでサツマイモみたいです。

【読書】遠くの未来ではなく、目の前のいまを見てみる。

本日の一冊 「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 小川さやか 光文社新書  それがいいか悪いかを抜きにして、多くの人が「いい学校、いい就職、いい老後のために」という考えを持っているのではないでしょうか?   あまりにも当たり前なことで、改めて考えたこともありませんでした。  私たちは頭の中で未来を思い描いてしまいます。未来に何が起こるか、なんていくら考えてもわからないのに。それでも良くなる可能性が少しでも上がるように行動せずにはいられないのです。  この本

【読書】これは史上類を見ない人違い

本日の一冊 「宰相の二番目の娘」 ロバート・F・ヤング(著)/山田順子(訳) 創元SF文庫  精巧な自動マネキンを作製するために歴史上の重要人物を誘拐してくるのがビリングズの仕事。  シェヘラザードを連れてくるという任務を受け、9世紀へと向かいます。  ビリングズという男、これがまあ、やることなすことうまくいかないのです。  もともと貧乏暮らしの非正規雇用だったのですが、担当者がインフルエンザにかかったために急遽、彼にこの仕事がまわってきたのです。成功すれば正社員になれ

【読書】ネコだけどネズミと友達になれますか?

本日の一冊 「チェシャーチーズ亭のネコ」 カーメン・アグラ・ディーディ&ランダル・ライト(著)バリー・モーザー(絵)山田順子(訳) 東京創元社  のらネコとして過酷な日々を生き抜いてきたスキリーは内緒にしていますが、実はチーズが大好物なのです。  そんなある日、スキリーは英国一のチーズだと評判の〈チェシャーチーズ亭〉でネズミ捕りのネコを探しているという話を耳にします。  そこで出会った賢すぎるネズミ、ピップと「捕まえたネズミをこっそり逃す代わりに、厳重に保管されているチーズ

【読書】地球の本じゃなくて、月の住人の本なのかもしれない

本日の一冊 「月の部屋で会いましょう」 レイ・ヴクサヴィッチ(著)、市田泉(訳)  皮膚がてらてらと輝く銀色の宇宙服へと変わり、やがて宇宙に飛んでいってしまう謎の病気が流行する世界に生きる、モリーとジャック夫妻。  治療法が見つかるまで悠長に待つことはできないのでした。  なぜなら、妻のモリーの身体はすでに銀色に侵されつつあったのです。  このままではモリーが先に旅立ってしまう、とジャックはなんとかふたり一緒に長い宇宙の旅に出る方法はないものかと奮闘するのですが、一方のモリ

【読書】時間を戻せるケーキがあるとしたら、作りますか?

本日の一冊 「月のケーキ」 ジョーン・エイキン(著)/三辺律子(訳)、 東京創元社  けわしい丘の上の中腹にあるどこか気味の悪い村、ウェアオンザクリフ。  そんな村に暮らす祖父のもとへ、家を燃やしてしまった少年トムが訪れるところから物語は始まります。  まだ若いトムは重たい空気が蔓延る村に不満げです。  数日経ったある日、トムのもとに村のいちばん高いところにある、不気味な家に住むミセス・リーが〈月のケーキ〉をつくる手伝いをしないかというおさそいを持ってやってきます。